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ナレッジ/知識経営

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K(Knowledge)-Direct Vol.7 「サラサラの組織」へのノウハウ
― あなたの会社や組織はドロドロになっていないだろうか? ―

2009年10月

構成・文:富士ゼロックスKDI(Knowledge Dynamics Initiative)

今回のトラック1「オピニオン」では、長年多くの企業とコミュニティを築いてきたKDIならではの視点で、“社員の意識改革”に問題を投げかけます。
また、今回でトラック2「サラサラの組織」が最終回となります。
この連載で組織をサラサラにするヒントを掴んでいただけたでしょうか?
皆様の職場がサラサラになった時には、ぜひ、KDIにお知らせくださいね。
『K-Direct』は来月以降も続きますので、お楽しみに!

index
1 第1トラック
  オピニオン(7):「社員の意識変革」
2 第2トラック
  サラサラの組織:21世紀の組織論(7)最終回:サラサラの組織を作ろう!
3 第3トラック
  今日からできるKDI流創造的ワークスタイル(7)「プロトタイピング」
富士ゼロックスKDIに関する著書

1

第1トラック

<20世紀型組織で当然のように使われていたキーワードに対して、問題提起をします>

オピニオン(7):「社員の意識変革」

「イノベーションを加速させよ」「モノ売りからソリューション提供への変革を」「一層の低コスト体質の実現を」

変化の焦点はそれぞれですが、リーマン・ショック後の日本企業は、変革の必要性をますます強く訴えているようです。その際によく聞かれるのは、「企業を変えるには、まず社員の意識変革から」という言葉です。
たしかに、(1)社員の意識を変える→(2)社員の行動が変わる→(3)会社の風土が変わる→(4)成果が上がる、という順序は、一見筋が通っているように見えます。

しかし、長年、組織変革のお手伝いと成功企業のベンチマーキングをしてきたKDIの経験則に照らし合わせると、「社員の意識変革」にはじまる企業変革の成功例は、実はとても少ないのです。このコーナーでは、当たり前のように言われる「まずは社員の意識変革から」のどこが難しいのか、また、それに代わるどのようなアプローチがあるのかについて、考えていきたいと思います。

■「一過性の出来事」の変革イベントは、なかなか機能しない

はじめに、「社員の意識変革」アプローチが、どのように始まるかを考えてみましょう。たいていの場合、まず、経営層と経営スタッフが変革コンセプトと行程表を作成し、次に社員向けの「変革イベント」を実施するのではないでしょうか。「全マネジャーへの社長訓示」や「変革リーダー研修」などを通じて、「イノベーションマインド」や「コスト削減のさらなる徹底」などへの社員の変革マインドを醸成するアプローチです。

こうした活動が、無意味なわけではありません。しかし、ほとんどの場合、自分の机に戻った瞬間に、「いい話だったなー。さあ、仕事に戻ろう」とリセットされてしまうのではないでしょうか。読者の皆さんは、この類の変革イベントに参加して、自らの意識が変化したという経験がありますか?
「意識変革アプローチ」の難しさは、変革が社員にとって「一過性の出来事」にしかならず、行動の変化を駆動しない点にあるのです。

■馬を水飲み場に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない

社員のことを馬に喩えたら、怒られますね。しかし、社員の立場から、あえてこの言葉を使ってみたいと思います。この言葉は、どんなに環境を整えても、その気のない人の行動を喚起できないという意味です。組織変革も一緒ではないでしょうか。自ら変わろうという気になっていない人を、どんなに論理的に説得しても、意識に働きかけても、その後の行動の変化を引き出すのは至難の業なのです。

これについては、プロフェッショナル・サービス・ファーム経営の大家、デービッド・メイスターも、「訓練や訓示は、長期的な変化をめざしたい社員自らが熱心に参加する場合はとても機能するが、変化の最初のステップとしてはほとんど役に立たない」と指摘しています。*1

これは、問題が「変わらない社員」にあるのではなく、「人間の行動心理に適わない意識変革アプローチ」にあるということを示唆しているのではないでしょうか。

■変革メッセージと日頃のメッセージに一貫性がない

私たちの社員としての日常行動に影響を与える外的な要素には、どんなものがあるでしょうか?業務内容やプロセス、上司の指示、評価基準や昇進、オフィスのレイアウトにITなどの業務ツール。様々な仕組みが、知らず知らずのうちに、私たちの日々の行動に大きな影響を与えています。これらをまとめて、「社員の行動環境」と呼ぶことにしましょう。

実は、これら行動環境の一つひとつの要素が、社員に強いメッセージを発しているのです。そして残念なことに、そのメッセージは、しばしば「変革の方向性」と逆向き(矛盾している)になっているのです。

たとえば、「モノ売りからソリューション提供へ」と変革の旗を振っているのに、営業マンの評価とインセンティブは、相変わらずモノを売ると達成される。

たとえば、「コラボレーションを加速する」と変革の旗を振っているのに、研究者は研究テーマごとに閉じたレイアウトで働き、担当テーマの進捗で評価される。

たとえば、「現場を支える本社への変革」を謳いながら、本社役員の意向で業務の方向がコロコロ変わり、現場の声は本社スタッフの評価に一切反映されない。

こんな環境のなかで、どんなに声高に変革を叫んでも、一過性のメッセージの大きさと、行動環境から毎日受けるメッセージの大きさを比較すれば、変化が起きない方がむしろ自然なのです。「ソリューション提供なんて掛け声だけ。会社だって俺たちに箱売りを望んでいるのさ」というのが、行動環境から社員の受け取るメッセージなのです。

■行動してみると、結果として意識が変わる

では、意識変革に代わる有力なアプローチは何でしょうか。私たちは、「まず行動を変えてみる。そうすると、いろいろなことに気づき、結果として意識が変わる」という、逆のアプローチを提唱します。「意識が変わっていないのに、行動から変えられるわけがないじゃないか」という反論があるかもしれません。
しかし、以下の三つの要素を上手にデザインした「行動変革アプローチ」は、非常にパワフルで、かつ持続性があります。その三要素を見ていきましょう。

■異質から学ぶ「気づき」が、行動変革のきっかけを与える

まず、行動変化を促す「気づき場」の演出が、経営トップ/変革リーダーの重要な仕事だと私たちは考えます。むりやり「水を飲ませる」のでなく「のどが渇いている」ことに気づいてもらう方が、人間の行動心理にはるかに適っているからです。

では、「気づきの場」は、どのように演出するのでしょうか。様々な方法がありますが、私たちは「異質から学ぶ」ことが非常に効果的と考えます。

問題とは、ありたい姿と現実のギャップであり、問題意識は、そのギャップに対する認識の深さです。「あなたには問題がある」とギャップを指摘するのが意識変革アプローチなら、異質から学ぶことで「俺には課題があるな」と本人に気づいてもらい、自ら行動を変えるきっかけとパワーを引き出すのが行動変革アプローチです。

では、なぜ、異質に学ぶのでしょうか。それは、自らと大きく異なるものが、自らを映し出す鏡になってくれるからです。たとえば、異業種の会社の変革リーダーに、変革の取り組みを学びに行く。自社の業界の未来について、業界外の人々に大いに語ってもらう。こうした「異質からの学び」が、「ここがヘンだよ自社と自分」に気づかせてくれるのです。そして、自ら気づいたことによる深い問題認識が、行動変革のパワーとなるのです。

■燃えるものから燃やす

二つ目は、「変革の初っぱなで、全員を変えようとしない」ということです。「全員が変わらなければ、会社が変わったことにならないじゃないか」という反論があるかもしれません。しかし、組織を変革することは、たいへんな労力と精神力を必要とします。「とにかく、燃えそうなものから燃やす。組織変革の初期段階で、燃えにくいものを燃やす余裕はない」というのが、変革リーダーたちの共通見解です。

馬の比喩でいえば、のどが渇いている(変化を渇望している)馬を選んで、水飲み場に連れていく(活動する機会をつくる)ということです。これは、企業変革を導くうえで、大切なポイントだと思います。最初から全員を変えようとするよりも、熱いメンバーを集めて小さな成功事例をつくり、それを拡大していく方が、はるかに成功の確率が高いのです。なぜなら、組織を変えたいと本気で思っている人は、機会が与えられれば、熱中して取り組むからです。この熱意が、最初の成功の大きなカギとなります。
そして、その過程と成果を見た次の人は、最初よりも安心して、変革に取り組めます。変革の火の手は、熱い人々の小さな成功体験を通じて、組織内に広がっていくのです。

■すべての仕組みに一貫したメッセージを込める

最後は、先ほど指摘したメッセージの一貫性です。つまり、社員の行動環境を、一貫したメッセージを発するようにデザインし直すのです。とりわけ、大きなメッセージを発しているものを変化させることが大切です。さきほどの営業マンの例で言えば、「インセンティブと評価をソリューション・ベースに変える」ことになるでしょう。

知識経営研究の大家であるローレンス・プルサックによると、「あらゆる組織で、もっとも強いメッセージを発するのは、『誰を昇進させるか』である。どんなに変革を訴えても、従来通りの仕事をする人が出世すれば、『彼の行動を見習え』となってしまう」と述べています。*2

社員の行動環境を変化させるには、経営と変革事務局にも相当な覚悟が必要です。それゆえに、その変化は、「経営の変革への本気度」を社員に伝える、強力なメディアともなるのです。

サラサラと知が流れる組織づくりは、労力と何よりも情熱を必要とする長い道のりです。そして、そのカギは、社員一人ひとりのなかに眠っている「潜在的な知的活力」をいかに引き出すかにかかっています。そして、知的活力は、自らがやる気になった時にしか、高まるものではありません。だからこそ、「社員の意識を変えさせる」のではなく、「気づきとやる気を引き出し、社員が自ら行動を変えることを支援する」アプローチが、求められているのではないでしょうか。

(参考文献)

*1デービッド メイスター ,脱「でぶスモーカー」の仕事術, 日本経済新聞出版社, 2009
*2KDI講演(2009年開催)にて


荻原
担当:荻原
2

第2トラック

<「サラサラの組織」のポイントをお伝えします>

サラサラの組織:21世紀の組織論(7)最終回:サラサラの組織を作ろう!

第2トラック「サラサラの組織」では、昨年12月にKDIが出版した同名の書籍から抜粋したポイントをご紹介してきました。なかでも「サラサラ度改善の処方箋」を、7月から3回に分けてご紹介しましたが、皆さんはどれか取り組んでみましたか?

■変革の種を持っているみなさんへ

会社の変革は、経営トップのみならず、組織に属する誰もがしかけることができます。会社を変えるきっかけは、誰のところにも必ず訪れます。もちろん、あなたのところにも。そのときに、あなたは準備ができているでしょうか。自分の枠を超えて、勇気と気概をもって、一歩を踏み出すことができるでしょうか。
個人の意志や思いが尊重され、チームや部門を超えて協力しあいながら、新たな価値を作り出していく……。このように、「知」がサラサラと流れる組織が日本中にたくさん生まれることを目指して、私たちKDIは活動しています。立ち上げから約10年、「知識創造型組織の実現」に関心を持つ、多様な業種の経営トップや変革活動を実践するリーダーの皆様とともに、多くのプロジェクトを通して、各社の「サラサラ」を追求してきました。
KDIのクライアントになってくださった約100社の企業の方々とは、知識創造経営をめざすK-コミュニティの仲間として、未来永劫という心づもりでおつきあいをさせていただいています。コミュニティでは、定期的に魅力的なスピーカーをお招きして、対話を楽しみ、新しい考え方をわかちあっています。クライアント同士が変革活動の取り組みを学びあう自主的な活動も行なわれています。
KDI創設10周年の記念に、コミュニティ企業の実践の成果をまとめた書籍「サラサラの組織」を出版しました。主役は変革をしかけ、牽引してきたK-コミュニティの実践リーダーたちです。彼らは自ら問題を提起し、仲間やスポンサーを集め、会社の改革プロジェクトを立ち上げた、勇気を出して一歩を踏み出した方たちです。この「ナレッジリーダー」の思いと志を、私たちKDIがまだ会えていない多くのナレッジリーダー予備軍に伝え、変革への思いに火を点けたいと願いました。この連載を読み続けてくださったみなさんは、変革の種を持つ、ナレッジリーダー予備軍のはずです。ぜひ、最初の一歩を踏み出してみませんか。

■七つの知恵を粘り強く進めよう

七つの知恵には、10年間のコンサルティング活動で獲得してきたノウハウをつぎ込みました。ひとつずつ試していけば、誰でも実践できる方法論になっています。新入社員でも、中堅社員でも、マネジャーでも、経営者の方でも。ただし、最も重要なことは、自分の力を発揮するというよりも、心の壁を作らずに、他人の知識や力を引き出していくように働きかけることです。「私が一歩を踏み出します」と宣言して、チームの壁、部門の壁、企業の壁を乗り越えて、「絶対にやるべき」と心で感じたことをやり抜いてください。
誰もが、よりよい仕事をしたいと思っています。人の役に立つ仕事をしたい、誰かにありがとうと言われたい、家族に誇れる仕事をしたいと思っているに違いありません。それを信じて、意志をもって経営トップに提案してみましょう。あなたの意志を周りに話して回ってください。必ず、私もそう思うよ、という人が増えて、七つの知恵の連鎖を感じられるときがきます。そんな皆さんの動きが、組織の凝り固まったドロドロ感を洗い流し、サラサラの組織を作り出すのです。

■求む!サラサラリーダー

4月から7回にわたって連載してきました第2トラック「サラサラの組織」は、今月で最終回となります。連載は今月までですが、皆さんが実践したサラサラ成功事例ができましたら、ぜひKDIまでお知らせください。次のサラサラリーダーとして取材させていただくのは、あなたかもしれません。
ボンボヤージュ!!

齊藤
担当:齊藤

─ 次回予告 ─
来月からは、新連載「『事務局力』実践講座――裏方が会社を動かす!」が始まります。 どうぞご期待ください。

3

第3トラック

<K-Crewの創造的ワークスタイルを、メンバー一人ひとりが紹介します>

今日からできるKDI流創造的ワークスタイル(7)「プロトタイピング」

今月は、堀内(Happiness Alchemist)がKDI流のプロトタイピングを紹介させていただきます。プロトタイピングとは、『アイデアを簡易的かつスピーディに、擬似体験可能なカタチにして見せる』ことを言います。

KDIでは、ブレインストーミングで思いつく限りのアイデアを出した後、自然な流れでプロトタイピングが始まります。多くのクルー(メンバー)が集まり、ファシリテーター役を中心にした”にぎわい”ある場で、実現すべき概念やコンセプトを大切にしながら、ひとつの実現可能なカタチへとアイデアを組み立てていきます。過去の経験を語り合ったり、顧客の立場になって考えたり、本質的な意味を問いなおしたり、それら対話のなかで設計デザインを具体化させていきます。たとえば、主人公(ペルソナ)を想定したシナリオ立案、ワークショップ進行のシミュレーション、顧客を飽きさせない場の演出など、クルーひとり一人が満足するまで、延々とプロトタイプは続けられます。たとえ納期間際で徹夜することになっても、妥協することはありません。

多摩大学教授の紺野登氏は、その著書『知識デザイン企業』の中で「対象を物(モノ)として整えるだけでなく、顧客の日常的な“経験”として一体化させることにより、経験価値を提供する新たなイノベーションが生み出される」と強く主張されています。その紺野氏の言葉を借りれば、KDIのプロトタイピングは顧客の経験価値づくりの実践である、といえます。ひとつの共有された全体像のなかで、各クルーの持つ知識や経験を総動員させることにより、アイデアの断片的なつなぎ合わせではない知識の綜合(Synthesis)が生み出され、顧客が真に共感する経験価値が実現されていくのです。

このプロトタイピングですが、KDIのクルーだけではカバーしきれない知識・スキル・経験が必要になることがあります。その場合には、ヒアリングで暗黙知を収集したり、リサーチ会社へWEB調査を依頼したり、社内外の有識者や技術者に協力を依頼する等、考えうる様々な対策を臨機応変に使い分けます。さらに不足がある場合には、現場に赴き、直に経験や観察を行なわせていただいたり、あるいはベンチマーキング訪問でノウハウを伝授いただく等、外部リソースの活用を積極的に行ないます。これら活動成果がインプットされることにより、KDIはいつも外部刺激による変化に富んでいて、既成概念にとらわれない創造的なプロトタイピングを保てているのではないか、と感じます。また、これら活動プロセスは、KDIクルーにとって社会的関係性を育くむ良い成長機会にもなっているようです。

最後に、経験デザインの第一人者であるIDEOのトム・ケリーは、その著書『The Art of Innovation』のなかで、「ほぼすべての物事についてプロトタイプをつくることができる」と述べています。どんな物事でも構いません、まずは自分自身が楽しめる領域からプロトタイピングを楽しんでみてはいかがでしょうか。ユーザや社会の経験に沿って豊かな質をうみだしていこうと努力すれば、自ずと良いプロトタイプができるはずです。

Happiness Alchemist 堀内
担当:Happiness Alchemist 堀内

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