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[FUJI XEROX SUPER CUP 2017] 頂上開幕。/2016明治安田生命Jリーグチャンピオン・第96回天皇杯優勝「鹿島アントラーズ」 VS 2016明治安田生命Jリーグ2位「浦和レッズ」/2017年2月18日(土) 13:35 KICK OFF 日産スタジアム

開幕直前!佐々木則夫氏が語る最強のチームづくり~「できる」と思える経験が、「ブレない」姿勢をつくる~

自分たちの力を信じ、世界を相手に戦う

あのとき、佐々木則夫は笑っていた。

2011年7月。このPK戦に勝てば日本の女子サッカー史上初めて世界の頂点に立てるという極限の緊張状態の中、指揮官はスタッフも含めたチーム全員で組んだ円陣の中心に立ち、選手たちにこう伝えた。

「すごいゲームやってるな。日本中の人たちが、きっとテレビの前で痺れてるぞ」

笑顔で緊張を和らげようとしたわけじゃない。自分たちの力を信じ、世界女王のアメリカに恐れることなく立ち向かう選手たちの姿が誇らしく、嬉しかった。だから、素直にその感情を伝えた。

「今まで日本が勝ったことのないアメリカに対して、先に得点されても取り返す。素晴らしいゲームをしていた。その成長ぶりを見て、心から『すごいな』って思ったんです。根本的に僕は、試合が始まったら『勝ちたい』とか『負けるかもしれない』とか、考えないようにしています。結果に対して欲を出すのではなく、覚悟してベンチに座る。そうしなければ、冷静に戦況を見ることができない。だから、あのPK戦の前でも笑顔でいられるんですよ」

延長戦でも決着がつかず、迎えたPK戦。先攻のアメリカの選手が立て続けにPKを外し、逆に日本は3人中2人がゴールを決めた。「背番号4だから」と冗談を交えながら、佐々木が4番目のキッカーに指名した背番号4の選手がゴールネットを揺らした瞬間、日本の世界一が決まった。

「できる」と思える経験が、「ブレない」心をつくる

佐々木は自身の指導法を「放任主義」だと語る。まずは監督主導でチームのベースとなる戦術や心構え、姿勢を叩き込んだ上で、その土台ができたと見れば、選手個々の考え、自主性を重んじる。

「サッカーは、ピッチに出たら選手が自分たちで判断することがメインのスポーツですから、攻守にアクションを起こすというベースの部分はしっかりと教えた上で、あとは選手に任せる。どちらかというと女子選手は、男子よりも判断をスタッフに委ねる傾向にあります。『今のプレーは、いいんでしょうか?』と。そこは変革しなければいけなかった」

変革は、簡単には進まなかった。特に自己評価の部分については、佐々木と選手たちとの間に大きな溝があった。08年、佐々木は日本の女子サッカーを率いて以来、初の世界大会を1カ月後に控えた記者会見の場で、こう語った。

「今の進捗状況を考えれば、ベスト4に進める可能性は4割くらいあると思います」

ところが選手たちと目標設定について話し合うと、否定的な意見ばかりが聞こえた。

「僕にとっては世界の中での力関係、当時のコンディション、準備の状況を踏まえて発信した言葉でした。ところが選手たちは、『そうは思わない』と。チームにとって一番大事なのは目標値を定めて、それに対して選手が本当に納得して邁進することです。当時の彼女たちには、まだ『私たちならできる』という心ができていなかった。世界大会で予選リーグを突破したことがなかったから、負の心が残っていた。できないかもしれないという心では、壁にぶつかったときに折れてしまう。だから本番までの1カ月は『できるという心のレベルを引き上げて本番に行こう』と、繰り返し伝えていました」

結果は、佐々木の予言どおりベスト4。大会を通して、選手たちのメンタルが明らかに変わっていくのを目撃した。

「アメリカ、ノルウェー、ニュージーランドという強豪ぞろいの厳しいグループリーグを接戦の中で突破したことで、彼女たちに『できる』という心が芽生えたと思います。3戦目の相手は優勝候補のノルウェー。しかもグループリーグ突破には、2点差以上で勝たなければいけない。そんな状況で先制点を奪われたにも関わらず、彼女たちの心は全く折れなかった。右サイドバックの選手が敵陣のペナルティーエリアまで入って同点ゴールを決めて、終わってみれば5−1で勝ちました。準々決勝では開催国の中国を倒して、準決勝のアメリカとも、3位決定戦のドイツとも、敗れはしたけども良い試合ができた。この経験によって、心のベースができたと思います。あれ以来、選手たちは『チャンピオンを目指す』と公言するようになったし、ベテラン選手たちは、その意識を若手に伝えるようになった。女子選手は、一度『できる』と思える心が身につけば、ブレない。だからこそ、11年の優勝につながったと思います」

選手の能力をピッチ上で最大限発揮させることこそが、最強の戦術

選手の能力をピッチ上で最大限発揮させることこそが、最強の戦術。これは佐々木の持論だが、選手それぞれの能力・性格を監督が把握できていなければ、成立しない。例えばキャプテンとの接し方について。佐々木のチームでは、試合直前のミーティングをキャプテン中心に行う。

「あるキャプテンは、比較的淡々と仲間たちにメッセージを伝えるタイプでした。だから、彼女がキャプテンだった時代には、僕がわざとギャグを言ったりして、滑る。そこに誰かが突っ込みを入れて、チーム全体が和んだところで彼女が語ることによって引き締まる。一方、別の選手がキャプテンになってからは、僕は静観していました。彼女は事前にしっかりと思考して、チームメイトの涙を誘うような言葉も準備してくる。だから、僕のダジャレやギャグのようなお膳立ては必要ないんです」

日本を率いるキャプテンともなれば、世界的な名手だ。そのキャプテン以外にも、世界一となったチームには自己主張の強い選手が揃っていた。そんな彼女たちの意見に対して、まず佐々木が大事にしていたのが「聞く姿勢」だ。

「僕の長所は、自分の考えが否定されてもカチンと来ないところなんです。もちろん指導者になったばかりの頃は、選手に意見されると『うるさい。俺の言っていることをやっておけばいいんだ』という時代もありました。でも、自分なりに勉強しながら経験を積んだことで、自分を否定されてイライラするのではなく、なぜこの選手はそう思うのかと考えて、受け入れるようになった。11年の大会では、準々決勝(ドイツ戦)の試合中に選手たちが『ポジションを入れ替えたほうがいいのでは』と言ってきました。僕も納得できたので、そのとおりにしたら、決勝ゴールが生まれたのです」

上の立場だからこそ、自身を客観視する重要性

常にアンテナを張り巡らせながら、選手の意見に耳を傾け、最適な言葉を投げかける。それほどチーム状況の変化に敏感な人だから、佐々木は自分自身のことも観察し続けてきた。この姿勢は、サッカーの指導者だけでなく、企業の管理職にも必要なことだと言う。

「チームや企業内の管理者というのは、上の立場だからこそ、指示の伝え方や態度が良くない場合でも、なかなか周囲が言ってくれない。だからこそ自分で振り返って、チェックする。『今の俺は、客観的に見てどうかな』と感じなければいけない。サッカーのチームでも一般の企業でも、人間が人間を指導しているわけだから、常にパーフェクトはあり得ません。上司がいつも100点に近い言動をするのがベストですけど、そうはいかない。

だから僕は、11の項目を決めて自分のことをいつもチェックしていました。例えば『責任』『誠実さ』『忍耐』『論理的分析思考』などです。僕は本来、悪いことが起きても、くよくよしないタイプですが、それが行き過ぎると“ずぼら”になる。これではチームにとってマイナス要素です。自分の性格を踏まえた上で、現在の状態が組織にとってプラスになるかを客観的にチェックすることが大事だと思います」

FUJI XEROX SUPER CUP 2017は、日本サッカーのトップ・オブ・トップの戦い

佐々木は16年3月に日本の女子サッカーの最前線から退き、17年シーズンからはJ1リーグ・大宮アルディージャのトータルアドバイザーに就任した。Jリーグのクラブ関係者の1人として、やはり2月18日のFUJI XEROX SUPER CUP 2017は、見逃せない一戦であると言う。

「昨年末、世界の強豪クラブと対等に渡り合った鹿島アントラーズと、浦和レッズがぶつかる。日本サッカーのトップ・オブ・トップの戦いであることは間違いない。“世界2位”となった鹿島が新たなシーズンにどんなサッカーをするのか、日本中が注目しますし、裏を返せば、あれだけの実績を残したからこそ、新シーズンに下手なサッカーはできないはずです。一方の浦和は、昨年のチャンピオンシップ決勝で鹿島に敗れた悔しさがあるから、負けるわけにはいかない。プライドとプライドがぶつかる好ゲームになるのは、間違いないと思います」

指導者目線ではどうだろうか。佐々木も監督時代、世界大会の開幕前に、大観衆の前で公式戦を経験できることの効果を感じていた。

「やはりキャンプでのトレーニングや練習試合では、選手だけでなくメディアなど周りも盛り上がらない。大観衆の前で緊張感のある実戦を経験することで、監督としてもキャンプで準備してきた戦術、新たに獲得した選手の能力がフィットしているのか、確認することができます。スタンドやテレビで観戦するお客様にとっても、2017年の鹿島と浦和の新たなスタイルを知ることができる絶好の機会でしょうね。ましてやFUJI XEROX SUPER CUPは、シーズン最初のタイトルが懸かった一戦ですから、僕自身もすごく楽しみにしています」

(文・松本宣昭)

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