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第三者意見

足達 英一郎 (Eiichiro Adachi)
日本総合研究所 主席研究員
1986年一橋大学経済学部卒業後、1990年株式会社日本総合研究所入社。経営戦略研究部、技術研究部を経て、現在、ESG リサーチセンター長。主に企業の社会的責任の観点からの産業調査、企業評価を手がける。日本規格協会ISO/SR 国内委員会委員。著書に『CSR経営とSRI』(共著・きんざい)、『地球温暖化で伸びるビジネス』(共著・東洋経済新報社)、『会社員のためのCSR 入門』(共著・第一法規)など。

社会的責任投資のための企業情報の提供を金融機関に対して行なっている立場から、本誌ならびに関連ウェブサイト(データ編)を通じて理解した富士ゼロックス(以下、御社)の持続可能な社会の実現に向けての考えと活動(以下、CSR活動)に関し、第三者意見を以下に提出します。
御社のCSR活動は、「時として矛盾しがちな経済価値、社会価値、人間価値をイノベーションによって高いレベルで統合したい」という理念に裏付けられているということがよく分かります。多くの企業では自社の持続可能性のためにCSR活動が存在しているというレベルに留まっていますが、本誌Highlightの紹介事例からは、事業やそこから得られる収益をあくまで契機や原資として、社会を安心に、人間を心豊かにしていくのだという志を垣間見ることができました。「何のために働くのか」という基本認識において、御社は極めて特異な、際立った存在だと言えるでしょう。
「将来への不安を訴える声が企業にも社会にもあふれている」「和諧社会の実現は先進各国の反省と学習の上で進められている」「貧困の解消という大きな課題を抱える社会で私たちはビジネスをしている」との記述は印象的でした。こうした感受性を今後も大切にしていただきたいと祈念します。その上で、弱視の児童・生徒に対する拡大教科書に関する記述では、企業が行政の役割をどう補完すべきかという重要な論点を提起されていると解釈しました。行政の取り組みの遅れを企業が指摘するとともに、複数のパートナーで支援を約束し、行政をひっぱり出して課題を解決する。そうしたCSR活動の余地は数多くあるはずです。御社には、是非ベンチマークになる事例を開拓いただきたいと期待します。
他方、御社のCSR活動に関する多くのメッセージは、これまでトップマネジメント層からその多くが発せられてきました。それ自体は素晴らしいことではありますが、連結ベースで4万人余りになる従業員一人ひとりのなかに、理念が息づいているかが最も重要です。事業の最前線で経済価値、社会価値、人間価値の3つを統合することは、最も困難で、最もエネルギーを必要とするからです。緒方理事長との対談のなかで、海外ボランティアに参加した従業員が会社を離れてしまったという反省に率直に触れられていますが、会社の理念と従業員一人ひとりの現実に生じがちなギャップをどう埋められるか、そのことへの挑戦と成果を、次年度以降、さらに多くの従業員の方の生の声で報告いただけることを心待ちにしています。各国関連会社のCSR活動の報告はウェブサイトで大きく拡充いただければと思います。
また、株主との関係で、御社のCSR活動をどう説明され、どう支持を獲得されているのかについても理解を得たいと感じました。ウェブサイトには、経済的価値に関する報告がわずかになされていますが、株主から御社への期待はそればかりではないと確信します。
2009年4月に国内外すべての関連会社に詳細な調査ツール「CSRアンケート」を導入され、31頁から網羅的な指標を公開されている姿勢は、他に類を見ない先進性と評価いたしますが、どうか指標を改善することがCSR活動だと単純に理解されてしまうことがないよう、その意義を常に確認いただきたいと思います。
ヒッピー姿の若者が、ただ「ビューティフル」と書かれたカードを手に、のんびりと街中を歩いていく。かつて御社から発せられた「モーレツからビューティフルへ」のメッセージは時代の転換点を人々に気付かせました。今後も御社が、世界で最も「社会」と「人間」に感度の高い企業の一つでありつづけることを期待しています。
なお、このコメントは、本報告書が、一般に公正妥当と認められる環境報告書等の作成基準に準拠して正確に測定、算定され、かつ重要な事項が漏れなく表示されているかどうかについて判断した結果を表明するものではありません。

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