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第1トラック |
<20世紀型組織で当然のように使われていたキーワードに対して、問題提起をします>
オピニオン(12):「未来創造の場 “Future Center”(2)」
K-Directもいよいよ最終回となりました。第1トラックでは前号に引き続き、「Future Center」(以下FC)についてご紹介したいと思います。FCとは、組織横断の課題、業界を超えたイノベーションなどの複雑で困難な課題に対し、多様な専門性を持つ人的ネットワークと対話の潜在力を最大限に引き出し、未来志向でイノベーションを起こす、「開かれた知識創造の場」です。日本の知識創造理論が北欧に渡り、今では欧州を中心とした政府機関や企業に広がりつつあります。
KDIでは、2010年1月末に英国とオランダにある5カ所のFCに訪問してきました。そのときの最新情報をレポートし、FCの成功要因を探ってみたいと思います。
ロイヤルメール・イノベーション・ラボ(Royal Mail Innovation Lab:英国)窓口会社
郵便会社、小包会社の三つを中心に郵便事業を展開している、ロイヤルメール・グループのFCであり、最初期のFCの一つです。情報技術を中心としたショーケースとして1998年にスタートし、徐々に社内コンサルティング部門として、ビジネスや人に関する課題に対し、ワークショップで解決していくための場へと移行していきました。ファシリテーターはワークショップの実施・支援だけでなく、依頼主との事前の対話で問題を正しく認識するといった、企画段階から重要な役割を担っています。約10年にわたって同施設は高い実績を上げてきました。

写真:メイク・イット・リアル
(工房、プロトタイピングを行なう場)
イノベーションワークス(InnovationWorks:英国)
レディング大学のFCです。イギリスの大学が目指す「大学が持つ知的資本のビジネスへの転用」を促進することを目的としています。イノベーションワークスで取り扱う課題は、大学での研究テーマの発見、組織変革、新製品開発など多岐にわたり、とくに制限は設けられていません。大学内もしくは、外部(民間企業など)から持ち込まれた課題に対し、ワークショップで支援していくのが同施設の基本的な型です。ワークショップを企画し、実行支援するのが「リーダーシップ・ファシリテーター」という役割です。対話の支援・促進といったファシリテーション・スキルのみならず、経営層をリードして結果を導くスキルを有することが求められています。

写真:ウォータリング・ホール
(すべての壁に書き込むことができます)
フューチャーフォーカス(Futurefocus:英国)
競争力あるダイナミックなイギリス経済の実現に向けた、イノベーションおよび企業活動の促進、環境整備を推進する、ビジネス・イノベーション・スキル省(以下BIS省)のFCです。政府機関が未来の世の中の変化と、それに対する戦略を考える場として設立されました。扱うテーマは未来シナリオを考えることが中心で、選定基準はBIS省へのインパクトがあるかどうかです。扱うテーマの2/3が省内、1/3は省外(他省庁、地方自治体、NPO、民間企業など)から持ち込まれます。テーマについての対話の場を企画するのは「場のプロデューサー」の役割となります。依頼主との事前の対話で問題を正しく定義し、場に応じて参加者、ファシリテーターを絶妙に割り当てています。

写真:クリエイティブ・ラボ
(アイデア出しを促進する部屋。参加者が匿名でアイデアを出し合う、
ブレインストーミング用のソフトウエアが用意されています)
ザ・シップヤード(The Shipyard:オランダ)
オランダ国税関税執行局のFCです。職員約3万人の知的資本を最大限に活かし、彼らの創造性を高め、変化する社会における当局の責任遂行を支援することを目的としています。
邪魔する権利(License to Disturb)をコンセプトとして掲げ、3万人の大組織の帆船に対する、スピードボート(自立した小規模運営)の役割を担っています。扱うテーマは、国税庁にとって有益なものであるかどうかが判断基準であり、基本的には局内からのみ利用できます。「空間」に対してのこだわりから、目的に応じて作り込まれた様々な空間(例:ブレインストーミング専用の部屋、イメージを具体化するための工房)を用意しています。

写真:ザ・ワークショップ
(工房。アイデアをイメージ化、具体化する部屋)
ダイアログ・ハウス(Dialogues House:オランダ)
欧州有数の規模の銀行グループである、ABNアムロ銀行のFCです。対話の持つ力を空間で最大限に引き出し、起業家精神/イノベーションに力を与える場となるよう運営されています。同行の保有する「顧客ネットワーク」「信頼感」「与信機能」といった知的資本を最大限に活用し、新事業のインキュベーション(例:美術品取引、独立事業主支援)、オープンな対話イベントなどを企画・実施することで、社会のためのイノベーションに役立てています。また、独自の価値計測モデルを構築し、生み出した価値を提示しています。

写真:スカイ・ボックス
(空間を効率的に使うため、中に浮いているような構造となっています。
半オープンであり、プライバシーもあるが、外部とのつながりもあることを意図しています)
■欧州FCの訪問調査からの示唆
前号では、空間デザイン、もてなし、方法論に基づくファシリテーションを駆使した、対話に集中できる雰囲気を演出することなど、FCの実践に大切な要素を紹介しました。
FCは空間デザインといった施設面だけでなく、FCディレクターの存在、本質的課題を明らかにするプロセスなど、人・運用面の配慮も非常に重要であることがわかりました。
複雑な問題解決の場を運営する能力を身につけ、組織の存在意義/戦略に合致したFCを設計・運営し、知識創造組織へどう変革していくことができるのか。KDIでは、FCを活用して知識創造組織へ変革していくための実践・研究コミュニティとして、「フューチャー・センター・コミュニティ」を発足させ、2010年度も継続していきます。
フューチャー・センター・コミュニティへのご質問はこちらから
今年度のK-Directは、次の言葉で締めくくらせていただきたいと思います。
ハッピー・フューチャー!

担当:筧 |
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第2トラック |
<「事務局力」で会社を動かす! 事務局力を発揮する方法をお伝えします>
裏方ほどおいしい仕事はない!(5)実践:プロジェクトを「祭り!」にして成功させる
横断プロジェクトの最大の難しさは、部門によって、普段考えていることが全く違うところにあります。これを成功に導く事務局力は、「非日常」と「サプライズ」の演出で、バラバラの気持ちをひとつにすることです。
継続的に非日常体験を味わうのであれば、「Xデー」を設定し、その日までにアウトプットを出さないと人類が滅亡する、というようなクライシスの演出もオプションの一つです。会社的にいえば「ボーナス一律カット」とか。このアプローチの問題は、恐怖によって人を動かすところです。恐怖は、人を創造的にはしません。どうやったら危機を回避できるか、といった守りの思考に人を導きます。
そこで、「祭り」です。「祭り」は、クライシスと逆の、ポジティブなパワーを引き出す非日常体験です。では、事務局力をどのように発揮すれば、「組織横断課題」というだれもがしり込みする難題を「祭り」というイベントに転換していくことができるのでしょうか。祭りの情熱を引き出すためのキーワードは、「サプライズ」です。それを、場、プロセス、人のそれぞれの要素に盛り込んでいくことを考えましょう。
課題解決のための最終報告する日を「祭り」の日に設定します。そのためには、提言の場を楽しく、エキサイティングなものに演出する必要があります。
「最終報告の場は、社長に対してタスクフォースのメンバーが想いをぶつける場にしたいんです。組織を超えてワンファームとして動いていくことをメンバーが熱く語り、それを役員が後押しするという場の演出をさせてください」。
この台詞をまじめに言っていたらヒラメ社員ですが、あくまでもこれは、役員に場をセットさせるための手段だと割り切って言いましょう。
あとは象徴的なイベントを企画し、役員に「社長へのメッセンジャー」という役割を引き受けてもらえれば、ある程度インパクトのある場は用意できます。そこまで根回ししたうえで、この象徴的なイベントを前向きな気持ちで受け入れられるよう、メンバーにうまく伝えます。「これは祭りだ。楽しもうぜ」と。
大事なことは、開発チームの外の人たちへのビジョンの発信です。自分たちのビジョンを大きく描いて、「とにかく見に来てくださいね」と頼みこみ、来てくれたら、ビジョンについてとことん話し合いましょう。システムの評価者にも、ユーザにも、開発パートナーにも、とにかくみんなに見せます。システム開発が始まったら、大きく壁に貼った「ビジョンマップ」の中に、「ここを開発中!」とか「ここまで完成」といった、シールやポストイットを貼りまくります。ビジョンの実現度を実況中継するわけです。
働き方も変えていけるはずです。リーダーは事務局力を発揮して、開発メンバー全員の日常をイベント化します。巨大なカレンダーを掲示し、システムリリースの日には「祭り!」と入れます。学園祭の準備のような毎日を演出します。祭りを演出するには、チームのTシャツを作る、主題歌を決めて会議の最初に流す、メンバー全員を何かユニークな委員に任命する(広報委員、宴会委員、表彰委員、タイムキープ委員など)……全部やれとはいいませんが、ひとつくらいはできるでしょう。プロジェクトは、ずっと面白くなるはずです。

担当:野村 |
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第3トラック |
<K-Crewの創造的ワークスタイルを、メンバー一人ひとりが紹介します>
今日からできるKDI流創造的ワークスタイル(12)「ナレッジワーカーを活かす経営」
<知の生産主体は個である>
「今日からできるKDI流創造的ワークスタイル」も最終回となりました。毎月紹介をさせていただいた11のテーマは、ナレッジワーカーとしての作法(コアスキル)とも言うべきものです。ぜひ身につけていただき、皆様の職場に“知的にぎわい”をもたらしていただきたいと思います。
簡単に振り返ってみましょう。
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テーマ |
ポイント |
| No.1 |
オブザベーション |
現場に入り込み、観察によって、その場に潜んでいる本質的な課題を見つけ出す |
| No.2 |
ファシリテーション |
場に参加した人々の知を引き出し、相互作用によってさらに知を高めるための運営をおこなう |
| No.3 |
アイスブレイク |
ワークショップ参加者の心をリラックスさせ、主体性と協働性を引き出すための準備をする |
| No.4 |
手書きツール |
付箋紙やホワイトボードを多用し、アイデアを自由に表現する |
| No.5 |
来訪者エクスペリエンス |
訪れた人々に、「また、来たい」と思ってもらえるようなもてなしを提供する |
| No.6 |
コミュニティ交流会 |
お客様(クライアント)同士が、相互に学びあえる場を定期開催し、知的にぎわいが続くようにする |
| No.7 |
プロトタイピング |
アイデアを簡易的かつスピーディに、擬似体験可能なカタチにつくり込む |
| No.8 |
ストーリーテリング |
自らの体験やできごとを物語る。感情移入によって、共感が生まれ、組織の親密度・一体感が高まる |
| No.9 |
ブレインストーミング |
参加者同士がお互いの発言や記述に触発されながら、数多くのアイデアを創出する |
| No.10 |
ビジネスタイトル |
一人ひとりがキャリアビジョンを描き、明示することで、専門性発揮の機会が増え、仕事に磨きがかかる |
| No.11 |
ぶらぶら活動の推進 |
眼前の仕事に直結しない活動に積極的に関わることで、新たな視点を獲得しブレークスルーにつなげる |
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いずれのスキルも、人々の内面に潜む知を引き出し、つなぐことに焦点が当てられています。
- お互いの理解を深め、良い関係が構築できるような場を演出する
- 一人ひとりの暗黙知を引き出す
- 対話と相互作用を促進する
言うまでもなく、ナレッジワーカーとは、組織に対して自らの知識によって付加価値を生み出し貢献をする労働者のこと(by P.F.ドラッカー*1)です。
創造性の高い集団を実現するには、ナレッジワーカーの力を最大化しなくてはなりません。しかし独創的なアイデアや差異化の源泉となる暗黙知は属人的であり、些細なことで壊れてしまいます。 従って人々が互いの理解を深め、良好な関係を築けるようにすることが大切です。なぜならば信頼こそが、知の流通を促進する通貨だからです。このことを疎かにすると対話や相互作用が発揮されなくなってしまいます。
*1経営の神様と呼ばれたP.F.ドラッカーはナレッジワーカーに関する数々の著書「経営者の条件」、「ポスト資本主義社会」、「明日を支配するもの」で知られています。
<ナレッジワーカーを活かす経営>
21世紀に入って、欧米のみならず中国やインド、韓国などの競合が続々と登場し、日本企業よりも早いペースでイノベーションを進め、革新を武器にシェアを広げています。
日本企業にも創造性が求められる時代となりました。イノベーションの要請は日々高まるばかりです。しかし、経営者には戸惑いがみられます。なぜならば、20世紀を通じて高められた経営教義のいくつかが通用しなくなっているからです。(図1参照)
「戦略-組織構造-システム」は、アイデアや提案を選別し、資金の振り向けを決定するオペレーションモデルとしてうまく機能しました。ただし成長が鈍ると、組織の複雑性やマネジメントの難しさが露呈し、官僚主義・細分化・働く人々の停滞などが目立つ結果となっています。

図1:経営教義の変化
by クリストファ A. バートレット 「個を活かす企業」より
経営者がまず目を向けるべきことは、「自社にナレッジワーカーは育っているだろうか?」ということです。オペレーション力に基づく経営では、C&C(コマンド&コントロール:命令し制御する )が幅を利かせました。余計なことは一切やらないで良い。無駄を徹底して排除することが経営効率を高めると信じられてきたからです。
また事業が拡大し、企業規模が大きくなるほど、成長の源泉であるはずの個人の活力が失われがちです。事業拡大と個人活力のパラドックスをうまく乗り越えられていない企業は少なくないように思われます。
いまこそC&Cから抜け出して、E&E(エンカレッジ&エナジャイズ、またはエンパワー=奨励と激励、自由裁量付与)にシフトし、ナレッジワーカーのモチベーションを高めなければなりません。現場のイニシアティブと柔軟性を大切にし、現場最前線で創造された知識を連結して、活用する能力が原動力となるような組織への変革です。
21世紀を代表する企業を思い浮かべてみてください。3Sから3Pへと経営教義の転換をうまく果たしていることにお気づきになると思います。
<経営者に求められる忍耐力と包容力>
かつて富士ゼロックスの会長を務めた小林陽太郎氏は、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス誌のなかで、「暗黙知は形式知と違って、言葉や形にならないがゆえに、画一的には管理できない。言い換えれば、従来のマネジメント手法は通用しないということだ。そこで新たな挑戦課題は、管理するのではなく、いかにハンドルするかということになる。これには知的レベルはもちろんのこと、想像以上にメンタル・タフネス(精神的な強さ)と包容力の大きさを要する。ハンドルとは、個の自発性を尊び、喚起することである。というのも、企業の差別化を引き出すような独創的なサプライズは、いまや部門などといった従来の垣根を越えて、暗黙知を持つ個人同士のやりとりの刺激の中から生まれてくるからだ。(中略)個の持つ可能性を引き出し、伸ばす方向に仕向けていくことが、結果として組織の潜在能力を顕在化することにつながるのだ。」と述べました。
足元の成果を厳しく追求しながらも、経営者はこれまで以上に強い覚悟でナレッジワーカーを活かす経営にコミットしなくてはなりません。そのために全社にビジョンを浸透させ、トップ自らが率先垂範することが不可欠です。
トップと呼応しながら、皆さんが11の作法(コアスキル)を駆使し、イノベーション・リーダーとして活躍されることを期待しております。

担当:Knowledge Torchbearer KDIグループ長 仙石太郎 |
富士ゼロックスKDIに関する著書
富士ゼロックスKDIのメンバーが書籍を出版しました!
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裏方ほどおいしい仕事はない!
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今回から連載がスタートした「裏方ほどおいしい仕事はない!」
のベースとなっている書籍です。
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サラサラの組織
-あなたの会社を気持ちいい組織に変える、七つの知恵-
[著] 富士ゼロックスKDI [出版社]ダイヤモンド社
“知のめぐり”をよくし、知識や人がサラサラと流れていく組織を実現させた「変革リーダー」9人の実話と「サラサラの組織」にするための方法論をお伝えします。
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