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特集1 スマートワークの実現に向けた研究技術開発の挑戦

あらゆる企業において、業務の生産性向上や効率化、多様な働き方などを可能にする「働き方改革」に向けた取り組みがすすんでいる。
「働き方改革」を実現するために、富士ゼロックスが鍵を握ると考えるのが、仕事のさまざまな場面に欠くことができないコミュニケーションの進化だ。
目指すのは、いつでも、どこでも、誰とでも、必要な情報を最適な形で、安全かつ簡単に利用できる社会づくり。
富士ゼロックスでは、これまで培ってきた技術群を飛躍的に発展させ、商品・サービスに活用することによって、仕事におけるコミュニケーションの革新を実現し、多くのワーカーにSmart Workをもたらしたいと考えている。
研究技術開発をリードする大西康昭が、Smart Workの実現に向けた取り組みを語る。

日本の15~64歳人口の変化率(2015~2030年)・・・-10%(フィリピン26%、ベトナム8%、米国2%、韓国-10%)(出典)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較(2017年版)」日本の労働生産性(2015年)・・・OECD加盟35カ国中22位 米国比61.3%(出典)公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2016年版」世界のクラウドサービス市場売上高の年平均成長率(2019年)・・・2015年比27%増(出典)IHS Technology 世界AI市場規模の予測(2025年)・・・2015年比55倍(出典)Tractica “Artificial Intelligence for Enterprise Applications”

経営哲学を源とするBetter Communications を切り口に

本レポートの冒頭でも紹介しているとおり、富士ゼロックスでは経営哲学として「より良いコミュニケーションを通じて、人間社会のより良い理解をもたらすこと」を大切にしてきました。
それは1962年の会社創立以来、一貫して世の中に提供してきた複写機にも色濃く表れており、複写されるさまざまなドキュメント類は、人々の情報伝達を促進する意味で、まさに「より良いコミュニケーション(Better Communications)」の実現を支え続けています。
しかし、昨今のワーカーが置かれている環境を見渡してみると、特に国内では、少子高齢化に伴う「働く世代」の減少が見込まれるほか、働く場所や人材などの多様化もすすみ、コミュニケーションのあり方についても環境変化に即した進化が求められています。
したがって、複写機をはじめとする多様な商品・サービスを通じて、人々のコミュニケーションの価値を高めることに長年にわたり携わってきた富士ゼロックスでは、研究技術開発をさらに強化することで、コミュニケーションの進化を前提としたSmart Workの実現に貢献したいと考えています。

互いの「経験」を共有し、「知識」として定着を図る

皆さんは、これからの仕事におけるコミュニケーションは、どのような役割を担うべきだと思いますか?
私は、単に目に見える情報を一方的に「伝達」するだけでなく、一人ひとりに蓄積されている「経験」までも共有し、互いの「知識」として深く定着させることで、次の「行動」に迅速かつ効果的につなげる力が、これからのコミュニケーションに求められると考えています。こうしたコミュニケーションに基づく「ワークプロセス」「ワークプレイス」「ワークスタイル」の3つがしっかりと根付いている状態が、富士ゼロックスが目指すSmart Workの方向性にほかなりません。
Smart Workを具現化するためには、コミュニケーションでやり取りされる情報にかかわる技術のレベルアップを図り、新たな商品・サービスに活用することが欠かせません。ここで言う情報には、テキストはもちろん、画像や音声などあらゆるデジタルデータ、さらに従来はリアルタイムの把握が難しかったワーカーの行動特性や健康・心理状態なども含まれます。

優位性のある技術を土台にして

富士ゼロックスは、さまざまな業種・業務のお客様に対するドキュメント・マネジメントのソリューション提供を通した強固な信頼をベースにして、あらゆる仕事のコミュニケーションを熟知し、その中で交わされる情報の特性などについても知見を深めてきました。こうした中から培われてきたのが、そのままでは活用することが難しい非構造化データの中から、価値ある情報を“抽出する”“加工する”“分析する”といった機能を持つユニークな技術です。
たとえば、手書き文字でも高精度に認識できる「文字認識技術」や「画像認識技術」をいち早く確立し、すでに帳票データ入力システムなどへの応用を実現しています。また、お客様先の複合機の稼働状況を、インターネットを介して常時モニタリングし、故障などトラブルの予兆をつかみ、必要な対応に素早くつなげることができる複合機管理サービス「EP-BB」を提供しています。さらに、コールセンターなどを通じて寄せられるお客様の声(VOC)に対して「自然言語処理技術」などを使って自動分析を行い、お客様満足度をさらに高めるための施策や商品開発に役立てるといった取り組みも行っています。AIの活用による大量のデータ解析も、お客様の業務を知り抜いている当社であればデータ抽出にとどまらず、業務プロセスの変革につなげることができます。
富士ゼロックスでは、これらの技術資産を最大限に活用しながら、Smart Workの実現へ歩みをすすめていきます。

富士ゼロックスらしい「人間中心」の考え方

では、富士ゼロックスが具現化を目指すSmart Workは、具体的にどのような姿になるのか—あくまでイメージの一例になりますが、ワーカーが置かれている環境や業務状況、健康状態などを周辺機器が逐次把握・分析し、仕事はもちろん、心身にとっても有用な情報を自動的に提供したり、逆に他者への情報発信を支援する—といった姿があげられます。ワーカーにとっては、自分を常に見守り、必要なときに何でも手助けしてくれる、次の行動を予測して最適な提案をしてくれる、仮想のコンシェルジュが存在するイメージといえば分かりやすいでしょうか。
富士ゼロックスが志向するSmart Workの基本的な考え方は、あくまで「人が中心にある」ということ。それは、複写機を誰もが簡単に扱うことができるようにした創業期から連綿と受け継がれる、富士ゼロックスの研究技術開発のポリシーと言っても過言ではありません。

ステークホルダーとの連携を力に

富士ゼロックスでは、Smart Workの実現に向けて多様な知見やアイデアを結集するため、日本・米国・シンガポールの各拠点の連携を強化し、研究技術開発に取り組んでいます(詳細はP.19)。
しかし、その過程では、富士ゼロックス単独では解決できない課題に直面するケースも予想されます。ユニークな技術やノウハウを有する企業の皆様はもちろん、広範囲のデータ収集や実証実験などを行う際には一般の方々との連携も不可欠になるでしょう。
富士ゼロックスでは、ステークホルダーの皆様と有機的に連携しながら、あらゆる分野で働く人たちに恩恵をもたらすSmart Workにつながる商品・サービスを一つでも多く、早く実現し、社会に提供していきたいと考えています。

3極研究体制でSmart Work の実現へ

富士ゼロックスR&Dスクエア、FXパロアルトラボラトリー、イノベーションオフィス、共通のビジョン(共有された技術 ポートフォリオ、タイムラリーな開発、お客様)

当社では、富士ゼロックスR&Dスクエア(横浜みなとみらい)、FXパロアルトラボラトリー(米国パロアルト)、イノベーションオフィス(シンガポール)の3拠点が連携し、新たな商品・サービスの創出に向けた研究活動を強化しています。
3拠点は、富士ゼロックス全体の研究戦略を共有しながら、それぞれを取り巻く社会課題や産業構造、技術動向などの地域特性を踏まえつつ、独自性のある研究テーマに取り組んでいます。横浜では「徹底したお客様視点での新しい顧客価値の創造」を追求、米国パロアルトでは主にマルチメディア技術や情報関連技術の先進的な研究開発を、シンガポールではアジア・パシフィック地域のお客様パートナー企業と連携しながら、お客様の事業課題解決につなげるための価値検証活動を行っています。また、人材交流や定期ミーティングなどを通じて、拠点間の知見やアイデアを効果的かつ迅速に融合する取り組みもすすめています。
今後、米国での研究成果をもとに、日本で試作品を開発し、シンガポールで実証実験を行う—といった連携を加速し、グローバルなお客様のニーズに対応していきます。

成長を支える技術

[富士ゼロックスの技術]分析・解析技術、モデリング技術、マルチメディア処理技術、画像質感制御技術、一意識別技術生産技術、環境技術、カラーマネジメント技術、文書画像処理技術、ビッグデータ分析技術、デジタルイメージング技術、画像認識技術、コンピュータ・ヒューマン・インタラクション技術、3Dデータハンドリング技術、共創型コミュニケーション技術、モバイルセキュリティ技術、自然言語処理技術、知識処理技術→[価値創出の未来]地域社会の連携、グローバル連携、新事業の創出。[ドキュメントの未来]付加価値の向上、利活用の促進、流通の促進。[コミュニケーションの未来]生産性の向上、ワークスタイルの改革、創造性の発揮。[環境の未来]循環型社会、低炭素社会、自然との調和。

富士ゼロックスは、創業以来、「より良いコミュニケーションを通じて、人間社会のより良い理解をもたらす」というJ.C.ウィルソン(米国ゼロックス・コーポレーション創設者)の思想を受け継ぎ、人間と情報の快適な関係(環境)づくりのためのドキュメントとコミュニケーションに関連する技術開発に取り組んできました。ミッションステートメントの一つに「知の創造と活用をすすめる環境の構築」を掲げ、いつでも、どこでも、誰とでも、必要な情報を最適な形で共有し、活用できる環境を構築することで、より価値のあるコミュニケーションの実現を目指しています。
そのため、これまで培ってきた「情報を複写する」文化からの転換を図り、ICTやクラウド技術などを活用しながら、「情報を必要な形に変換して伝達する」ための新たな技術開発をすすめています。

取り組み

Better Communicationsを実現する遠隔コミュニケーション技術

ロボット制御技術を応用した遠隔コミュニケーション

当社の研究員は、遠く離れた日本・シリコンバレー・シンガポール間で、あたかも実際に対面しているような状態をつくり出し迅速な意思決定へとつなげています。
たとえば会議では、ロボット制御技術を応用し、小型カメラを搭載したディスプレイを遠隔地から自由に操作しています。画面には先方の状況がリアルタイムに表示され、相手の顔が映ったディスプレイを通して視線を合わせた臨場感の高い対話を可能にしています。
また、読み取り画像のゆがみ補正技術などを応用した遠隔コミュニケーション環境は、机の上に置いた文章をカメラで読み取り、遠隔地の相手の机にスライドを投影し、スライドを指すだけで文章や画像を送信できます。文章が自動的に翻訳され、多言語間でも共同作業をスムーズにすすめることができ、緊密なコミュニケーション環境を実現しています。

商品ライフサイクルで発生するCO2排出量算出を自動化

当社は、環境負荷の少ない商品づくりのために、開発部門全体でCO2 排出量を意識した商品設計を行っています。
あらゆる部品の膨大な情報と素材や質量をもとに算出されたCO2 排出量データを構造化して関連付け、部品一点ごとに原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでプロセス全体の中で発生するCO2排出量を自動算出できるようにしました。これまでは、関連データが社内に散在し、集計に膨大な手間がかかっていましたが、AIを活用して大量の関連ドキュメントやデータの特徴を解析し業務を自動化。申請書作成を含む作業工数を1商品あたり75%効率化しました。
今後は、各国・各分野のさまざまな法規制に適応した商品づくりの強化に加え、この技術や手法を製造業だけでなく金融業などにも応用することで、認可申請準備作業の効率化など社会全体のエコシステム構築に貢献していきます。

IoTで現場を「見える化」し最適判断につなぐ

インターネット経由でモノの情報を吸い上げ、生産性や品質の向上をもたらすIoT(Internet of Things)で、現場の仕事のすすめ方が変わりつつあります。
当社の生産・品質情報管理システム「SCQM注1」には、工場設備の稼働状況、検査や製造者情報など、時間で紐付けられた生産データが集約されています。異常が発生すると、過去の結果が蓄積されたデータベースをもとに発生原因を特定して即座に判断を下すことができ、不良品の出荷を防ぎます。
また、複合機管理システム「EP-BB注2」は、お客様先複合機と当社EPセンターを結び、メーターカウント、消耗品の自動配送、故障情報などを通知。リモート「点検」によって故障の兆候を早期発見し、障害発生時にはカストマーエンジニアが遠隔での診断に基づき迅速で的確な対応をするなど、アフターサービスのさらなる向上を担っています。

人間中心のトータルデザインで、お客様のビジネスに貢献

複合機のスマートU(I ユーザーインターフェイス)

当社は、機器に「人」が合わせるのではなく、「人」の特性や活動に合わせて、必要な情報や機能を最適なカタチで提供することが重要だと考えています。
ヒューマンインターフェイスデザイン開発部は、「人間中心設計(Human Centered Design:HCD)」の考え方に基づき、ハードウェア、ソフトウェアを横断した商品全体のデザインを行い、インタビュー、仕事の観察、商品とのかかわり方の分析などを通じて、潜在的な課題やニーズをとらえ、コミュニケーションや仕事を支援するデザインをすすめています。この手法により「覚えなくても使える」「使うほどにより使いやすくなる」ことを目指して発売したA4カラープリンター/ 複合機4機種は、2016年度のグッドデザイン賞を獲得しました。これからもお客様の働き方の変化を先取りし、より魅力的な商品やサービスの創出に取り組んでいきます。