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第三者意見

藤井敏彦氏

独立行政法人経済産業研究所コンサルティングフェロー
埼玉大学大学院経済科学研究科客員教授

「CSRは当社や社会の将来を左右する価値創造である」「覚悟をもってCSR経営に臨みたい」との山本社長のコミットメントは、それに続く「サステナビリティレポート2011」の内容によって裏付けられている。本報告書が伝える富士ゼロックスのCSRへの取り組みは、経営への高い統合の度合いと透明性の高さを含む多くの点において、日本に本社を置くグローバル企業のなかで間違いなく第一級のものである。ただし、CSRの取り組みで高い評価を得る欧米企業のそれと比較すれば、改善すべき点は必ずしも少なくない。富士ゼロックスには日本国内のCSRのリーディングカンパニーの地位に甘んずることなく世界中のステークホルダーの期待に応えることを目標とし、さらなる高みを目指すことを期待したい。以下、項目別に意見を述べる。

1)レポーティング

ウェブを含めると広い範囲で、かつ多くの項目が定量的に報告されている。また、多くの項目について、国内・海外の関連会社も報告範囲に含まれている。「国際的な報告基準への準拠を高める」とのコミュニケーション方針が実現されていることを示している。来年度以降、社会・環境上の問題の進化と足並みをそろえて、レポーティング内容も不断に見直されていくと確信している。そのような観点から、契約形態が異なる従業員間の処遇の平等に関する事項は、モニタリングの対象に追加すべきものの一つであると考える。

2)バリューチェーン

資材調達にとどまらないバリューチェーン全体について、持続可能性という視点で見つめ直す方針は適切なものであり、「知の創造と活用をすすめる」という社のミッションを前進させることにも貢献するだろう。今後の方向性としてCSR調達についての情報開示につき改善を求めたい。富士ゼロックスは日本におけるCSR調達の国際展開のパイオニアである。先年もシンセン、上海で取引先を対象としたセミナーを開かれており、かかる取り組みの蓄積に鑑みれば、開示情報の拡大を考える時期にきていると思われる。セルフチェックリストの全体的な遵守状況に加えて人権や環境など具体的な項目別に、どのような問題が発見され、いかなる対処がなされたのかについて公表されることを望みたい。問題点を開示することは、富士ゼロックスのCSR活動の透明性の向上をもたらすのみならず、報告書の全般的な信頼性を高めるものである。

3)従業員

ウェブで公開されている「従業員とのかかわり」は、私が本報告書のなかで最も感銘を受けた部分の一つである。従業員は極めて重要なステークホルダーであり、グローバルに統一された公正な人事方針はCSRの基幹的な要素だという、社としての確信を読み取ることができる。「多様な人材がグローバルに活躍できる」環境をつくることは、人権上の要請にも適うものであり、一層の注力を楽しみにしている。その際、既述したとおり派遣従業員を含む非正規雇用の従業員の処遇については特段の配意が必要な項目の一つである。

4)地球環境

地球環境に関して、生物多様性の保全は、一般に従来必ずしも十分な注意が払われてこなかった問題であり、経営のなかに問題解決策を統合していくかについて真剣な考慮が求められる。そのなかで富士ゼロックスが、中国のすべての生産拠点において生物多様性保全のための土地利用状況調査を行うことで国際的な検討に着手したことは評価できる。来年度の報告書には調査結果に基づく具体的な対応が記載されることを期待したい。また、富士ゼロックスは商品の廃棄ゼロの取り組みにおいて世界的なリーダー企業であるが、部品リユースの点で2010年度の実績が目標を下まわったことについては、十分な検証と対応策の立案が必要であると思われる。技術革新によって機械本体の設計が大きく変わったことが理由とされているが、技術革新と設計の変化は一時的なものとは考えにくい。技術開発と設計のプロセスそのものに、部品再利用促進が勘案項目として織り込まれなければならない。そうでなければ部品リユースは結果であって、目標ではなくなることを指摘したい。

5)グローバル展開

海外営業本部による「アジア・パシフィック・サステナビリティ・プロジェクト」と富士ゼロックスマレーシアの取り組みの紹介は大変読み応えがある。富士ゼロックスのバリューチェーン全体を対象としたCSRを顧客と共有すること、そしてさらに重要なこととして、「サステナビリティとは何か」を従業員一人ひとりが考える機会となったことはCSRが富士ゼロックスの組織、事業の全体に浸透していることの証左であろう。本プロジェクトのその後の成長とそのビジネス上のインパクトについての続報を期待したい。

6)東日本大震災への対応

東日本大震災は、社会のなかで企業が担う役割について再考を求めるものである。CSRとは、本質的に社会の将来について起こりえることを考えるという所作抜きに取り組むことはできない。「少子高齢化がさらに進んだら」「生物多様性がさらに減少したら」など、CSRに関する問題はいずれも社会の将来をどう想定し、その想定から今なすべき行動を導出するかという問題である。今回の東日本大震災は、あらためて「社会が陥る可能性のある状況」を企業が深く考え抜かなければならないことを我々に教えたと言える。本報告書の「東日本大震災への対応から学んだこと」は富士ゼロックスがあらためてそのような熟考を正しい形で学んでいることを伝えるものである。

最後に、富士ゼロックスの社会の将来に関する一段と深い熟考は、災害への対応にとどまらず、サステナビリティに関するあらゆる事柄、世界のあらゆる社会に関する事柄に及ぶものとなることを、そして富士ゼロックスのCSRのさらなる前進に貢献するものであることを強く願って終わりたい。

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