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  • メンタルヘルス対策への取り組み事例(前篇) ― 予防に向けた具体的な進め方事例 ―

メンタルヘルス対策への取り組み事例(前篇)
― 予防に向けた具体的な進め方事例 ―

株式会社 富士ゼロックス総合教育研究所
メンタルヘルスコンサルタント
竹内 理恵

竹内 理恵 プロフィール

現在、株式会社富士ゼロックス総合教育研究所でメンタルヘルス分野におけるコンサルティングを担当。精神保健福祉士(国家資格)、産業カウンセラー、キャリア・コンサルタント、心理相談員、メンタルヘルス・マネジメント検定試験 I種、II種、III種を取得。従業員の心の健康問題やその環境等も視野に入れた上で、より各企業のニーズにフィットした人材育成や組織開発を提供するため、ただいま奮闘中!

これまでこのメンタルヘルスの連載ではストレッチ方法や呼吸法、睡眠のススメなど、ストレスに負けないコツをお伝えしてきましたが、今回はテイストを少し変え、メンタルヘルス対策を支援してきたある企業さまが地道に取り組んでいる対策事例をご紹介します。
企業規模を問わずメンタルヘルス対策が法令上でも求められている中、「どのように取り組んだらよいかわからない」「対策を進めてはいるものの、どうも手探りで……」、そんな皆様のお役に立てれば幸いです。

1.はじめに

企業がメンタルヘルス対策に取り組む必要性については、「企業経営におけるメンタルヘルスマネジメント― 個と企業が生き生きとするために ―」(2009年11月掲載)でも述べさせていただきましたが、企業・組織へのメンタルヘルス対策の情報提供をする立場として、ここ数年で特に感じるのは所有資源、経緯や状況、課題、価値観などによって求められる内容がさまざまだということです。

世の中にはこの分野に関する情報が溢れていて、先進的な情報、素晴らしい事例など探せば比較的手に入りやすいと思います。しかし、情報や知識を「知っていた」としても、実際に「役立てているか」「取り組んでいるか」は別問題です。

そこで、今回の記事はあくまで私が関わっているお客さま企業が「地道に」「着実に」「取り組んでいる」様子を2回にわけてお伝えします。

この内容がメンタルヘルス対策を推進されている方々、また、これから取り組んでいこうとしている方々のお役に立てたら幸いです。

ここで、お話に入る前に、メンタルヘルス対策にまつわる法の取り組みについて簡単にご説明いたします。近年職場における労働者の安全と健康の確保をより一層推進するため、『労働安全衛生法』が都度改正を重ね、長時間勤務労働者への対応などが盛りこまれるなど、企業規模問わずメンタルヘルス対策は会社の制度として必要とされてきています。

そして、この法令に基づく指針「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、各企業組織の実態に即した形で、積極的にメンタルヘルス対策に取り組むことが望ましいとした上で、具体的な方法などについての基本的事項を定めた「心の健康づくり計画」を策定し、計画的に行うことが重要としています。

今回ご紹介する事例についても「心の健康づくり計画」の項目を参考にご覧いただくと、メンタルヘルス対策の一例としてよりイメージしやすいと思います。

心の健康づくり計画「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年3月 厚生労働省)

  1. 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
  2. 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
  3. 事業場における問題点の把握およびメンタルヘルスケアの実施に関すること
  4. メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保および事業場外資源の活用に関すること
  5. 労働者の健康情報の保護に関すること
  6. 心の健康づくり計画の実施状況の評価および計画の見直しに関すること
  7. その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること

2.A社がメンタルヘルス対策に取り組むまでに至ったきっかけと経緯

今回ご紹介するお客さま企業(以下、A社)は、この約2年間、特に一次予防(未然防止、健康増進)と二次予防(早期発見と対処)に焦点を当てて対策を講じてきました。
A社のご担当者様よりお話を伺い、対策を講じたきっかけや経緯、現在の活動状況をご紹介いたします。

A社について

事業内容 ソフトウェアの開発と保守、販売など(IT企業)
従業員数 約500名(技術系の従業員で8~9割を占める)
人事労務管理スタッフ 3名(担当スタッフ、マネージャー、人事部長)
嘱託産業保健スタッフ 3名(産業医1名、保健師2名)
注記:
出社日限定で来社
産業医は月3回、保健師は2人交代で週3回

2007年頃にマネージャー向けのメンタルヘルス研修を実施(講師は当時の産業医)。しかし特別に何か対策をしていたわけではなく、メンタルヘルス不調の方がいると、人事労務管理スタッフと嘱託産業保健スタッフとで連携を取り、都度対応していた。

2010年度に入ると全体的に高残業は多くないはずなのに、メンタルヘルス系疾患による休職者が月を重ねるごとに増え、しかも、嘱託産業保健スタッフから「社員の約1割がメンタルヘルス疾患の経験者(完治している人も含め)」と聞き、人事労務管理スタッフはもちろんのこと、社長も危機感を覚え、何かしらの対策を打たなければならないと考えた。

そこで、まずは全社員を対象に、メンタルヘルスに関する知識とストレス対処レベルの底上げを図ろうと、富士ゼロックス総合教育研究所に相談。一次予防(未然防止、健康増進)の観点で、2010年の秋、全社員約500名への研修を実施。

2010年度下期に全社員が参加する「全社方針説明会」で、社長自らが従業員に対して、研修のみならず継続的にメンタルヘルス対策に取り組んでいく表明を初めて行った

2011年度上期には二次予防強化のため、こちらも富士ゼロックス総合教育研究所を介してストレスチェックツールを導入。2011年度下期には社内横断の委員会を結成し、「健康促進」にも焦点をあて検討された施策をトライアルにて実施。現在(2012年度の上期に)レビューを行い、下期には改善を加えた施策を再度展開する予定。

A社で掲げている安全衛生の理念は「職場における社員の安全の確保は全ての業務に優先する」であり、会社は快適な職場環境の形成を促進・提供するが、健康管理については「社員が自ら取り組み、その取り組んでいる活動を会社は支援する」という立場をとっている。そこにはメンタルヘルスに関して言及していないが、メンタルヘルスは「健康管理」に包含されると考えているためスタンスは同じである。安全衛生委員会注1での安全衛生活動においてもこの理念を軸にしている。

注1
安全衛生委員会…労働者の危険または健康障害を防止するための対策などの重要事項について、労使が一体となって十分な調査審議を行う必要があるとして、一定の基準に該当する事業場では設置しなければならないことになっています。
安全衛生委員会に関する詳細は以下リンク先をご覧ください。

A社では、メンタルヘルス研修はあくまでメンタルヘルス対策における第一歩であり、継続して更なる施策を展開していくことを社長自らが全社員の前で表明されました。社長自らが意思表明されることで、メンタルヘルス対策関係者のみならず従業員やそのマネージャーも対策に取り組みやすくなります。さらに、従業員の健康を考える企業姿勢がダイレクトに伝わりやすいものです。
そして、A社では現在、社長の表明どおり、新たな取り組みが展開され、PDCA(計画・実施・評価・改善)サイクルが回り始めています。

3.取り組み事例紹介

3-1.メンタルヘルス研修とその効果について

1クラス約10名~40名で16クラスに分け、管理監督者にはラインケア研修(4時間)を、一般職にはセルフケア研修(3時間)を実施

メンタルヘルス対策の取り組みは企業・組織によってさまざまだと思うが、当時の優先順位として、まずは社員に自分で自分を守る術をたくさん知って欲しかったし、知識のバラツキもなくしたかった。繁忙期と重なることにためらいもあったが、不調者や休職者の状況からして「待ったなし」の状況であった。繁忙期を上手く乗り越えてもらうためにも実施に踏み切った。

全社員にメンタルヘルス研修を受けてもらったのは危機感から

休職者が出ると本人だけでなく休職中にフォローをする周囲も辛いだろうし、会社にとっても損失になる。つまり従業員と会社がLose-Loseになっても、Win-Winには絶対ならない。一時的にでも投資は必要と考えた。

研修実施後に感じている効果

【1】知識を知っているのと知らないのとでは違う

例えば、椅子に座りながらできるリラクセーション法をはじめとしたさまざまなストレス対処法を教えてもらった時も、「そういうやり方があるんだ」と知ることができただけで日常・職業生活を送るうえで違ってくると思った。このような機会でもないと、誰もストレス対処法について教えてはくれないので。

【2】新たなコミュニケーションに繋がりやすい

ペアやグループ単位で話す機会を作ってもらったため、これまで関わりがなかった人と話をするなど、新たなコミュニケーションが取れたのは有益だった。

研修を個々人で受講すると、自学習やeラーニング同様一人で完結しがちだが、他人の考えを聞いて自分の考えの幅を広げられたり刺激を受けたりなど、集団で研修を受けることで別の効果もあるのではないかと思う。

【3】早期発見と対処にも効果アリ!?

研修後は特に、マネージャーが自分のメンバーの様子に違和感を覚えた際、人事労務管理スタッフに「産業医面談を受けさせたい」などの相談が増えた気がする。これまで何となく感覚で行ってきたものが、研修で自分の中に「腑に落ちた」「おさまった」人もいるのではないかと考える。

研修の時期が繁忙期であったにもかかわらず、受講後アンケートからは研修機会や内容に対する肯定的な回答が多く、全体の満足度も高いものでした。
それには、受講者のマインドはもちろんのこと、社員の現状や課題を把握していた人事労務管理スタッフが研修コンテンツの選定から実施に至るまで積極的に関わられたことが大きかったように思います。
また、嘱託の保健師2名とも研修のオブザーブに来られました。社内外問わず関係者間で同じ内容を共有し、対策に活かそうとうする姿勢に共感を抱きました。

3-2.嘱託産業保健スタッフ(産業医と保健師)との連携について

産業医が出社していない日は保健師で対応しており、人事面の対応が必要な場合にはすぐに人事労務管理スタッフに連絡が入る。逆に人事労務管理スタッフが社内(個人や職場)から上がってきた声をキャッチした場合は、保健師に電話やメールで連絡を入れて連携を図っている。

高残業における産業医面談は、産業医の空いている時間帯を対象者に知らせ、面談を設定している

高残業面談は、法令注2に則るだけでなく、1カ月100時間以上の残業もしくは2~3ヶ月の平均残業時間が80時間以上を超えた場合には、時間外手当対象外のマネージャークラスも含め、本人の申し出なくしても注3面談の連絡を入れている。
さらに、上記の時間を超えなくても、月度途中で当月の残業時間を推測し、対象者には産業医面談を勧めている。多忙中に声をかけることがポイントで、そのまま面談に繋ぐことができれば、重要なサインを見逃さずリスクを減らすことができると考えているためである。

注2

【参考】

【関連情報】

企業組織としては(1)の労働安全衛生法のみならず、(2)の新たな労災認定基準の長時間労働の評価視点も大切です。

注3

【参考】

(1)で紹介した資料にも記載されていますが、労働安全衛生法では、時間外・休日労働時間(休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えて労働させた場合においての超過時間)が1カ月あたり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者には、労働者の申し出により医師による面接指導を実施するものとしています。

長時間労働者の医師による面接指導は法令上「労働者の申し出による」こととされています。長時間労働などによる疲労の蓄積、睡眠不足は脳・心臓疾患に関連する医学的なデータも出ています。精神疾患にも無関係とは決して言えません。
従業員のみなさんは、ぜひこうした制度を活用されることをおススメします。

残業時間は客観的なシステムでの把握に切り替えた

残業は今年6月から客観的に時間を把握するために、ICカードの読み取りでタイムレコーダーが打刻される仕組みに切り替えた。翌月10日くらいまでには勤怠のデータが確定するため、そのデータで残業時間を把握し、面談対象者を抽出している。

メンタルヘルス研修の冒頭(挨拶時)にも、必ず人事部長が受講者(つまりは社員全員)に、正直かつ正確に残業時間を申告することを再三伝えていました。
まずは現状を把握しなければ適切な対応に繋がりませんし、仮に申告以上の残業を行っていた場合には会社の責任も問われかねません。
何より残業(つまりは睡眠や休養時間の確保が足りない状態)は従業員の健康に直接影響がおよびやすいものです。事実から目を背けず、直面しようとするA社の経営姿勢は、ここに限らず随所に感じられます。

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