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富士ゼロックスオーストラリアは過去30年間にわたり地域社会への貢献活動を続けてきた。今、オーストラリアでは、15歳の国民の約30%が本来あるべき識字レベルに達していないなど、深刻な教育問題に直面している。教育は子供たちが社会の一員として、将来生活していく上で、とても大きな影響力を持つ。富士ゼロックスオーストラリアは地元のNGOと協力し、2006年から子供たちの教育支援に乗り出した。従業員が地域の子供たちのメンターとなって読み書きを教えたり、職場で得た経験やスキルを活かして進路の相談に乗っている。地域社会の一員として、将来の社会を担う子供たちの成長を支える富士ゼロックスオーストラリアの活動を紹介する。
| 本来あるべき識字レベルに達していない15歳の国民の割合 (オーストラリア政府統計局2009年) |
30% |
|---|---|
| メンターを経験した富士ゼロックスオーストラリア従業員数(2010年度) | 188人 |
| 富士ゼロックスオーストラリア従業員メンター数の全従業員数に占める割合(2010年度) | 8% |
| 富士ゼロックスオーストラリア従業員メンターを受け入れた学校数(2010年度) | 27校 |
| ABCNのメンタープログラムに参加した生徒数(2010年度) | 307人 |
子供たちには自分の将来を一緒になって考えてくれるロールモデルが必要だ(GOALS)
オーストラリアの社会は「教育」の問題に直面している。政府統計局のデータ(2009年)によると、オーストラリアでは、15歳から19歳の中途退学者の25%以上が学校に通わないばかりか仕事にも従事しておらず、15歳の国民の約30%が本来あるべき識字レベルに達していない。
その背景の一つには、経済的な理由で子供の教育まで手が回らない家庭が増加し、子供たちのロールモデル(手本となる大人)が少なくなっていることが挙げられる。15歳までに中途退学する若者たちは、仕事の選択肢が少なく、仮に仕事に就けても待遇の面で不利な立場に置かれることが多い。
こうして社会から排除される人々はオーストラリア社会にとって多大な負担になっている。失業手当や税収減などの社会的コストは年間26億豪ドル(2,210億円相当)に上るとの試算もある。ビジネス面でも、基本的な識字スキルの不足は、生産性や労働力の質を低下させ、国際競争力を弱める。いずれにしても、オーストラリア社会が持続可能であるためには、民間セクターがスキルや知恵を結集して児童や青少年に教育を提供することが有力な解決手段となる。
オーストラリアの教育制度のなかで、生徒が学業につまずくリスクが最も高いのが小学生の6年間と9年生(日本の中学校3年生に相当)と言われている。その年代の子供たちが学校教育から離れず、社会から除外されないよう支援活動を続けるNGOがある。そのなかで最も積極的に活動しているのがオーストラリア・ビジネス・コミュニティー・ネットワーク(ABCN)だ。ABCNは、企業がより積極的に地域貢献できる枠組みの提供を目的として2004年に設立され、小学生に「読む」ことを教える「SPARK」や中学生の進路選択を支援する「GOALS」と呼ばれるプログラムを実施している。富士ゼロックスオーストラリアは2006年からABCNのプログラムに参加し、しかも当初から経営トップが積極的にかかわっていることもあって、今では参加企業29社のなかで最大のサポーターとなっている。
中学生のメンターとして、目標達成のためのアドバイスを行う(GOALS)
オーストラリアの教育制度において、9年生(15歳)はこれからの人生を決める重要な時期である。GOALSプログラムは、社会人がロールモデルとなり、この年齢層の生徒に特化した支援を行っている。「目標設定」、「コミュニケーション」、「職場への準備」などをテーマに、日常の環境から生徒を解放し、将来の可能性を気付かせることが目的だ。「敢えて夢を見ること」や、「目標に向かって自分を信じて努力すること」の大切さを気付かせるのがこのプログラムの特長である。
メンターにとって最も重要なことは、生徒へのコミットメントである。メンターが欠席しがちになると、生徒はやる気を失い、プログラムをやめてしまうこともある。メンター自身にも相当な覚悟がなければ務まらない。
ある一日、シドニーの富士ゼロックスオーストラリアのオフィスにトーマスレデル中学校から約20名の生徒が集まった。少人数のグループに分かれ、「目標の立て方」をテーマにセッションが始まる。まず目標の達成に向けて、「成功とは何か」をグループで議論し、次に「どうすれば成功することができるか」を話し合う。最後に、自分自身の目標を考え、その目標の達成に向けて、やるべきことをメンターからアドバイスを受けながらノートに書き出していく。こうして生徒たちは、漠然と夢見るだけでなく、計画し行動に移すスキルを学ぶ。
メンターの一人である富士ゼロックスオーストラリア従業員ウィリー・ピカディは、入社面接を受けたとき、とても緊張して、面接が終わって握手をしたときにも“Hello”と言ってしまって恥ずかしかった経験を生徒に話した。そして、「誰にでも失敗はある。大事なのは恥ずかしい気持ちをどう乗り越えるかを学ぶことなんだ」と父親のように生徒に語りかける。
GOALSプログラムに参加した生徒の多くが、コミュニケーション能力を向上させ、学校での学習意欲も改善するという。参加した生徒の一人があふれる笑顔で語った。「メンターは私に人生の目標を聞いてくれました。私の人生について真剣に考えてくれた大人なんてこれまでいなかったわ。私は将来、ファッションのビジネスをやりたいの。だから勉強して、大学に進みたいわ」。

子供たちは、小学生の段階で文字が読めないと、学ぶことに対して消極的になるだけでなく、自分に自信が持てなくなってしまうという。SPARKプログラムは、まず「読める」、そして次に「理解できる」ための支援をする。子供たちは、富士ゼロックスオーストラリア従業員のメンターが創りだす「信頼の繭」のなかで安心して学び、自分に対する自信を取り戻していく。
従業員に社会貢献活動を奨励する企業は増えており、一定期間の有給休暇を与えるケースも出てきている。これに対して富士ゼロックスオーストラリアでは、従業員によるメンター活動を就業時間中の「正規の業務」と位置付け、経営トップが積極的に奨励している。ABCNとのパートナーシップは、富士ゼロックスオーストラリアのビジネスにとってどのようなメリットがあるのだろうか。富士ゼロックスオーストラリアの人事部長べス・ウインチェスターは、メンターの経験で培われる傾聴の大切さや問題対応力などの知見が、マネジメントに必要なスキルと重なることから、従業員研修の場としても優れていると指摘する。また、自分の経験や意見を生徒が熱心に聞いてくれることや、子供たちの将来を支えていることについて、参加従業員は言葉で言い表せない誇りと喜びを感じており、その自信が従業員の姿勢を前向きに変え、仕事にも良い影響が表れているという。
富士ゼロックスオーストラリアでは、仕事の達成目標は従業員の自己管理に任されている。オフィスに何時間座っているかは重要ではないのだ。
持続可能な社会の実現に向けて、一人ひとりを孤立させない社会を目指すソーシャルインクルージョン(包み込む社会)の考え方が富士ゼロックスオーストラリアで実践されている。富士ゼロックスオーストラリアの取り組みは同様の社会問題を抱える地域の他の関連会社にも大いに参考になり、勇気付けられる。一人ひとりにできることには限りがあるが、地域社会での人々の「つながり」を再構築し、社会に常に必要とされる会社であり続けたい。彼らの活動は今日も続いている。

富士ゼロックスオーストラリア
社長
ニック・クーゲンシラン
富士ゼロックスオーストラリアは、ABCNプログラムへの参加企業のなかで最も小さい会社ですが、どこよりも情熱を持って活動していることで知られています。実際、仕事が最も忙しい従業員がプログラムに参加することが多く、彼らの満ちあふれるエネルギーがお客様に伝わるのでしょうか、仕事の成果も素晴らしいと認識しています。「与えることでより多くを得る」というのは本当だと思います。

富士ゼロックスオーストラリア
Global Services Client Operations Manager
ダイアナ・ブライン
私は月に数時間、ABCNの活動に参加しています。私にとって貴重な経験ですし、生徒たちも私のことを高く評価してくれています。このプログラムは、何が起こるか分からないところがあるので、几帳面な私にとって格好のトレーニングの場にもなっています。このような経験を提供してくれる富士ゼロックスを誇りに思っています。

ABCN
National Program Manager
ジャッキー・ジョーンズ氏
すべての子供に可能性があります。ABCNでの私たちの仕事は、経済・生活環境から生まれる「私にはできない」という子供たちの思い込みを取り除くこと。富士ゼロックスのメンターは、親しみやすく熱意があるので見ていて嬉しくなります。特に10代の子供たちは技術に興味があり、学校でもコピー機を見慣れているので、富士ゼロックスのメンターに会えるのを楽しみにしています。