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ドキュメント/文書管理

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ドキュメント 文書管理 バイタルレコード

<連載> 文書管理は意識改革から ― 富士ゼロックスの10年を振り返る ―
(7-2)研究・開発・生産拠点パイロット部門への「文書管理」展開の効果

2009年5月

富士ゼロックス株式会社
総務部 文書管理グループ マネジャー
酒井 英美

酒井 英美 プロフィール
酒井 英美1983年入社、7年間の営業部門を経て、1990年人事部へ異動。1995年 総務部文書管理グループへ移り現在に至る。1997~1999年 文書管理規程改正ならびに会社情報取扱規程制定に従事。2004~2005年 全社バイタル・レコード・マネジメント・タスクの事務局、本社部会長。2006年~2007年本社移転情報コンテンツ部会長。本社移転に関わる中で、統合文書管理システム「Febly」の第1フェーズ開発を推進、2007年5月首都圏に先行導入し、2008年4月1日全社導入。また、2006~2007年には文書管理規程の改正、文書管理細則の制定に従事。現在、統合文書管理システム「Febly」の第2フェーズの開発を進めるとともに、研究開発生産拠点へ文書管理の展開を推進している。ISO15489国内委員。行政文書管理士。

コンセプト/考え方 事例

全社へ「文書管理」を展開するにあたり、本社部門へ展開した「文書管理」が研究・開発・生産部門へ適用できるのか、前回では展開のための組織化とステップ、そしてその完成度点検の内容をご紹介しました。
今回は「文書管理」が研究・開発・生産部門の「文書」の管理に有益なものとなるのか、その効果の検証を試みたいと思います。

index
1 定量効果
  1-1.創出したオフィス面積(削減量からの試算)
1-2.文書検索時間の短縮効果(人件費相当額の試算)
1-3.文書管理展開にともなう「費用」
2 定性効果
  2-1.文書管理活動の「効果」と「達成度」
2-2.文書の共有化の達成度
3 「文書管理」展開の布石として
  3-1.文書管理は「有意義」か?
3-2.「文書管理」展開にともなう部門への支援活動は「必要」か?
3-3.「紙文書」管理手法は「電子(化)文書」管理へ「応用」できるか?


連載の全体概要図はこちら

1

定量効果

1-1.創出したオフィス面積(削減量からの試算)

図1「文書管理」の展開Before / After
図1「文書管理」の展開Before / After
(クリックすると拡大して表示します)

図1は、ある事業所の「文書管理」展開後の姿です。不要な文書、物品、図書を廃棄した結果、整理、整頓されたオフィスになりました。
文書量はスタート時点では3.8Fm*/人あったものが、現在1.6Fm /人となっており、約58%の削減となっています。物品は、1.5Fm/人から1.1Fm /人へ、約27%の削減。書籍は、0.8Fm/人から0.4Fm /人、約50%の削減です。これらの削減量を合計すると、キャビネット約1,200段に相当します。しかし、現時点での空きキャビネット量を確認すると、最終的には666段、3段キャビネット約222本相当の棚が空いているという結果になりました。これは、自分のデスク周りにあった「頻繁に利用する文書」や「仕掛中の文書」を会社のキャビネットに移すために、空いたキャビネットが再配分されたことによります。
3段キャビネットの設置に必要な面積は1.31m2です。これをもとに、「文書管理」の展開により創出可能となったオフィス面積を試算すると約291m2となります。つまり、「文書管理」はオフィス・スペースの削減または有効活用に有益であるといえます。オフィスが賃借物件であれば、家賃に換算することもできます。都心に近ければ近いほど、ファシリティ・コストの削減にも寄与することは言うまでもありません。

*Fm(ファイルメーター)
オフィスの文書を積み重ねた量で表す単位。1Fmは100cm。およそ1万枚の書類とみなす。

1-2.文書検索時間の短縮効果(人件費相当額の試算)

アンケート調査により、「文書管理」展開前の1週間あたりの文書検索回数および検索時間を調査しました。その結果、年間(52週換算)で事務系部門は1,209分、開発系部門は926分を文書の検索に使用していました。これは、自分の文書を検索する時間です。
「文書管理」展開の結果、文書検索時間が、事務系部門では年間126分に、開発系部門では年間129分になりました。これはグループ長やチーム長がその所属する組織の文書を検索したもので、自分の文書ではありません。自分の文書であれば、もっと速く検索できることでしょう。

図2 文書検索時間の短縮効果(人件費相当額の試算/一人当たり)
図2 文書検索時間の短縮効果(人件費相当額の試算/一人当たり)
(クリックすると拡大して表示します)

図2は、文書検索時間の「短縮効果」を一人当たりの人件費相当額に置きなおしたものです。
パイロット部門全体の効果としては、事務系部門173名では約18百万円、開発系部門170名では約10百万円となり、合計約28百万円の人件費削減に相当します。

1-3.文書管理展開にともなう「費用」

一方で、「文書管理」を展開するためには、現場部門の作業工数が必要になります。ある事業所で工数を記録してもらったのですが、その結果、一人当たり36.8時間を要していました。

もちろん、その他に、本社総務部、事業所総務グループの事務局費用、レコード・マネジメント・センターによる支援費用必要となります。
しかし、最大の費用は、文書管理に取り組む社員の工数でしょう。効果を上げるためには、「文書管理」展開にともなう社員の工数を低減することが最も重要となってきます。そのためにも、適切なアドバイスを行なうなど、現場部門へのサポートが重要になってくるのではないでしょうか。

2

定性効果

2-1.文書管理活動の「効果」と「達成度」

図3 文書管理活動の「効果」 (複数選択)
図3 文書管理活動の「効果」 (複数選択)
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図3は文書管理活動に取り組んだ「効果」を示したものです。
「文書管理」活動の効果については、「文書管理を導入し、机周り、机上の整理整頓したところ、部内の座席変更があった際、短時間で座席変更が完了した。」「組織変更や、グループ・チーム移動が多い当社においては、この部分をルール化すると、大きな効果に繋がる」など、全体を通じて肯定的意見が多く、不要文書の廃棄を含む文書の整理、整頓、スペースの創出などのきっかけとなった点では評価が高いものとなっています。
一方で、「紙文書の削減は効果があったが、文書管理の目的にマッチしたのか実感がない」「このルールに適さない書類が多いので有意義とは思わない」といった意見もありました。現時点では始まったばかりなので、「オフィス環境が良くなった」程度の認識どまりといえるのではないか考えます。

図4 文書管理活動の「達成度」 (複数選択)
図4 文書管理活動の「達成度」 (複数選択)
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図4は「文書管理」の達成度を示したものです。ほとんどの部門(93%)が「分類/配列作業を終了」まで完了しており、また約半分の部門が「移換え・置換え」までを完了している状況といえます。パイロット部門ということもあり、レコード・マネジメント・センターによる手厚いサポートの実施により、組織化および教育着手から約8ヶ月で「文書管理」を展開することができました。

2-2.文書の共有化の達成度

当社の「文書管理規程」による管理対象文書は、「会社の業務に関連して作成または社外との間で授受されるすべての文書」と規定しており、当然会社所有の文書のはずですが、ほとんどの社員、従業員にはその意識がありません。また、業務が個人に割り当てられており、割り当てられた業務にともなう文書だから「他の人は見ない、自分だけの文書」という意識が強くなっているのだと考えられます。これを「文書管理規程」に定めるように、属人管理を排除し、組織の管理下におくことは「文書管理」展開の重要な手段の一つです。

図5 文書の共有化の達成度
図5 文書の共有化の達成度
(クリックすると拡大して表示します)

図5は業務文書の「共有化」の達成度を示したものです。
ほとんどの文書が組織管理になった比率は72%。85%の部門が、半分以上の文書が属人管理から組織管理へ移っています。
一方で、「担当業務制なので、実質利用は個人ベース」という指摘もあります。つまり、個人文書がデスクから会社のキャビネットに移っただけという認識です。「共有」というのは、「全員による活用」のみをいっているのではありません。誰でもが、必要な時点で、閲覧可能な状態に置くこと、つまり「組織管理下」に移すという意味でもあります。「共有」という文言の理解の相違といえるでしょう。
今回の「文書管理」展開はパイロット部門、それもグループ/チーム単位であり、部門全体を対象としたものではありません。したがって、文書の「共有化」の達成度が低くなってしまうのは仕方のないことだといえます。そこで、達成度の低い部門に対して、「活動が部門全体になれば共有化が進むと思うか?」という質問をしてみました。その結果、「部門全体活動になれば共有化が飛躍的に進む」「部門全体活動になればある程度共有化は進む」の比率の合計が75%でした。やはり部門全体の「文書管理」展開となれば、より文書の「共有化」の達成度が上がるものと思われます。

3

「文書管理」展開の布石として

3-1.文書管理は「有意義」か?

「文書管理」は、「内部統制」、「コンプライアンス」、「訴訟対応」などへのための「説明責任」、「事業継続」、「情報セキュリティ」、そしてあらかじめそれらに備えることによる「経営効率」を確保するために会社にとって必要不可欠なものです。
しかし、いくら会社にとって重要だといっても、実際に実行する社員にとって、辛く苦しい「修行」のようなものでは長続きしないのではないでしょうか。したがって、現場のひとりひとりの業務が「ラク」になるような有益なものでない限り、その場限りのものとなってしまいます。

図6 文書管理は有意義(継続活動すべき)だと思うか?
図6 文書管理は有意義(継続活動すべき)だと思うか?
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図6は、「文書管理」を継続すべきか、つまり「有意義」かどうかを質問したものです。
全体では、「効果があり、今後も継続してやるべきだ」「効果が出始めており、やる価値はあると思う」が64%となっており、継続の必要性を認めています。「仕事のための書類なのに個人管理になっていること自体が、組織として変」という指摘が、このことを如実に示しています。
しかし、「着手したばかりなので、意義や効果が判らない」、「工数的な負担が大きい 」、「部門の管理方法が制定されていない時点での文書整理なので、文書管理になっていない 」、「書類の廃棄/整理の印象しかない」という開発系部門の意見もあります。これは「文書」のもつ性格の違いよるものだといえます。開発系には、証憑または証拠となすべき文書がほとんど見当たりませんでした。したがって、組織管理下に置いておく必然性がないとの認識が多いためだと思われます。

3-2.「文書管理」展開にともなう部門への支援活動は「必要」か?

図7 レコード・マネジメント・センターの支援活動の「必要性」?
図7 レコード・マネジメント・センターの支援活動の「必要性」?
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図7は、部門が「文書管理」を展開する上で「レコード・マネジメント・センターの支援が必要か否か」を質問したものです。全体で「支援は絶対必要」が72%「支援はできればあったほうがよい」が28%となっており、支援は不要という部門はまったくありませんでした。
「特に、『切替え』や『分類配列』は必要です!」「文書管理/ファイリングの意義等を含め第3者的な立場での支援文書が必要。」との声がサポートの必要性の高さを示しています。

3-3.「紙文書」管理手法は「電子(化)文書」管理へ「応用」できるか?

図8「紙文書」管理手法の「電子(化)文書」管理への応用性
図8「紙文書」管理手法の「電子(化)文書」管理への応用性
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図8は、今回展開した「紙」文書管理の手法が、「電子(化)」文書の管理にまで応用できるものかどうか質問したものです。
「『紙』文書管理手法のほとんどは『電子』に応用できる」「『紙』文書管理手法は、『電子』文書に応用できる部分が多い」という肯定的意見が80%を占めています。
肯定的意見では、「電子文書についても、文書管理のマニアルと同様な管理が出来る、電子(文書)管理についてもチームのマニアルを確立すべきである 」、「『電子(化)文書』管理のキーは、『ルール』と『周知(教育)』」などが代表的なものです。
反対に、「管理面」や「検索面」での差異が大きい事から、「紙」文書管理手法をそのまま適用することに疑問の声もあります。電子(化)文書では「検索機能」や「リンク機能」といった利便性、セキュリティの高さなど優れている点もあり、紙文書の管理手法を応用する必要はないという考え方です。しかし、現場部門へのヒアリングの際には、「ファイル体系を変更すると『リンク』などが破壊され、便利なのは最初だけだった」との声もあります。

現在のオフィスでは、「電子(化)文書」の管理は、文書管理ソフトウエア開発会社のものを導入して、その環境下での管理を行なっているわけですから、これとはまったく別の管理手法を取り入れることはできません。したがって、現物の「紙文書」の管理手法を、そのまま「電子(化)文書」に当てはめることはできないのです。こういった背景により、「別の管理手法しかないのだから別管理」というように考えているのではないかと思います。

当社では、本社移転を契機に「統合文書管理システム」の構築*を進めています。これは、本社移転の経験をもとに、「紙」文書管理の手法が「電子(化)」文書の管理にまで応用できるとの仮説にもとづいたものです。今回、研究・開発・生産事業所パイロット部門への「文書管理」展開が、その裏づけともなりました。

*「統合文書管理システムの構築」につきましては、「2009年1月(5)「本社移転から始まった『統合文書管理システム』の構築」をご参照ください。

以上、2008年5月から、当社が進めてきた「文書管理」の10年間を振り返ってみました。
まだまだ発展途上ではありますが、これから「文書管理」を導入、展開する企業のお役に立てれば幸いです。


今月号をもちまして「文書管理のススメ」は連載終了となります。
1年間のご愛読、ありがとうございました。

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