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環境配慮商品として高い評価をいただく複合機&プリンター。
実際の開発を担当した技術陣は何を考え、
どのように仕事を進めたのか。その舞台裏を紹介する。
今やすべての企業で環境配慮に取り組んでいる。そうした企業のお客様に「よくここまで考えたな」と感心してもらうレベルの商品でなければ富士ゼロックスの顔とは言えない。
富士ゼロックスのデジタルカラー複合機およびプリンターは、2007年11月、第4回エコプロダクツ大賞(エコプロダクツ大賞推進協議会主催)エコプロダクツ部門の経済産業大臣賞を受賞した。秀でた基本性能に加え、徹底した消費電力の削減、鉛「ゼロ」シャフトやバイオマスプラスチックの採用など業界初の環境技術が高く評価された結果だった。受賞した複合機は、2008年6月に中国政府のグリーン調達リストにも選定された。また、受賞したプリンター75台は、2008年7月の北海道洞爺湖サミットの公式開催期間中、国際メディアセンター、事務センターなどで、サミット関係者やマスコミ関係者に活用された。
富士ゼロックスでは、新商品の開発・市場導入のプロジェクト管理は、全体を統括するゼネラル・プログラム・マネジャー(GPM)と、開発面を統括するテクニカル・プログラム・マネジャー(TPM)に託される。経済産業大臣賞を受賞したデジタルカラー複合機およびプリンターのTPMは、入社20年目の安藤良が務めた。安藤はそれまで大型複写機の画像制御の開発を担当していた生粋の現場の技術者である。それが、大量の世代交代、中国への開発・生産シフトなどによるリーダー人材の新たな需要のなかで、開発・市場導入の全体を指揮できる人材として大抜擢されたのだ。
一方、GPMである商品開発本部の秋吉祐二は安藤の言葉を聞いて驚いた。「安藤君は、お客様が要求するすべての機能を盛り込んだ、21世紀を代表するダントツ商品をつくりたい、と真剣な顔で言うんです。もちろん気持ちは僕も同じでしたが、こいつ本気だなと思わせる気迫がすごかったですね」秋吉は苦笑まじりに語る。「でも、そう言い切った方が開発の目標が明確になってやりやすいかもしれない、と考えました。それに、仲間の技術者がずっと温めてきた環境技術がたくさんあるのは知っていましたしね。よし、何でも徹底的に試してやろう、という気持ちでスタートしました」。
富士ゼロックスの関係者のなかでは、「ダントツを目指す気概」が合言葉になっている。これは、他社との比較優位や一歩リードで満足せず、世の中を驚かせるような圧倒的な強さを追求する姿勢をいう。1980年代に開発陣が方向性を見失いかけたとき、当時の社長小林陽太郎(現相談役最高顧問)が全員にはっぱをかけた際の言葉である。これは、単に競争に勝つだけの意味ではない。一人ひとりが「おもしろい!」と感じるほどに仕事に打ち込む、自分の気概で高い目標に挑戦することで歴史に残るほどの変革や世界一の商品を生み出す、そうした「人を起点とした発想」が「つよさ」につながるという富士ゼロックスの信念を表す言葉なのだ。
プロジェクトには、省エネルギー型の画像装置、バイオマスプラスチック材料など、環境技術に明るい多くの開発者や技術者が呼び込まれた。従来は技術開発と商品開発の各段階で担当者を分けていたが、難度の高い技術課題に短期間で結果を出すため、技術開発のメンバーも商品開発に加わってもらうことにした。安藤はメンバーに呼びかけた。「今まで温めてきた技術をお客様に使っていただく絶好の機会です。コストや納期との兼ね合いは私が責任もって判断します。皆さんは開発者のプライドにかけて、お客様にとって最高の効果が出る技術を投入してください」。
富士ゼロックスの日本・中国・韓国の4工場、原材料・部品の製造、商品の物流などが年間に排出するCO2総量は、日本最大級の化学品メーカーが国内で排出するCO2と比較しても約百分の一程度である。組立作業が中心なので、会社の規模に比べれば意外と少ない。もちろん生産・物流工程でのCO2排出削減も徹底して行なっている。しかし、一番大切なのは複合機&プリンターを使ってくださるお客様が「環境に配慮した企業」になるうえで、富士ゼロックスがサプライヤーとして、またアドバイザーとして、どれだけ貢献できるかという視点である。
経済産業大臣賞を受賞した複合機&プリンターでは、従来のレーザー方式ではなくLED(発光ダイオード)方式を露光装置に採用したことで、消費電力を大幅に低減することに成功した。画像形成装置の研究者である土屋健は開発の経緯をこう語る。「LEDは、長寿命・低電力などお客様へ価値を発揮できる技術です。しかし、量産したときの画質のムラがずっと課題でした。でも、上司から『将来を支える環境技術だ、ここであきらめるな』と強い後押しがありました。そこで、グループ全員で手分けして、一見関係ないと思われる資料まで全部調べました。その結果、デジタルカメラのパンフレットから解決のヒントを得ることができました。お客様にとって一番価値ある技術を届けようという全員の執念が通じたんですね」。
環境に配慮した商品を開発するにはどのような難しさがあるのだろうか?
「例えば消費電力を低減するには商品や部品を『小型化、集約化』します。そうすると次に熱や音の処理をどうするかを考えなくてはなりません。振動などによる部品相互の影響も解決すべき大きな問題です」安藤は語る。それぞれの技術では課題をクリアしていても、いざ小型化された商品に組み込もうとすると新たな問題が発生する。例えば、小型化に起因する熱の問題は深刻だった。熱を逃がすための排気穴を大きくすると今度は音の問題が発生した。コストをかけずにこれらを解決するために何度も何度も実験を重ね、排気穴の場所や大きさ、ファンの向きを変えることで、やっと理想のバランスにたどりついた。こうした問題の繰り返しに、メンバーは寝る時間を削って議論と実験を繰り返した。
チームワークも大きな要素だ。「従来技術を使用する部分のコストは可能な限り削減し、環境などの新技術には思い切って投資する、つまりメリハリをつけることでお客様の納得できるコストを実現しました。これを残す代わりに、この部分はある程度あきらめようというバランス感覚を共有することで、全員の仕事のレベルが一段と向上したように感じます」安藤はこのように振り返る。担当者の利害は時として衝突する。ダントツの環境配慮商品という共通の高い目標に向かってぶつかり合うことは、メンバーの結束力を強めるだけでなく、縦割りの業務分担のなかで意思の疎通に欠けていた部門間の連携を改善する効果もあったのだ。
富士ゼロックスエンジニアリング(株)、機構開発部の正木慎治は静音設計を担当した。「僕らの目指すところはとても高いのですから、はじめからできる見通しがたつものはほとんどありません。はじめから『できる』か『できない』かを考えるのではなく、自分自身が『やる』か『やらない』かを腹決めすることが大切だと分かりました。必死になれば結果は必ずついてくるのですね。この経験を忘れずに、これからもチャレンジを続けていきます」正木はプロジェクトへの参加で学んだことをこう述べた。
GPMの秋吉は語る。「商品としての基本性能はもちろん、環境やユニバーサルデザインはこれからの商品にはなくてはならない条件の一つです。商品開発の立場では挑戦したい課題はたくさんあります。その一方で、コストや納期の制約があるので、理想の開発がいつでも実現できるわけではありません。でも、信念を持って夢の実現を追い続けることが開発者のCSRではないでしょうか。皆さんから応援をいただき、自分たちのやってきたことが間違いないと確信することができました。チーム全員、感謝の気持ちでいっぱいです」。
エコプロダクツ大賞は、設立趣意書のなかで「具体的にすぐれた環境配慮が組み込まれるとともに、独創性あふれ、しかも社会から評価の高いエコプロダクツを表彰する」と、その狙いを説明している。世界のサステナビリティに寄与する「独創性」こそ、富士ゼロックスの目標とするところである。富士ゼロックスの商品はこうした熱い心の技術者が開発している。お客様の環境配慮への貢献に終わりはない。
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