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富士ゼロックスは1962年、「より良いコミュニケーションの促進を通じて世界の人々の相互理解を増進する」という米国ゼロックス社の創業者ジョー・ウィルソン氏の理念を受け継いで、富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)と英国ランク・ゼロックス(現ゼロックス・リミテッド)との合弁会社として東京に誕生しました。
当社は新入社員に対して、「お客様の価値創造をお手伝いして文化的で豊かな社会の実現に寄与することが我が社の存在理由である」と教え続けています。そして、こうした考え方を「私たちが目指すもの」(p3)という企業理念にまとめて、すべての役員と従業員が共有しています。この理念が意味するところは、まさしくサステナビリティ(持続可能性)の精神にほかなりません。
私は、どうすればサステナブル(持続可能)な事業を実現しつつ社会の発展に貢献できるかを考え、強い意志をもって実行することがCSR経営のあるべき姿だと思います。当社はこれまで、事業戦略とCSR推進計画を並行して策定していましたが、「CSRは経営そのものである」との考え方を徹底するために、2009年度から経営戦略のなかにCSRの視点で重要な要素を盛り込み、進捗管理を徹底します。
その経営戦略においては、「お客様のダントツな満足」、「商品ライフサイクルにおける一貫した環境配慮」、「グローバル化に伴う組織・人材の活用」の三つをCSRの視点から優先すべき経営事項と位置付け、その強化・充実を図っています。
この三つのCSRの視点について、2008年度の活動実績の概略を報告します。
最初の「お客様のダントツな満足」については、すべての役員・従業員がお客様の視点で仕事の基本に立ち戻るため「Go To Customers」というスローガンをたてて全社に徹底するとともに、本社に専任の推進部署を設けて「全社の力をお客様に結集する体制」を整備しました。
二番目の「商品ライフサイクルにおける一貫した環境配慮」については、技術面での実現可能性を検証した上で、2020年時点でのCO2削減目標として「2005年度比で30%削減達成」を社会にお約束しました。
三番目の「グローバル化に伴う組織・人材の多様性の活用」については、グローバルなビジネス環境に適応できる人材を育成し、活用するための方針や施策全般の再整備を目指し、その前段階として、各国・各拠点地域の従業員に対する方針や施策を細密に調査しました。
富士ゼロックスは、自社の経営改革や業務改善において諸々の手法や工夫を試みて、その成功体験に基づいてお客様にソリューション・サービスを提供する「言行一致活動」を推し進めています。2008年度版の本誌で、ステークホルダーごとに19の主要管理指標(KPI)の実績および次年度以降の課題・目標をまとめた「CSR推進状況一覧」を報告しました。主要管理指標(KPI)の改善もこの「言行一致活動」の一つとしてお客様の皆様に紹介できるよう、総力をあげて取り組んでいきます。
2009年度は、これらにさらに4項目加えて報告します。それぞれの取り組みの結果については、本誌(p31-34)にも記載しましたのでご覧ください。これらの進捗結果を踏まえ、ステークホルダーへの取り組みについての私の考えを以下に詳しく説明します。
当社のお客様の多くは、未曾有の不況のなかで生き残りをかけた経営戦略の断行に取り組まれています。当社は、お客様が上質なビジネスコミュニケーションに基づいて適切な計画や事業運営を推し進めることができるよう、ドキュメント、画像、映像、音声等の商品やサービスの機能・品質の改善に努めています。しかし、お客様は、単に当社の商品・サービスを望まれているのではありません。お客様は、直面している事業の複雑化、スピード化、グローバル化にも対応できる、信頼のおけるパートナーを求めています。こうした状況におきまして、当社は、自社の商品・サービスに加え他社の商品やサービスも組み合わせながら、お客様の事業に最適なビジネスコミュニケーションを実現することが期待されています。
そこで、当社は2008年度以降、「Go To Customers」を合言葉に営業や保守サービスだけでなく、すべての職種の従業員全員がお客様の経営課題を考え、互いの仕事の関係性を再構築することに専心してきました。前述の通り、この活動は2009年度も継続していきます。
そして、この「Go To Customers」を支える体質・基盤を確保するため、「経営革新活動」と称して、戦略、組織、業務、人の育成等の総合的な変革も進めています。例えば、従来の商品中心の品質保証から会社の総合力の品質保証に拡大する、専門性を備えた従業員をお客様との接点に再配置するといった体質強化策を断行しています。
また、お客様の事業活動がグローバル化するなかで、お客様からの問い合わせ窓口を国や地域ごとでバラバラに運用しますと、お客様に対して全体最適の提案ができませんし、それぞれの得意分野による相乗効果も発揮できません。そこで、2008年度以降、お客様からの問い合わせ窓口をできる限り一元化する方向でグループワイドでの整備を進めています。当社のグローバル化をお客様の価値創造につなげるためには、そうしたインフラストラクチャーから手直しすることが重要であると考えています。
2008年度は、「Go to Customers」の意義について、バックヤードである本社部門や開発部門などの理解が進み、仕事の成果に良い影響が見られました。当社は、卓越した商品やサービスだけでなく「総合力でダントツと評価される企業」、「まずは富士ゼロックスに相談してみようとお客様に思われる企業」を目指して、次なる段階に踏み出したことを報告します。相当に高い目標ではありますが、一つ一つ実績を積み上げていくことがお客様の期待にお応えする唯一の方法と考えています。
2008年度は、グローバル化に伴う組織・人材の多様化、そして経営革新活動を推進する上での意識変革の難しさに直面した年でした。
海外の関連会社の役員・従業員からは、「もっとグローバル化した企業集団になりたい」、「グローバルなチームの一員として活躍したい」という力強い言葉がたくさん私に寄せられています。国籍やキャリアに関係なく、優秀な人材が重要な事業を牽引する経営をつくっていかなければいけませんし、それが実現できる企業集団だと信じています。
また、女性の社会進出や幹部登用は、各国の社会事情によって状況が異なるものの、海外ではとても進んでいる拠点が少なくありません。身近では、2代にわたる女性社長によって再建を進めている米国ゼロックスの例もあります。
そのなかにあって、日本の拠点は、女性管理職の比率も依然として低く、さらなる改善が必要であると痛感しています。私は、「組織・人材の多様性を追求することが企業の長期的な成功につながる」というダイバシティ・マネジメントの考え方は正しいと評価しています。当社に置き換えれば、これまでの経営システムを基盤としながら、半数に近づいている日本人以外の従業員や女性の意見をどのように組み入れるか、その仕組みの整備に本気で着手することが2009年度以降の課題の一つと認識しています。多様な人材が力を発揮するためには、フレキシブルな働き方の仕組みを充実させて、キャリア形成やワーク・ライフ・バランスを促進することも、その施策の一つです。
私は、経営革新活動を通じて、会社の総力で「営業」を進めることのできる体制を構築したいと考えています。2009年度以降も60社を超える関連会社や販売会社を含む事業体制の再編を推し進めます。しかし、現状を変革することについて総論賛成、各論反対の意見が出てくることは避けられません。そこで、会社が置かれている状況や経営の方針について、すべての役員や従業員とのコミュニケーションを図ることが重要と考えています。経営革新の意義を繰り返し説明し、新しい事業環境への柔軟性と主体的な適応をコミットしてもらうことが大切ですし、それが会社の総力、ひいてはお客様の満足につながると信じています。
いろいろな働き方の選択や登用の道を増やして組織・人材の多様化を進める一方、お客様や社会からダントツのご支持を得る仕事の在り方を自由闊達に議論していきます。
今や、環境問題を考慮しない経営は、成り立ちません。経済産業省主催の平成20年度省エネ大賞におきまして、当社のカラー複合機およびカラープリンターが資源エネルギー庁長官賞を受賞しました。1999年の初受賞以来、10年連続受賞の栄誉に浴したことは、当社の研究・開発生産の技術陣による高い目標設定と地道なチームワークが評価されたものとうれしく思っています。
当社は、2012年に創立50周年を迎えるにあたって環境全般にかかわる長期計画目標を検討しています。そのなかで、気候変動への対応を優先事項ととらえ、2020年時点でのCO2削減目標を「2005年度比で30%削減達成」と定めて2008年度に公表しました。
このなかには、2020年までにオフィスでの働き方に変革をもたらし、お客様先において700万トンのCO2削減に貢献する計画も盛り込みました。それと申しますのも、日本の大都市に拠点をおく企業のように、1時間かけてオフィスに通勤し、いくつもお客様先を移動したあと、オフィスに戻って会議や事務処理に追われるという仕事の進め方が、環境や人間にとって本当に持続可能かどうか、私は常々疑問に感じるからです。日本やアジア諸国では都市部に人口や企業が集中しますが、米国のような広大な国では、営業は自宅・オフィス・お客様先の拠点間で効率よく仕事ができる働き方や社会のインフラストラクチャーが整っています。
日本やアジア・オセアニアの諸国がバランスよく成長するためには、政府・民間企業・研究機関が共同して、そうした働き方やインフラストラクチャーの整備に取り組む必要があるのではないかと思います。従いまして、当社が実現すべき環境への貢献は、商品に起因するC02排出の削減だけでなく、得意とするドキュメント・マネジメントやコミュニケーションの革新によって通勤・移動を伴わない新しい働き方や、お客様が意識せずにサービスを享受できる状況を社会に生み出すことにあると考えています。2008年に東京で開催されたエコプロダクツ展では、「サステナブル・ワークウェイ」と称して、こうした環境の実現を支える技術や商品を紹介し、その必要性を社会に訴えました。
新しい働き方の創造は、環境負荷の軽減だけでなく、ワーク・ライフ・バランスの充実にもつながります。特に少子高齢化社会に向かう日本の社会では、これは国家的な対応課題であると思います。この「新しい働き方の創造」について、当社の事業ドメインで貢献できるテーマは数多くありますので、まずは当社自身で仕事のプロセスを変革して社会に提案していきたいと考えています。その実現には相当な努力とエネルギーを必要としますが、社会に対する貢献は計り知れませんので、最優先のテーマとして推進していきます。
当社の原材料・資材調達の一次取引先企業に対しては、2007年からCSR調達を本格的に導入し、これを広い意味での品質管理の一つと位置付け、現在も鋭意展開に努めています。対応すべき課題はたくさんありますが、幸いにも取引先企業からは「自社の業務改善につながった」という好意的な反響など、ご理解とご協力をいただくことができ、大変感謝しています。
今後の課題は、当社が求める水準を一次取引先企業にさらに深く理解していただいて相互の信頼とチームワークを強化すること、物流など資材以外の分野にも広げること、ならびに二次・三次の取引先企業への展開を推し進めることにあります。
CSR調達は当初、グローバル企業である得意先からの取引条件、つまり「対応せざるを得ない間接業務」との誤解の下に国際的に広がりました。しかし、その内容が理解され、実践に移されるなかで、「基準にかなったつくり方をすることがお客様の求める品質である」、「それを極めることが企業の競争優位や持続可能にもつながる」という本質が企業の経営者にも広く浸透してきたように思います。
私は商品の開発・生産に長年従事した経験から、CSR調達で要求していることは、良い商品を市場に送り出す上で当然の責務だと感じています。モノづくりや営業のプロセスで当然のこととして行なわれるようになり、CSR調達と言わなくても自然にできている状況をつくることが、社会に対する当社の責任であると考えています。
当社と関連会社の社会貢献活動は、心ある従業員が地域で行なうボランティア活動を会社が支援することと、当社にふさわしい活動にリソースを集中させてグループ全体で進めることを二本の柱に進めています。
従業員のボランティア活動を会社が応援する仕組みとして1991年に誕生した「端数倶楽部」は、当社の社会貢献活動のユニークさを象徴する仕組みとして、各方面から高い評価をいただいています。特に自然環境・生態系の保全や恵まれない子供たちの支援において熱心な活動が展開され、従業員の人間性の成長にも役立っています。当社の企業集団以外の会社での導入をお手伝いした事例もかなりの件数にのぼります。
2008年度は、弱視の児童・生徒向けに拡大教科書を製作するボランティア団体にカラー複写機を無償で利用していただく当社・関連会社の社会貢献活動に対して、内閣府主催の平成20年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰で、最高賞である内閣総理大臣賞を受賞しました。日本全国の営業所や販売会社の地道なボランティア活動に光をあててくださったことに心から感謝します。
この拡大教科書製作の支援につきましては、別稿「弱視のお子様がしっかり勉強できる環境づくり」(本誌のp23-24)、「富士ゼロックスからの提言─拡大教科書のさらなる普及に向けて」を是非ご覧ください。
これからの社会に必要とされていることは何か、徹底的に議論し、本業を活かした望ましい社会貢献の在り方を会社の総力を結集して実現していきたいと考えています。
親会社である富士フイルムホールディングスの株主・投資家の期待に応えることは、当社と関連会社の経営にとって重要な課題の一つです。特に株主・投資家による情報開示やリスク管理の要請は年々高まっていますので、そうしたコーポレート・ガバナンスの社会的要請を正しく理解し、財務報告に係る内部統制やコンプライアンス・企業倫理をはじめ、健全性と効率性を高める経営に引き続き努める所存です。
また、コーポレート・ガバナンス以外の部分につきましても、当社の株主である富士フイルムホールディングスや米国ゼロックスのCSRの良いところを吸収し、当社の強みも活かしながら、相乗効果が生まれるように推進していきたいと考えています。
未曾有の不況の影響によって、富士ゼロックスの2008年度の業績は、連結売上が昨年度の9.6%減、連結経常利益が昨年度の53.3%減という結果に終わりました。ステークホルダーの皆様の期待に十分応えることができず申し訳なく感じています。
ここしばらくは悲観的な景気予測がささやかれることも多いかと思いますが、こうした時代こそ次なる飛躍に向けて足元を固める絶好のチャンスであると私は考えます。嵐が過ぎるのをじっと待つのではなく、基盤事業の立て直しを速やかにやり抜くとともに、ステークホルダーの皆様の声に学び、将来の飛躍に備えたいと考えています。
こうした認識のもと、2009年度の経営方針として、その重点方針を当社と関連会社に次の通り指示し、その実現を推し進めています。
第1には、現在進行中の経営革新活動の各種施策をさらにスピードをあげて完遂する、ということです。CSR側面におきましては、すべての組織の連携を強化して、CO2削減目標の実現を図りつつ、同時に仕事の効率化やコストの最小化を図っていきます。
第2には、すべての仕事をお客様の視点に合わせたやり方に軌道修正する、ということです。これは、お客様の視点で仕事の基本に立ち戻る「Go To Customers」が当社のCSRの原点である点を再度、すべての役員と従業員に徹底する狙いがあります。
第3には、お客様の信頼を厚くして、応援してくださるお客様の期待になんとしても応える、ということです。そのために、多様な組織・人材の活用を急ぎ、プロフェッショナルな人材を増やし、総合的な提案力や対応力を強化し、より社会性の豊かな組織を目指します。
上記の経営方針と併せて、CSR調達や社会貢献活動の本来の狙いに立ち戻ることも同時に進めていきます。
当社の経営を長年牽引してきた小林陽太郎氏(元会長)が、満75歳を節目に、2009年3月をもって当社の経営職を退きました。小林氏が実践してきた経営スタイルは、CSRに代表される社会への配慮の上に、従業員のやる気と能力が100%発揮されるよう経営トップが高い視点でかじ取りするところに真価があります。社会に開かれた「組織」と従業員の「個」を大切にして、自己規律と相互の信頼に根差した経営を堅持する姿勢は、現在でも連綿と受け継がれており、そこから生まれる自由闊達さが当社のエネルギーの源泉となっています。
その一方で、現在の収益基盤である複写機・複合機の事業は、30年後、50年後にはどのように形を変えているのか、そもそも複写機という商品が存在するのか、といった客観的な洞察も大切です。思い込みを捨てて長期ビジョンを構想する力がCSRを支えるのだと思います。こういう企業でありたいという明確なビジョンに対するシナリオとロードマップを描いて大胆に攻めていく姿勢が、当社と社会との相乗利益につながると私は信じています。
当社が国際社会においてしっかり役割と責任をはたす存在であり続けるため、私自身が強いリーダーシップを発揮し、責任を持って当社のかじ取りに邁進することをお約束します。
皆様からの忌憚のないご意見やご指摘をお待ちしています。
