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日本の販売費及び一般管理費(販管費)は高い。結果管理と精神論はマネジメントといえるのか?
----著書『やっぱり変だよ 日本の営業』で旧来型の営業スタイルをストレートに批判した宋文洲氏が、プロセスマネジメントに基づく営業改革を明快な論理で提案します。
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進まぬホワイトカラーの生産性向上 |
トヨタ自動車の張富士夫社長は、私の著書『やっぱり変だよ 日本の営業』には当たり前のことしか書かれていない、とおっしゃいました。問題は、その当たり前のことが営業現場で実行されていないということです。
日米の優良企業について、その損益計算書を比較してみましょう。
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アメリカの大手流通小売店 |
日本の大手流通小売店 |
| 粗利益率 |
21.2% |
37.2% |
| 販管費率 |
16.6% |
28.8% |
| 営業利益率 |
4.6% |
4.8% |
| 純利益率 |
3.1% |
1.6% |
| 売上高 |
28兆円 |
3兆円 |
粗利益率は日本企業のほうが高いのですが、販管費は乱暴に言えばアメリカ企業の2倍です。結果として営業利益率はほぼ同じ、純利益率は逆転してしまいます。
トヨタが世界のトヨタになったのは、製造現場の徹底的な改善があったからです。しかし一方で、ホワイトカラーを見れば日本では明らかに販管費が高く、効率が悪いのです。21世紀は生産効率ではなく、ホワイトカラーの効率によって競争力が決まるとドラッカーは予見しましたが、日本のホワイトカラーの生産性向上はほとんど進んでいません。
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結果と精神の管理からプロセスのマネジメントへ |
インテルのアンドリュー・S・グローブ会長は、その著書の中でパン工場の例を引き、プロセスデザインの重要性について述べています。パン工場には、材料をインプットしてから素材を配合する、生地をこねる、発酵させる、焼く、というプロセスがあります。そしてその各プロセスで、配合の割合やこねる回数などをチェックすることにより、アウトプットとしておいしいパンができる、というわけです。
このプロセスをすべて無視し、おいしいパンかどうかという結果だけを判断すると、職人しか残らなくなります。あの人が焼かないとパンがおいしくない、というのは工場ではなく“工房”です。
皆さんの会社は個人商店ではありません。売れない人はダメ、売れればよくやった、と結果だけを見るのではなく、今の時代、どうすればパンがうまく焼けるのか、そのプロセスを見なくてはなりません。
しかし、日本のマネージャーは結果ばかり管理し、プロセスを営業パーソン個人に任せきりにしています。日本のマネジメントの思想は、一人の人間にすべてを要求しすぎるところが問題です。一人で全部はできない、営業パーソンだけ努力することなど無理なのです。
さらに、日本の営業は情熱で売っています。営業は人間関係だ、酒を飲めば売れるんだ、と言うマネージャーが多いと思います。しかし、皆さんが経営者として何かを購入する場合、あるいは一消費者としてデパートで買い物をする場合、営業が、店員が一生懸命売ったから買うのですか? 売りつけられて買ったものは自分にとって価値のあるものでしょうか?
営業とは売りつけることではなく、お客さまにとって根本的な価値を提供することです。売上やシェアは結果であり、そこに至るためにロードマップ、つまりプ ロセスがあるのです。プロセスを改善せず、売れない営業には「頑張れ!」と精神論で激励する。こうした結果と精神の管理は“マネジメント”ではありません。
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少人数の営業、客観的な情報 |
「のろし」は「狼煙」と書きます。乾燥した狼の糞を燃やすと赤い煙が出ることから、それを合図としたことにその名が由来するそうです。中国の紫禁城では外敵から国を守るため、周囲に高台を築いて兵隊を一人ずつ配置し、敵を発見したら「狼煙」を上げるようにしていました。

図1
見張り台は放射状に築かれ、第一の見張りが上げた狼煙を見て第二の見張りがまた狼煙を上げ、最終的に中央に情報が伝わるという仕組みになっていました。こうすれば、周囲に大人数の軍隊を配備せずとも、少ない数の兵隊で防衛することができます。
長期間にわたって国を維持するには、多くの兵隊を抱えてはいられません。私に言わせれば、営業パーソンの多い会社は絶対にもうかりません。各業界で多少は違いますが、もうかっていない会社は間違いなく営業の人数が多く、販管費の比率が高くなっています。
ある大手化粧品会社の子会社は、設立以来ずっと赤字を続けていました。しかし、営業部隊の半分を親会社に戻した結果、なんと黒字に転じました。これは単なるリストラの成果ではなく、売上が変わらなかったからです。もちろん、従来のやり方で人材を半分にしたら大変ですが、この会社は日報のマネジメントなど徹底的なプロセス改革をしたのです。
少ない人数でもお客さまのニーズを確実につかむ方法はあります。何十社も足しげく通わなくても、お客さまのシグナルはつかめるのです。訪問するだけでなく、電話やメールという手段もあります。それらを活用し、総合的にプロセスを設計しなければ全体は回りません。
ただし、シグナルはノイズではなく、それをシグナルとして見分ける必要があります。狼煙は赤い煙なので、食事を作っている時の煙と誤解しないですみました。しかし、現代では情報そのものは変わらなくても、そこに主観が入ることで誤解が生じることもあります。例えば、同じ用語なのに社内でその理解が異なる場合がしばしばあるように、言葉には限界があります。
 図2
図2にあるような複雑な図形は、それが何に見えるか人によって異なり、伝えようとすると主観的な情報になってしまいます。しかし、これを長方形に分けて数字化すれば、客観的な情報として伝達できます。こうした考え方によって、営業のプロセスも客観的に計測することができるのです。
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プロセスマネジメントのシナリオ |
 図3
私どもの会社で開発した、営業効率を改善するためのソフトでは、携帯やPDAに図3のような質問票を付けました。
1から3は誰にでも入れられる情報です。この3つの情報に基づき、マネージャーが描いたシナリオに沿って、質問票では4から7の質問項目が自動的に決まるようになっています。顧客名にお客さまの名前が入り、そのお客さまは与信状況が悪いとマネージャーがわかっていれば、マネージャーのシナリオに基づいてそれを質問するように項目が出るのです。

図4
質問の答えは営業パーソンが打ち込むのではなく、選択肢から選ぶようになっています。例えば自動車メーカーの営業の場合、進捗状況が「納車」の段階では「購買理由」という項目が自動的に表示され、「スタイル」「価格」などあらかじめ設定された選択肢の中から選ぶ、というように非常にシンプルな設計にしてあります。シナリオを持ち、選択肢を絞り込んでいけば、情報の収集も利用も簡単に、そして客観的になるのです。
マネジメントをきちんと考えれば、このような仕組みができます。成功していない会社はマネージャーがプロセスを考えていないため、あれもこれもと適当に指示するから現場が混乱するのです。したがって、営業活動のPDCAも回りません。
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情報は重要か? |
ITの時代といいますが、情報はそれほど重要なのでしょうか。逆説的になりますが、実は情報そのものが重要なのではありません。ITを使うのはマネジメントです。重要なのは、問題を発見するための「測る化」と、問題解決のプロセスを検証するための「見える化」です。まず、自社はこのプロセスで効果があるのかないのか、測ることが大切です。測るために必要となるのは基準です。そこで主観に頼らない、目に見える基準をつくることが重要になるのです。
日本の情報に対する定義はあいまいです。本当は、何が情報なのか、という確認が大切なのです。その確認作業に必要なのは、経営者にとってはビジョン、マネージャーにとってはプロセスです。それに基づいたシナリオがなければ、情報にはおそらく意味がないでしょう。マネジメントが自ら意識を持たなければ、情報というものは存在しないのです。
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自分を変える |
中国に「刻船求剣(船に刻みて剣を求む)」という故事があります。ある人が素晴らしい剣を持って船に乗り、川を渡ります。しかし、川の途中で急に剣を川に落としてしまいました。そこで、その人は剣を落とした船べりに印を刻みます。川は流れて船は進み、岸に着きます。そして、印をつけたところで剣を探すのですが、そこに剣はない、という話です。
川は流れ、泳ぐ魚の群れが変わり、船の位置も変化しています。環境が変わり、私たち自身も変わっています。皆さんは意外にご自分が変わっていることを認識されていません。環境が変わり、人間も変わる、では何が変わっていないのか、それは人間の頭です。過去の体験と慣習です。そのために、多くの人は新しいことを受け入れるのに抵抗を覚えるのです。
ヤマメとサクラマスという魚がいます。一生を淡水で過ごすものをヤマメ、川から海に下ったものをサクラマスといいます。この魚は海へ下り、一日経っても特別ヤマメと変わるところはありません。三日経っても、十日経っても変わりません。しかし、二年後に遡上して帰ってきた時、300gのヤマメに対し、大海を泳いだサクラマスは3kgに成長しています。
私の本が売れたのは、決して私がおかしいと言ったからではなく、おそらく皆さんご自身が共鳴されたからでしょう。販管費が高く、結果を管理し、お客さまに嫌がられながら根性で何度も足を運ぶ----サクラマスが川にとどまらず海に下って大きくなるように、日本の営業も過去にとらわれず変革が必要なのではないでしょうか。
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