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「循環経済の発展」に向けて法律や社会制度の整備が進む中国。
その中国で富士ゼロックスの資源循環システムが稼動した。
さまざまな人々に支えられ、今立ち上がろうとしている活動を紹介する。
中国政府は、2006年3月に開催した第10期全国人民代表大会第4次会議において、2006年から2011年までの「第11次国民経済社会発展5ヵ年計画」を採択した。そのなかで過去5年間のエネルギー資源の過剰消費と廃棄物による環境汚染の激化を踏まえ、「資源投入の増加」による経済成長から「資源の利用効率の向上」による経済成長への転換を図ろうとしている。
その5ヵ年計画の第6編は「資源節約型、環境調和型社会の建設」と題され、循環経済の発展、自然生態系の保護と再生、環境保護の強化、資源管理の強化、海洋・気候資源の合理的利用の在り方など多方面にわたる施策が並べられている。これらを受け、政府は循環経済の構築促進のための政府目標や具体的な指標を示した。
その後、2006年から始まった全人代の環境資源保護委員会の審議を経て、2008年8月、北京オリンピック開催中に「循環経済促進法」が成立し、2009年1月から施行された。循環経済促進法では「循環経済の発展を促進し、資源利用率を高め、持続可能な発展を実現する」(同法第1条)ことを目的に掲げた上で、循環経済を「生産、流通及び消費などの過程でなされる減量化、再利用、資源化活動のすべて」(同法第2条)と定義している。
この循環経済促進法において、製品等の生産者には、リサイクル設計、指定有害物質の使用制限、強制回収リストで指定されている製品や包装物の回収などの義務が課されている。しかし、実際は、生産者への義務や責務は努力目標にとどまるものが多く、肝心の強制回収リストもまだ十分に整備されていない。先行諸国と同様の法律や制度は取り入れたものの、同法に基づく運用はようやくスタートについた段階なのである。
2008年1月、中国・蘇州に富士ゼロックスエコマニュファクチャリング( 蘇州)が設立された。香港・マカオ・台湾を除く中国全土から回収した使用済みの複写機・複合機や消耗品カートリッジを約70カテゴリーに徹底的に分解し、部品リユースや再資源化を行なうことによって、「廃棄ゼロ」、「汚染ゼロ」、「不法投棄ゼロ」を目指す資源循環システムの稼動開始である。日本(1995年)とタイ(2004年)に次ぐ3番目の拠点で、これによって富士ゼロックスの事業エリアであるアジア・パシフィック全体をカバーする独自の資源循環ネットワークが完成した。
同社の設立段階から建設現場と蘇州市政府との間を奔走した総経理の大竹雄二は語る。「富士ゼロックスの資源循環は、80年代後半にヨーロッパで始まったリサイクルをきっかけに、技術者や営業が創意工夫を加え、法律や制度ができる前から日本のお客様にその大切さを説明してきました。今度は、中国の社会で実践してお役に立ちたいと思います。中国政府が『循環経済の実現』という高い理念を示していることに共感を覚えますし、蘇州市政府の方々が私たちの取り組みを評価し、期待してくれていることで、とても励みになっています」。
富士ゼロックスが国際規模の資源循環ネットワーク構築を進めた原点は「廃棄物問題に国境はない」、「ダブルスタンダードは許さない」(サステナビリティレポート2005[PDF:273KB]で紹介)という関係者の熱意である。この気持ちを失わないために、富士ゼロックスは「海外展開時の基本の考え方」と「基本4原則」を定め、関係者全員で共有している。


こうした資源循環システムを、販売と保守サービスを担当する富士ゼロックスチャイナの従業員はどのように受け止めているのだろうか。南京、蘇州、杭州の販売代理店への営業を担当する陳幼法は語る。「自分が販売した複写機の多くは、使用後に解体・売却され、残りは郊外に不法投棄されています。その事実にとても心を痛めています。ですから、蘇州の資源循環工場が稼動したことを聞いて、とても興奮しましたし、すべての代理店に早く伝えなくてはと思いました」。直接の収益につながらないリサイクルへの協力を代理店に納得してもらうのは難しい。しかし、陳幼法には、中国社会の未来にとって不可欠な活動だという強い信念がある。「代理店だけに任せるのではなく、お客様に対して、この仕組みの真の価値を伝えることが重要です。この取り組みを加速するために富士ゼロックスがやるべきことはたくさんあります」と陳幼法。「消耗品の外箱にこの活動の狙いや回収方法を記載したシールを貼るのが効果的だ」、「お客様への説明用パンフレットをつくろう」、「工場見学会を定期的に実施すべきだ」と彼のアイデアは尽きない。陳幼法の信念は多くの同僚や代理店を動かし始めた。
一方、直接お客様を担当する直販部門は、保守サービスを担当するカストマーエンジニアを通じて、使用済みの複写機や消耗品カートリッジの回収協力をお客様にお願いする活動から取り組みを始めた。当初、営業担当の多くは、資源循環活動は有力な差別化ポイントにならない、回収への協力依頼は新たな負担になりかねない、と尻込みした。そこでお客様との接点が多く、信頼も厚いカストマーエンジニアがその役割を担うことになったのである。カストマーエンジニアの黄家龍は語る。「資源循環の説明と教育を受けた直後は、お客様が協力してくれるかどうか心配でした。しかし、取り組みの主旨を聞いてくださるお客様の多くは、回収にも協力してくださいます。なかでも、大学や大手企業など環境意識の高いお客様は、複写機や消耗品カートリッジのリサイクルについて関心が高く、私たちの取り組みを高く評価してくださいます。お客様に機械の環境側面の性能や廃棄の仕方をきちんと語れることは私たちにとっても誇りです」。中国社会の成熟や市民の生活改善に向かって正しい仕事をしている、という実感が従業員の姿勢を確実に変えている。
富士ゼロックスチャイナの代理店である蘇州市蘭陵弁公設備有限公司の任凭総経理は、蘇州の資源循環工場が稼動したことを聞き、まさにわが意を得たり、という気持ちだったという。「中国の社会では、中古再生品、解体資材、廃棄物などが『適切でない方法』で扱われ、環境問題の原因になっています。数年前、富士ゼロックスの日本の工場(神奈川県海老名市)で資源循環のラインを見学した際、中国でも早くこうしたシステムを導入しなければいけないと感じました」。任凭氏は早速、自社の従業員を集め、資源循環システムへの協力を宣言し、この活動の目的や内容を営業担当に教育した。そして自腹で報奨金も用意し、使用済みの複写機や消耗品カートリッジの回収を進めた。「当初、お客様の理解が得られませんでした。不法に横流して儲けようとしているのではないか、といった誤解も受けました。そこで、富士ゼロックスから認定証をもらい、正しい仕組みであることを伝え、徐々にですが協力してもらえるようになりました」。任凭氏は営業の先頭に立って動き回った。回収に協力してもらえないお客様には何度も訪問し、説明を繰り返すことで理解が得られるようになったと言う。任凭氏は語り続けた。「富士ゼロックスの資源循環システムは、ビジネスにも中国の社会にとっても正しいやり方だと思います。これらを定着させるには、環境を大切にする市民の気持ちを醸成することが不可欠です。そのために政府には積極的な指導を期待します」。富士ゼロックスの関係者に生まれた熱い気持ちは、中国の代理店の経営者に確実に伝わった。
富士ゼロックスエコマニュファクチャリング( 蘇州)が操業を開始して1年6ヵ月。総経理の大竹は、次の目標として部品やカートリッジのリユース量の増加をあげた。リユース量が増えると、製造原価の低減や環境会計の黒字化につながる。「この活動が多くのお客様に評価され、富士ゼロックスチャイナの販売に貢献できるような、つまり中国のマーケティング戦略に活用してもらえる大きな仕掛けにしたいですね。お客様や政府と協力して中国社会の廃棄物問題の解決に多少なりとも役立つことができるよう頑張ります」。大竹はその意気込みを語る。
中国における販売の責任者である徐正剛は語る。「今、中国では、環境問題への対応が迫られており、政府も新しい法律や社会制度の充実を図っています。生産者・販売者として、その一翼を担うことは、社会に対する企業の責任として重要です。しかし、当社の資源循環の取り組みに対する現時点での理解は、お客様や代理店だけでなく、従業員も含めて十分ではありません。私は、当社の取り組みを多くのお客様や政府の方々に積極的に伝え、正しく理解してもらうことが重要だと思っています。そして、リユースの量を増やし、原価低減などの効果をお客様に還元するところまでリーダーシップを発揮したいと思います」と熱く語った。
「廃棄物問題に国境はない」、「ダブルスタンダードを許さない」、富士ゼロックスのこの姿勢が多くの人々の心に火をつけた。中国における「和諧(調和のとれた)社会の実現」は、大量生産、大量消費、大量廃棄など「負の遺産」を背負った先進各国の反省と学習の上に進められている。持続可能な社会の実現はどのようにあるべきか、世界の人々が知恵を出し合って考えたい。豊かで調和の取れた中国社会の実現に向けて関係者の挑戦は続く。