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トップリーダーに学ぶ「勝利のチームマネジメント」

FUJI XEROX SUPER CUP 2016 2015明治安田生命Jリーグチャンピオン サンフレッチェ広島 対 第95回 天皇杯 優勝 ガンバ大阪 2016年2月20日 土曜日 13:35 KICK OFF 日産スタジアム

[トップリーダーに学ぶ「勝利のチームマネジメント」] FUJI XEROX SUPER CUP 2016に出場するサンフレッチェ広島 森保一監督、ガンバ大阪 長谷川健太監督に「リーダーとしての姿勢」そして「チームづくりに対する考え方」を聞きました

ガンバ大阪 長谷川健太監督

リーダーとしての姿勢
ブレない哲学で道を示しながら、覚悟と実行力でチームを牽引

まず最初にリーダーシップのスタイルを把握するため、自己評価アンケートに回答していただきました(6点満点で評価)。

長谷川健太監督のリーダータイプ

リーダータイプ 自己評価
価値や判断の基準を示し、一段上から見守る「人格型リーダー」 5.6点
鋭い洞察力で牽引する「洞察型リーダー」 4.2点
高い目標を掲げ、実行力で牽引する「達成型リーダー」 6.0点
各人が能力を発揮しやすい環境をつくり、協働活動を誘発する「触媒型リーダー」 3.6点
一人ひとりが活躍できるよう後方から支援する「奉仕型リーダー」 4.4点

リーダー論 1
結果にはこだわる、その一方で選手もお客さまも楽しいことが理想

Jリーグの監督というのは、例えば5回負け続けたら次の監督に交代するわけで、短期間で成果を出すということ以上にリーダーとしてチームに説得力をもたらせることはないと考えています。"結果"には、とことんこだわりたいですね。ですから、目標を掲げ、絶対に達成するんだという意識は強く持っています。その一方で、プレーする選手にとっても見ているお客さまにとっても"楽しいサッカー"をするのが私の理想です。

リーダー論 2
リーダーはブレてはいけない、チームを信じ自らで決断する

かつてのチームで優勝できないまま監督を降り、自分自身の考え方や取り組み方のどこが悪いのか、世の中のリーダー達との対話を通じて模索したことがありました。結果として、"自分は間違っていない"という自信を持ったのです。勝てないからといって他の強いチームのやり方を真似ようなどとリーダーがブレている方が、よほどマイナスだと。それに、引き受ける時点からガンバ大阪は間違いなくJ1で優勝できる力を持ったチームという確信があったので、信念を持ってチームを率いることができています。つまり、やり続けることがとても大切だと思うわけです。

リーダー論 3
コミュニケーションは自ら取るが、選手と食事に行くようなことはしない

怖いと言われるので、周囲からは話しかけにくい存在だとは思います。だから、意識的にこちらから話しかけていくことも少なくありません。ただ、コミュニケーションを取る必要があるからといって、選手と食事に行くようなことは絶対にないですね。1人と行けば、全員と行かなければならなくなります。監督が公平さを失うことは、選手のモチベーションを下げますから。

チーム作りに対する考え方
強いチームは連動によって機能する。そのためにも、ロボットは作らない

チーム作りのお考えについてお伺いします。チーム作りの要諦は3つ「ベクトル(短期的な目標や方針の明確さ/将来像や価値観の共有)」「プロセス(チーム内の決めごと/創造性や柔軟性)」「ヒューマン(個々の能力向上/チームとしての相乗効果の最大化)」と言われていますが、重視する順に並べてください。

長谷川健太監督の並べた結果

[1.ヒューマン] 個々の能力向上、チームとしての相乗効果の最大化 [2.プロセス] チーム内の決めごと、創造性や柔軟性 [3.ベクトル] 短期的な目標や方針の明確さ、将来像や価値観の共有

チーム論 1
重視するのは「チームとしての相乗効果の最大化」、メンバーの共通理解がチームを底上げする

先ほど「達成型」とリーダーシップの話でも出ていましたが、チームワークさえ機能すれば目標達成は後からついてくると考えています。各人が持てる力の80%しか出せなくとも、その連動によって機能するチームが強いんです。守備は連動ですから、チームのベースを作るためには守備の強化が欠かせません。つまり、守備の強化は弱点強化という意味ではなく、チームの共通理解を作るという意味で極めて重要だと考えています。

現役時代、自分の場合は攻撃側の選手だったので、守備には疎かったです。監督のチーム作りにおいては、現役時代に得意だったことの延長で考えるというより、むしろ現役時代に意識していなかった部分に力を入れるケースが多いのではないでしょうか。監督になって、勉強したことをひけらかしたいということかもしれません。

"楽しいサッカー"が理想ですから、ロボットは作りたくありません。まずは決めごとができるようになってから、創造性あふれる数人に徐々に自由を解放していくという監督もいるかもしれません。自分は、大枠だけ示してその中で自由と自立に任せたいと思っています。攻撃は特にそうですね。でも、自由にやっていいとなると誰もが創造性を発揮できるわけではないので、「そこでこう動くんだ」と決めごとをアドバイスとして与えていくという順番です。ロボットを作りたくないからこそ、「こういうサッカーをするんだ」というチームの共通理解が重要です。

チーム論 2
マンネリを超えるマンネリ。大切なのは、変革より継続

J2にいたときも、もちろんまずはJ1に上がらなければなりませんでしたが、絶対にJ1で優勝を狙える戦力だと思っていたので、意識変革などを特に求める必要もなかったですね。具体的な課題を提示し、ソリューションを明確にし、そして一つひとつの成果を積み重ねるだけでした。「変革だ変革だ」と言って方針がブレていては本末転倒です。私はよく「マンネリを超えるマンネリ」という表現をするのですが、マンネリだろうが何だろうが成果が上がるまで「続けること」の方が重要だと思うんです。

FUJI XEROX SUPER CUP 2016に向けての意気込み
不安と期待が入り交じる、シーズン最初の公式戦。絶対に勝ちにいく

最後に、FUJI XEROX SUPER CUP 2016に向けての意気込みを聞かせてください。シーズンの始まりに向けて、オフの間にどのような準備をされるものですか。

昨シーズンは年間60試合もあったので、オフの間はなるべく心身のリフレッシュに努めました。選手の移籍情報を見ながらチーム作りの構想を練ったりもしますが、今シーズン最初のミーティングでは、頭で考えたことというよりもリフレッシュした心で感じたことを率直に伝えるようにしています。

FUJI XEROX SUPER CUP 2016は「公式戦の初戦」と位置づけているので、いいスタートが切れるかどうか、これから始まるシーズンを占う大切な試合です。もちろん初戦ということで不安もありますが、色々なことを試してみたいというチャレンジの気持ちや、新しい選手を披露して皆さんに楽しんでもらいたいというワクワク感もありますね。ただ、選手達には「絶対に勝ちにいく」と伝えています。

サンフレッチェ広島 森保一監督

リーダーとしての姿勢
後方からサポートしながら、チームの連携を生み出す

まず最初にリーダーシップのスタイルを把握するため、自己評価アンケートに回答していただきました(6点満点で評価)。

森保一監督のリーダータイプ

リーダータイプ 自己評価
価値や判断の基準を示し、一段上から見守る「人格型リーダー」 5.0点
鋭い洞察力で牽引する「洞察型リーダー」 4.4点
高い目標を掲げ、実行力で牽引する「達成型リーダー」 4.8点
各人が能力を発揮しやすい環境をつくり、協働活動を誘発する「触媒型リーダー」 5.2点
一人ひとりが活躍できるよう後方から支援する「奉仕型リーダー」 5.2点

リーダー論 1
知らず知らずにチームが一つにまとまることを目指す

自己評価結果には納得しています。チームに対しては、方向性だけを示したら、あとは「皆でやっていこうよ」というスタンスでいます。監督の私自身がチームを牽引するのではなく、チーム全員が「頑張った」と思えるような方法でチームを運営したいと思っています。目標をピンポイントに絞るのではなく、目標自体に一定の幅をもたせて、個性豊かな選手やスタッフが自由に活動しながらも、バラバラだった集団が気づいたら一つの方向に向かってまとまることを目指しています。前に出て引っ張るというより、後ろから見守りながら緩やかに動きを誘うイメージです。

リーダー論 2
結果だけにこだわらず、選手の成長を手助けしたい

もちろん選手には、結果にはこだわれとは言っています。しかし、上手くコントロールできないこともありますし、そこで出た結果は結果でしかありません。結果だけにこだわりすぎるのではなく、サンフレッチェ広島にいたことで、選手個人が努力して伸びて、将来の成長に繋がれば良いと思っています。仮にこのチームで成功できなくても、このチームにいたから成長があったという場を提供していきたいです。選手の成長を手助けしたいという気持ちが強いですね。

チーム作りに対する考え方
個の成長を通じてチームの成長を促す。監督の仕事は"観る"ことから始まる

チーム作りのお考えについてお伺いします。チーム作りの要諦は3つ「ベクトル(短期的な目標や方針の明確さ/将来像や価値観の共有)」「プロセス(チーム内の決めごと/創造性や柔軟性)」「ヒューマン(個々の能力向上/チームとしての相乗効果の最大化)」と言われていますが、重視する順に並べてください。

森保一監督の並べた結果

[1.ヒューマン] 個々の能力向上、チームとしての相乗効果の最大化 [2.プロセス] チーム内の決めごと、創造性や柔軟性 [3.ベクトル] 短期的な目標や方針の明確さ、将来像や価値観の共有

チーム論 1
選手一人ひとりが成長し、チーム全体で理解し合うことが高度なチームワークを生み出す

チームの成長というのは選手個人の成長を通じて促進されるものだと思います。また、選手が良いパフォーマンスをするためには、チームメイトに自分の良さを分かってもらい、互いに支え合って協力することが不可欠です。良い結果を出すために選手一人ひとりが努力して成長し、互いに理解し合うことが、良い結果を生むための高度なチームワークを醸成します。これらは、矛盾することではないですし、どちらとも大切な考え方です。強いて言えば、チームより優先されるものはないということです。サンフレッチェ広島には、そのような選手はいませんが、チームの和を乱すようなことは許されません。それほど、チームの和というのは最も優先すべきことです。

チーム論 2
"観る"ことで、選手の変化に気づいてあげたい

監督の仕事は"観る"ことから始まると思っています。よく観ているのは顔の表情です。少しでも変化に気づいてあげたい、分かってあげたい、という気持ちで選手一人ひとりを観ています。日々の変化を注意深く観ていると、例えば寝不足だなとか、何か悩んでいるなとかが、分かります。

監督に観られているということは、選手のモチベーションアップにも繋がるだろうし、プラスになると考えていますが、逆にプレッシャーになるのであれば、それは本意ではありません。あくまでも選手が持っているものを100%引き出してあげたいという気持ちから彼らを観ています。

チーム論 3
「優勝」の前に、まずは「残留」

Jリーグでプレーする以上、どのチームもシーズンの明確な目標を掲げていると思います。ずばり「優勝」です。チームが壁にぶつかった時などは改めてベクトルを修正する必要もあるでしょうが、ことさらに目標の重要性を強調する必要は全くないと思います。それよりもむしろ、目の前のことに集中し、やらなければならないことを着実に積み上げた先に、自然と目標が見えるようにしたいのです。

ちなみに私は、目標を何段階かで設定しています。ゴールは「優勝」ですが、シーズンの最初には同時に「残留」も掲げます。優勝した次の年の目標が残留だなんておかしいかと思うかもしれませんが、残留するための目安となる勝ち点40を一日でも早く達成することを目の前の目標としています。残留をいつまでに確定させるかを設定することで、さらなる高みの優勝という目標に繋がります。

チーム論 4
監督は"人の心を預かる仕事"。今だけ強ければいいのではなく、サッカー界に残るチームを作りたい

次の成功のために、変えるべきことは常に考えています。考えた結果、変える必要がないと判断することも多々あります。しかし、傍目では変わっていないようなことでも、決して現状維持ではなく、必ず何かしらのバージョンアップはしています。ベースは同じでも、技術面、メンタリティ面、体力面などの質を向上させる設定を行い、苦しみながらも乗り越えているつもりです。これを愚直にやり続ければ、気づいた時には相手がついてこられなくなるわけですよね。

監督は、基本的に人の心を預かる仕事だと思っています。選手達がこのチームに属している間に、「他ではできない良い経験が積めた」「ここで個人の能力が伸びた」ということが実感できなくてはだめなのです。そのためにも監督は、選手達の努力と成長の過程を、よく見ていて評価してあげなければならないのです。サンフレッチェ広島は、選手を育成しながらチームとしても強くなることが至上命題です。私が、サンフレッチェ広島で育ち、このチームの監督であることも影響しているのかもしれません。

私は、チームは今だけ強ければ良いという考え方はしていません。私がいなくなったとしても、このチームに考え方だけは残っていくし、脈々と受け継がれていくものです。そして今やっていることが、将来のサッカー界に残っていくのだと信じています。

FUJI XEROX SUPER CUP 2016に向けての意気込み
日本で2チームだけが戦える喜びをかみしめたい。タイトルをかけて全力で獲りにいく。

最後に、FUJI XEROX SUPER CUP 2016に向けての意気込みを聞かせてください。オフ後でシーズン前という難しさがあると思いますが、監督はどのように位置づけられていますか。

日本でたった2チームだけが出場することができる公式戦であり、その場に立てる喜びを存分に感じながら戦いたいと思います。我々を支えて下さっているすべての方々に、あらためて感謝の気持ちを伝えたいですし、そのためにもキャンプで準備してきたことはすべてぶつけたいと思います。FUJI XEROX SUPER CUP 2016は、タイトルを懸けた試合ですし、シーズンの重要な試合の一つと位置づけています。チームとして全力を懸けて獲りに行こうと、選手達には意識を共有できています。

聞き手:松村卓朗(マツムラタクオ)

ピープルフォーカス・コンサルティング(PFC)代表取締役
大学卒業後、外資系経営戦略コンサルティング会社に入社、シニア・コンサルタントとして活躍の後にPFC入社。2012年代表取締役に就任。企業での、組織開発・リーダー育成の支援経験多数。
著書:「勝利のチームマネジメントサッカー日本代表監督から学ぶ組織開発・人材開発」(竹書房)、「組織開発ハンドブック」(共著/東洋経済新報社)、「チームビルディングの教科書」(共著/秀和システム)等。