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その他

メンタルヘルスコンサルタントの奮闘記

竹内 理恵 プロフィール

現在、株式会社富士ゼロックス総合教育研究所でメンタルヘルス分野におけるコンサルティングを担当。精神保健福祉士(国家資格)、産業カウンセラー、キャリア・コンサルタント、心理相談員、メンタルヘルス・マネジメント検定試験 I種、II種、III種を取得。従業員の心の健康問題やその環境等も視野に入れた上で、より各企業のニーズにフィットした人材育成や組織開発を提供するため、ただいま奮闘中!

バックナンバー

睡眠リテラシーのすすめ
― オーバーヒートの前に脳をクールダウン ―

2010年10月

富士ゼロックス総合教育研究所
メンタルヘルスコンサルタント
竹内 理恵

皆さん、こんにちは。皆さんは今の睡眠に満足していますか?どの調査においても、日本人の睡眠時間は世界の中でもトップクラスの短さという結果が出ています。
睡眠はうつ病の発症や再発リスクの軽減はもちろんのこと、仕事や試験、学習、趣味などにおいて十分な能力を発揮するためにも不可欠です。
一人ひとりに高いパフォーマンスの発揮が求められる今だからこそ、皆さんにとって少しでも満足のいく睡眠をとってもらいたい!という想いで、今回は9月号の「精神科医が教える「こころ」を活かす勉強術」を執筆された東京医科歯科大学大学院 西多昌規先生監修のもと、睡眠をテーマに情報を提供したいと思います。

index
はじめに
1 睡眠不足がもたらすもの
  1-1. 個人の身体面においてのリスク
  1-2. 個人の精神面においてのリスク
  1-3. 企業においてのリスク
2 快適な睡眠について
おわりに

はじめに

劇的な環境変化や景気低迷などにより、今では多くの方により高いパフォーマンスが求められています。そのような中、次のことを考えている方も多いのではないでしょうか?

  • 集中力を高めて効率的に業務をこなしたい。
  • 創造力を発揮したい。
  • 短時間で的確な決断や判断をしたい。
  • 勉強した内容を仕事に、もしくは試験時に効果的に活かしたい。
  • 心身の健康を維持(もしくは回復や向上)をしたい。・・・・・・etc.

これらには睡眠の状態が大きく影響するといいます。

では、皆さんは睡眠時間をどれくらいとれていますか?
適切な睡眠時間は年齢や個人差などがあり、人それぞれといわれています。
皆さんにとって日中の仕事や生活に支障をきたさない睡眠時間はどれくらいですか?

ちなみに、私の適切な睡眠時間は1日平均7時間のようです。6時間程度の睡眠を1週間続けると、日中に何度も眠気が襲いますし、休日は昼過ぎまで寝てしまいます。
そんな私が昔、「毎日の平均睡眠時間が3~4時間で十分」という友人から、「睡眠時間は短縮できる、慣れだよ」と聞き、1日の睡眠時間を4時間程度に削ったことがあります。今振り返ると危険な試みだったと思うのですが、当時の私は1日=24時間と限られた時間を、できれば睡眠以外に費やしたかったのです。ところが、日中から頭がボーッとしてあくびが頻繁に出るし、胃は常にムカムカして楽しみにしている3度の食事が美味しく感じられないなど、たくさん不快な時間を過ごすことになりました。さらには、他の日で睡眠不足をまとめてカバーするほど寝てしまうなど、結局睡眠時間を削ったメリットが感じられず、1週間もたたずにやめました。
当時の私は睡眠に関する知識が全くなく、後に睡眠について色々と知るにつれ、これまでの自分にゾッとしました。知らな過ぎる怖さを感じたのです。

うつ病を誘発する要因として睡眠の影響が証明されていることから、執筆開始当初よりずっと皆さんにお伝えできればと思っていました。その間にも睡眠に関する情報はWebや雑誌、TV等でも頻繁に伝えられてきていることから、それだけ注目されていて大事なことなのだと改めて感じます。情報との出会いはタイミングや縁です。今回も皆さまの新たな気づきやリマインドになるよう睡眠リテラシー(睡眠に対する基礎知識)をお伝えできればと思います。

話がそれましたが、平均5時間以下でも日中生活に支障をきたさない「ショートスリーパー」と呼ばれる人は全体の4~5%前後存在する調査結果もあるようですが、なぜ支障をきたさないのかは解明できていないようです。短眠遺伝子の関与が注目されている中、うつ病などの疾病リスクを高めたり、疾病までいかなくても、日中の心身の機能低下や、それに伴うパフォーマンスの低下をさせてまで短眠を継続するには限界があるように感じます。また、とても危険なことでもあります。

1

睡眠不足がもたらすもの

では、睡眠不足はどうして危険なのでしょうか?
うつ病になるリスクは既に触れましたが、それ以外にも次のようなリスクがあげられます。

1-1. 個人の身体面においてのリスク

まず、高血圧や脳卒中、心臓病などの疾病のリスクが高くなる点です。
法律で、法定労働時間を超えた勤務時間の1ヶ月当たりの限度が45時間というのも、睡眠時間の短縮による上記のような疾病を避けるためでもあります。また、労災認定基準のひとつに発症前1ヶ月の時間外労働が100時間以上とされているのも、時間外労働100時間は1日の平均睡眠時間が5時間以下というライフスタイルに該当し、そのスタイルでの脳・心臓疾患のリスクが高率に認められたという医学的データに基づいているからでもあるのです。
つまり、恒常的な長時間労働によって十分な睡眠がとれず、疲労が回復できずに蓄積していった結果、血圧の上昇や血管病変等をもたらすというのです。

また、睡眠不足によるこんな実験結果も発表されています。17時間起き続けているだけで、アルコール血中濃度0.05%(酩酊状態)にあたるパフォーマンスレベルに低下するというのです。徹夜をすれば、17時間はゆうに超えて起き続けるでしょう。その状態で資料を作成したり、大事なプレゼンに臨んでも、酔っ払いの人と同じ程度のパフォーマンスにしかならないということです。

徹夜といえば、仕事の他に勉強という文字が浮かぶのですが、睡眠不足は新しいことを覚える妨げをします。記憶をつかさどる脳の「海馬」の活動が低下することがわかってきているのです。
それではいくら新しい知識や情報を記憶したくても限度があるでしょう。さらに、睡眠は新しいことを覚えるだけでなく、覚えたものを定着させるのにも必要です。私たちの脳は、寝ている間に自動的に記憶を統合・整理するなどメンテナンスを行なってくれます。
つまり、心身の健康面だけでなく、時間という有限の資源を効率的・効果的に使うためにも、睡眠をしっかりとることが重要といえます。
……思えば、私の脳に覚えたはずの情報や知識が定着していないのは、学生時代、一夜漬けや徹夜が多かったからかもしれません。(という言い訳には使えるかもしれません?!)

話は変わりますが、ダイエットに励む方、肥満に悩む方は必見です。1日10時間十分に寝た日に比べ、4時間睡眠を2日間続けただけで、肥満をコントロールするホルモン(レプチン)分泌は低下し、逆に食欲を高めるホルモン(グレリン)分泌が亢進するため、食欲が増大することがわかっています。たった2日間でもです。
ダイエットの手段といえば「食事」や「運動」が真っ先にあがると思いますが、今後はそこに「睡眠」も入れるとより効果的かと思います。

睡眠不足が私たちにもたらすものはそれだけではありません。

1-2. 個人の精神面においてのリスク

睡眠不足だとイライラしませんか?
実際にキレやすくなるといわれています。なぜなら、睡眠不足の時は、脳の前頭葉の働きが落ちるからです。世の中には理不尽なこと、上手くいかないことなどがたくさんあります。前頭葉は、例えイライラしても、表情や態度、行動等に出すのをコントロールする働きをします。またそれだけではありません。意欲、倫理観、理性、想像力、集中力などといった機能が前頭葉には関係します。例えば、モチベーション研修やコンプライアンス研修などで知識を習得することも大切ですが、本当に研修目的の達成や実施効果を期待するには、意欲や倫理観、理性などの制御に繋がる十分な睡眠が前提に来るのかもしれません。投資対効果を期待するならなおさらのことです。

投資対効果を望むのは個人のみならず、企業組織の場合はなおさらです。
次は企業組織における睡眠不足のリスクについて触れます。

1-3. 企業においてのリスク

まず、上述の個人(従業員とする)のパフォーマンスの低下による生産性への影響は計り知れないものがあります。睡眠不足では、集中力や注意力が散漫になり、決断力の低下や、問題解決能力に影響を及ぼし、普段ではやらないだろうミスやアクシデントを起こしがちです。労災補償といった問題を避けるためにも、従業員の疲労が蓄積することのない睡眠時間の確保を考慮した労働環境の提供が重要です。それが、疾患リスクを軽減し、従業員の心身を守ることにも繋がるのですからなおさらのことです。

なお、人間の生体リズムでは、午後2時と午前4時に眠気の波が来ることがわかっています。よって、仕事中の眠気が午後2時あたりに来るのは誰にでもあり得ますが、睡眠不足の状態で襲ってくる睡魔はレベルが違います。自分の意志ではコントロールし難いのです。首がカクンと傾くのが会議中なら注意をされるだけで済むかもしれませんが、自動車や機械を操作している際の首カックンは命取りにもなります。
1986年のスペースシャトル「チャレンジャー」号の爆発事故や、チェルノブイリ原子力発電所事故、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故は、職員の睡眠不足が指摘されています。そのような大事故までいかなくても、自動車や機械の操作事故などの原因には睡眠問題が多く取り上げられています。睡眠不足の要因に、長時間労働など業務に関連するものがあれば、労災補償以外に多大な損害賠償が発生することもあるのです。

睡眠を考慮することで、従業員一人ひとりの心身の健康と安全、そして、一人ひとりの集合体である企業組織を守ることに繋がるのです。

以前、ある企業の社長と面談をしている時に、「移転を機に従業員の心身の健康を考慮した楽しい取り組みをしたい。何かないだろうか」とご相談いただき、その場で伝えた案の一つに昼寝があります。「幼稚園じゃあるまいし」と笑われる方がいらっしゃるかもしれませんが、15分の昼寝を数年実施し続けている日本のある高校では、昼寝の導入以降、成績が右肩上がりで、学習意欲の向上だけでなく、保健室の利用者の減少といった健康面までの効果をあげています。
また、海外での調査では、少なくとも週3回、昼寝を定期的にする人は、昼寝をしない人に比べて心筋梗塞などの心疾患による死亡リスクが37%も低いことが判明しています。
昼寝を取り入れることで、脳の活性化が続き、集中力も高まる上、身体の調子が良く、午後の業務生産性が高まれば、個人や組織の活性化に繋がります。昼寝をきっかけにプラスのサイクルに回り始める期待ができるのです。

昼寝を組織単位で行なうことが難しいなら職場やチーム単位で、それも難しければ休憩中に個々人で行なうことをおすすめします。私も昼休み中に個人で昼寝をすることがありますが頭がスッキリします。(弊社では環境保護のために昼休み中は社内の電気が消えて暗くなるので昼寝には適しているのです)頭がスッキリした状態で仕事に取り組むと、やはり気分もいいです。また、外で過ごしやすい天気には、心地よい風にあたりながら10分程度の昼寝を取ることもあります。はじめは寝過ごして業務時間内に会社に戻れるか心配でしたが、私の場合は携帯アラームさえセットすれば、浅い眠りで起こされるためか無事に起きられます(笑)。夜の睡眠に影響が出ない15時位までなら、電車の移動時間も昼寝にいいかもしれません。(ただし乗り過ごしや忘れ物にはご注意を!)
また、「昼寝をしようとしても職場や外では落ち着けない」という方は、目を閉じてリラックスをし、うとうとするだけでも効果があるといいます。
以前、会議の休憩時間に参加者全員に「蒸気で温めるアイマスク」を渡し、暗くした部屋で一斉に休んだり、リラックスすることに徹してもらったことがあります。結果、リフレッシュ効果を実感された声が多かったです。

昼寝(うとうと含む)は、前の晩によく眠れなかった方や慢性的な睡眠不足で悩んでいる方には特におすすめします。ぜひ試してみてください。
最近では昼寝用の音楽CDも出ているようですよ。

睡眠不足がもたらすもの

2

快適な睡眠について

先月号の西多先生の記事「3-3.メリとハリをクッキリ出して、同じリズムで」のところをご覧いただくと、様々な睡眠のアドバイスに十分響くものがあるかと思います。
睡眠というと、睡眠グッズや寝具、睡眠の環境に目が行きがちですが、「起きている間の過ごし方が重要」というメッセージにハッとされた方も多いのではないでしょうか。
さらにそこでは昼寝に適する時間についても「30分以内が効果的」と教えてくれています。
30分以内という理由は2つあるといいます。1つは深い睡眠に入る前に起きるため、起きた後にボーッとしたり眠気を残すことを防ぎ、もう1つは夜の睡眠を浅くしないためです。
また、昼寝30分以内というのは、現実的かつ好都合な時間かもしれません。なぜなら「昼寝タイム」が職場で定着していなければ、勤務時間にまで昼寝が差し掛かるのを許してくれる会社はそうないでしょうし、限りある昼休み時間からご飯を食べた時間などを差し引くと、やはり現実的な時間に思います。

他では、厚生労働省(睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班)が、睡眠をより良くする12の項目を以下のように発表しています。(2002年)

  1. 睡眠時間は人それぞれ。日中の眠気に困らなければ十分
  2. 刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法を
  3. 眠たくなってから床につく。就床時刻にはこだわりすぎない
  4. 同じ時刻に毎日起床
  5. 光の利用でよい睡眠
  6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
  7. 昼寝をするなら15時前の20~30分
  8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
  9. 睡眠時の激しいイビキ、呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
  10. 十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
  11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
  12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安心

以降、項目ごとに関連情報などとあわせて詳細をお伝えいたします。

1.睡眠時間は人それぞれ。日中の眠気に困らなければ十分

適した睡眠時間は人によって異なります。日中の活動に支障がない睡眠が取れていればよいため、7時間や8時間といった睡眠時間にこだわることはありません。
ただ、年齢とともに睡眠の時間も深さも変化します。西多先生は臨床場面で40歳前後から自分の睡眠に戸惑われている方が多いと感じていらっしゃるようです。健康な方でも、睡眠が浅くなって目が覚めやすくなったり、寝付くのに時間がかかってしまうなどの傾向が強くなってくるといいます。体力や代謝などと一緒でこのような睡眠の変化も「歳をとれば自然なこと」と受け入れ、早寝早起きを楽しむ生活に切り替えたり、昼寝を取り入れるなど、上手に前向きに付き合っていくことが大切なのかもしれません。

2.刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法を

就寝前4時間のカフェイン摂取は避けましょう。カフェインは吸収に30~40分ほどかかり、持続時間は4~5時間になります。カフェインが含まれるコーヒーや紅茶、ココア、日本茶、コーラ、栄養ドリンク、チョコレートなどは避けましょう。
ニコチンも覚醒作用があり、眠りを妨げますので、就寝前1時間の喫煙は避けた方がよいでしょう。

私がセルフケア研修をする際、よくリラックス法について参加者に発表してもらったりしています。ストレス解消・予防方法を「会社」と「プライベート」それぞれに分けてお話してもらうのですが、プライベートでは音楽やDVD鑑賞、アロマを焚く、友人とのおしゃべりや飲食、入浴、瞑想、ヨガ、ウォーキングなどリラックス法となるものを皆さん実に多種多様に持っていらっしゃいます。リラックス法はストレスから自分を守り・闘う「武器」にもなりますので、ぜひ自分に合う「武器」を増やしていって欲しいと思います。
ただし、寝る前や寝付けない時のためのリラックス法は、少し気をつけなければならない点があります。

  • 電子メールのチェックは就寝1時間前までに
    イギリスの研究結果によると、就寝前に電子メールのチェックをすると、脳から分泌される自然な眠りを誘う睡眠のホルモン「メラトニン」の分泌を妨げてしまうというのです。それが、エスプレッソ(小さなカップで少量飲むほどの濃いコーヒー)2杯分と同じ不眠効果があるというから驚きです。電子機器からの光が原因のため、電子メールに限らず、テレビやパソコン、ゲームなども同じと考えられます。メールやパソコンを開くのが就寝前の習慣になっている方も多いと思いますが、それを朝にシフトさせるのも手です。夜は刺激の少ない他のことに時間を費やしたり、(朝にシフトさせる分)睡眠時間にあてるなどして習慣を変えてみたら、快適な睡眠やよりよい気分が得られるかもしれません。
  • お風呂の温度は38~40度くらいに
    睡眠は体温が下がるときに入りやすいため、寝る前に体温を少し上げてあげるとスムーズに下がりやすくなります。よって、就寝前の入浴はぬるめがベストとされます。熱いお風呂は身体や脳を興奮させてしまうため睡眠には適していないようです。逆に、覚醒をしたい朝には熱めの温度が適していますので、使い分けるのもいいのではないでしょうか。

3.眠たくなってから床につく。就床時刻にはこだわりすぎない

「眠らなきゃ」「どうしよう、眠れない」と力んで寝付けなかった経験はありませんか?あまり力むとかえって眠れなくなります。眠ることに頑張ろうとしないことが眠るためのコツかもしれません。
私の場合ですが、眠ろうとしたり、眠る時に思い浮かべる様々な想いや感情などから一旦離れることで眠れているように思います。一旦離れるためには他のことをすることです。ご参考までに、“眠れないけどそろそろ眠りたい”という時の私は、ストレッチや筋弛緩法(顔や肩、手足などの筋肉に力を入れて10秒程度緊張させ、その後ふっと力を抜いて15秒程度筋肉が緩んだリラックス状態をじっくり味わう方法)を行なったり、イメージ法(心地よい状態に身を置いているイメージを具体的に行なう)といったリラクセーションを実施しています。

4.同じ時刻に毎日起床

ポイントは、同じ時刻に「就寝」ではなく「起床」するということです。休日は平日の睡眠不足をリカバーしたいところですが、あまり寝すぎると夜の睡眠に影響が出て睡眠リズムが乱れます。(お昼まで寝たとしても12時までがよいとされます)
私たちの身体は基本的には一定の状態を好みます。リズムの乱れや変化が生じると、馴染もうと身体は一所懸命エネルギーを費やします。そのため、毎日一定の時刻に起床をし、睡眠リズムを整えることが推奨されています。

5.光の利用でよい睡眠

人間の1日のリズムは24時間ではなく約25時間といわれています。朝日を浴びることで24時間にリセットしてくれるのです。また、睡眠のホルモン「メラトニン」も光の影響を受けていて、光を浴びてから15~16時間くらい経つと、自然に眠くなるというリズムの調整を行なってくれます。例えば7時に光を浴びると、22~23時あたりに眠くなるというイメージです。ですので、起床後には朝の光を浴びて、夜にメラトニンを分泌させることが望まれます。
さらに、朝の光は「セロトニン」という脳内神経伝達物質の分泌を促進させます。セロトニンの働きが低下すると、気分が晴れなかったり、不安になったりするので、セロトニンをたくさん分泌させることが大切です。朝の光は睡眠だけでなく、気分の高揚にも重要なのです。
逆に、夜は部屋が明るすぎると「メラトニン」の分泌が妨げられますので、照明を少し落として過ごされた方が無難です。

6.規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣

なぜ睡眠に食事が関係するのでしょう。 「2.」と「5.」で登場した睡眠のホルモン「メラトニン」は、不安や抑うつに関係する脳内神経伝達物質「セロトニン」から作られるといいます。セロトニンは昼間に分泌されますが、分泌量が少ないと夜に作られるメラトニンの量も比例して少なくなります。では、セロトニンは一体何からできているのか。それは、トリプトファンというアミノ酸です。そのトリプトファンは私たちの体内で作り出すことができません。そうです、食事で補給するしかないのです。トリプトファンは、肉類や魚類、豆腐などの大豆、乳製品に多く含まれています。
ただ、トリプトファンだけ摂取すればいいというものではありません。分解や吸収を促す野菜や果物なども同じくらい一緒に食べることが必要です。
近年ストレスに弱い人が増加傾向にあると耳にしますが、もしかしたら偏食やダイエットの影響もあるのかもしれません。トリプトファンを取り入れ、また活かすためにも、バランスの良い食事が大切になります。

また、朝食抜きの方が見受けられますが、朝食は脳と身体を目覚めさせ、スッキリした朝を迎えさせてくれます。私は例え遅刻してでも朝食の方を選びます?!(笑)
夕食は、就寝3~4時間前には済ませるのがベストとされます。就寝直前では胃や腸が休むことができず、睡眠には専念できなくなります。肥満や逆流性食道炎などを引き起こしかねません。残業する時は、就寝時間を考えた上で、食事を摂る配慮も大切です。

運動と睡眠との深い関係は、西多先生のレポート「5-2.運動を取り入れる」の内容を読んでいただければ皆さんの心に響くのではないかと思います。運動は睡眠だけではなく、抗うつ薬としての効果もあると知れば、さらにモチベーションが上がりますよね。

7.昼寝をするなら15時前の20~30分

今回しつこいほど話題にしてきた昼寝ですが、昼食後から15時前の間にするのが効果的といわれています。また、昼寝前にコーヒーを飲むと、目覚める頃に脳が覚醒されるため、リフレッシュ効果が高いという実験結果報告もあります。ぜひ、疲労の軽減や日中の眠気対策、作業効率や生産性の向上のために、職場やチーム、個人などで取り入れてみてください。ただし、就労義務を守ることが前提になりますのでご注意を。

8.眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに

ベッドで長く過ごしていると眠っていても「眠った気がしない」状態に陥る可能性があります。
睡眠は生活習慣といえます。良い睡眠リズムをつくるきっかけは「早寝早起き」より、早起きが早寝に通じる「早起き早寝」の方がやりやすいように感じます。特に「遅寝遅起き」を脱出したい方は「遅寝早起き」を試してみてください。

9.睡眠時の激しいイビキ、呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意

睡眠について執筆しながらずっと頭の片隅にあったことがあります。それは、次の2つです。

  1. 睡眠リテラシーがないのも危険だが、神経質になったり、とらわれ過ぎても安眠しづらいので、適度なバランスが大切。
  2. 睡眠に悩む背景に、病気が潜んでいる可能性もある。

まさにこの項目「9.」は「ii.」についてお伝えする内容になります。
睡眠中に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」は広く知られている病気かと思います。夜の睡眠が十分に取れないため、昼間激しい眠気に襲われます。また、高血圧や糖尿病、狭心症、脳卒中と合併しやすい他、近年ではうつ病と認知機能の低下がよく合併するといわれています。ですので、日中に強い眠気を感じたり、ご家族からの睡眠中の呼吸停止やひどいイビキなどの指摘がありましたら、睡眠外来などの専門医に相談をした方がよいかと思います。
他、入眠時や睡眠中に主に足の辺りがむずむずするなど異様な感覚を感じる「むずむず脚症候群(周期性四肢運動障害)」も睡眠を妨げます。放置すると症状を悪化させ、睡眠障害だけでなく、うつ病などの精神障害を合併させる恐れがあるといいますので、やはり専門医への相談をおすすめします。

10.十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に

長時間にわたる睡眠や、日中の過度の眠気が繰り返される過眠症という病気も存在しますので、専門医への相談も視野に入れましょう。

11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと

寝酒が日課の方もたくさんいらっしゃると思うのですが、寝酒は寝付けたとしても睡眠の質が悪くなるといわれています。理由は、アルコールの利尿作用によるトイレや喉の渇きによる目覚めだけではありません。アルコールが入ると、私たちの身体は一生懸命に分解・代謝します。そのスピードは比較的早いため、睡眠中にアルコール不足で落ち着かない状態、つまり「離脱症状」が現れます。そうなると当然睡眠が浅くなり、睡眠の質も悪くなります。

では、寝る何時間くらい前なら影響が少ないでしょう。やはり仕事上や仲間との付き合いなど、どうしても断れない時だってありますよね。
代謝スピードの個人差や、アルコールの含有量、飲酒量などによって異なるとは思うのですが、適度な量であれば寝る3~4時間前が目安になるようです。

ただ、もしも眠るためにアルコールを利用する場合、アルコール耐性が強化され、同じ量では眠れなくなってきます。量が増えれば当然身体に負担がかかりますし、アルコール依存症になる危険もありますので注意が必要です。

12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安心

睡眠薬はドラッグストアで買えるものから、医師が処方するものまで様々あり、各薬の特性も様々です。使用するとしても、一人ひとりの症状を考慮した薬の選択が望まれます。
うつ病や睡眠時無呼吸症候群など、睡眠薬だけではよくならない病気の場合もありますので、精神科や心療内科、睡眠外来の医師に相談した上で使用した方が安心でしょう。

快適な睡眠について

さて、今回は睡眠をテーマにお伝えいたしました。
以前、「誰でもうつ病になる可能性がある」とお伝えしたことがありますが、自分では気づきにくい難しさがあります。しかし、睡眠の変化は自分でも気づきやすいものです。
なかなか寝付けない(入眠覚醒)、睡眠の途中で何度も目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)というような睡眠の変化は、多くの方に経験があるかと思いますが、何週間も続いた時には「あれ?おかしいな」と気づくことが大切です。そのような場合、睡眠リテラシーだけでは解決できないことが多いからです。

ここで、不眠を測る世界共通の基準を紹介します。「アテネ不眠尺度」といって、世界保健機関(WHO)が中心になって設立した「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した基準です。8つの質問について、過去1カ月以内に少なくとも週3回以上当てはまるものにチェックをするもので、各得点の合計で判定されます。参考程度にチェックしてみてはいかがでしょうか。

アテネ不眠尺度
(Soldatos et al.: Journal of Psychosomatic Research 48:555-560, 2000)

下記の8つの質問について、過去1カ月間に、少なくとも週3回以上当てはまるものにチェックしてください。
各得点の合計で結果が診断されます。

  質問 選択肢 得点
Q1 寝つき(床についてから眠るまでに要する時間) いつも寝つきはよい 0点
いつもより少し時間がかかった 1点
いつもよりかなり時間がかかった 2点
いつもより非常に時間がかかった、または眠れなかった 3点
Q2 夜間、睡眠途中で目が覚める 問題になるほどではなかった 0点
少し困ることがあった 1点
かなり困っている 2点
深刻な状態、あるいはまったく眠れなかった 3点
Q3 希望する起床時刻より早く目が覚め、それ以上眠れない そのようなことはなかった 0点
少し早かった 1点
かなり早かった 2点
非常に早かった 3点
Q4 総睡眠時間 十分である 0点
少し足りない 1点
かなり少ない 2点
まったく足りない、あるいはまったく眠れなかった 3点
Q5 全体的な睡眠の質 満足している 0点
少し不満 1点
かなり不満 2点
非常に不満、まったく眠れなかった 3点
Q6 日中の気分 いつもどおり 0点
少し滅入った 1点
かなり滅入った 2点
非常に滅入った 3点
Q7 日中の活動(身体的および精神的)について いつもどおり 0点
少し低下 1点
かなり低下 2点
非常に低下 3点
Q8 日中の眠気 まったくない 0点
少しある 1点
かなりある 2点
激しい 3点

 

<自己診断の目安>
合計点が1~3点:睡眠障害の心配はありません。
合計点が4~5点:少し不眠の疑いがあります。
合計点が6~9点:不眠症の疑いがあります。
合計点が10点以上:医師に相談することをお勧めします。

ちなみに1ケタ台はよくあるそうですので、深刻に捉えすぎず睡眠習慣を見直すきっかけにしていただければと思います。

おわりに

最後になりましたが、多大なご支援をいただいた西多先生に心から深謝いたします。
先生には、ご多忙の中、本記事の執筆に関して数多くのエビデンスに基づいた具体的な内容と貴重なご意見をいただきました。また、この長い記事を読んでくださった読者の皆さんにも感謝いたします。いつもコメントをお寄せくださることが何より嬉しく、また有り難く、改めてこの場で感謝の意をお伝えさせてください。
西多先生、読者の皆さま、本当にありがとうございました。


(出典)

西多昌規著『脳を休める 睡眠と脳科学の新しい常識』ファーストプレス
睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会 内山真編『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』

(参考)

e-ヘルスネット(厚生労働省の健康情報サイト)


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