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リピーターを増やして、競争に勝つ!
〜 見込み客を優良顧客化する One to Oneマーケティング 〜

2006年6月


新山 勝利 氏 マーケティング・コンサルタント
新山 勝利 氏

弊社主催「ダイレクト・マーケティング・セミナー」の講演より抜粋
構成・文:X-Direct事務局

著者プロフィール
マーケティング・コンサルタント。研修セミナー講師。顧客満足を高める販売促進、売り場づくりのマーケティングのノウハウを提供。大手広告代理店、マーケティング・リサーチ会社、コンサルタント会社との戦略的な連携で、各種プロモーション、セミナーを手掛ける。著書に「ポスト顧客満足の教科書」「売り場マーケティングの教科書」など。宣伝会議「マーケティング基礎講座」「プロモーショナル・マーケター養成コース」の講師も勤める。

コンセプト/考え方
index
1 ペルソナ法による見込み客の設定
2 顧客の獲得と維持 〜 顧客進化論 〜
3 顧客満足と事前期待度
4 4Pから4Cへ 〜 Amazon.comの事例 〜
5 顧客の生涯価値を重視し、再購入顧客(リピーター)を囲い込む

市場の成熟化が進み、モノが売れない時代と言われるなか、マス市場を対象とした新規顧客獲得だけを狙っていては、販売競争に勝ち残ることはできません。見込み客をどうセグメントして顧客を獲得するのか、獲得した顧客をリピーターとして囲い込み、いかに再購買のサイクルを創出するのか……。顧客の身になって考えたOne to Oneマーケティングを実践することに、その鍵があります。

1

「たった一人の顧客」を見つける

マーケティングの世界において、ターゲットのセグメントを行なうときによく使われるカテゴリーに、年齢層別・男女別による集計区分があります(図1)。たとえばF1層といえば、20歳から34歳までの女性を指します。ご存知の通り、OLに代表されるF1層は一定の収入があり、可処分所得が比較的高い層です。しかもF1層は流行に敏感であり、消費に対して強い影響力を持っているので、企業のマーケティング担当者がこぞって見込み客としてターゲットにしたりしています。


図1:マーケティング集計区分

確かにマーケティング戦略を立てる上で、こうした集計区分を活用するのは大事なことです。しかし、ライフスタイルが多様化した昨今、見込み客を正確に捉えるためには、広範囲な層(マス)を追いかけるマス・マーケティングだけでは不十分ではないでしょうか。

こうしたターゲット・セグメントの対極にあるのがペルソナ法です。ペルソナとは「仮面」を意味するラテン語であり、パーソンの語源でもありますが、一人の顧客像(ペルソナ)からターゲットを明確にしていく方法です。


図2:ペルソナ法にみる仮想見込み客

「顧客ニーズの把握」という言葉を私たちはよく使います。しかし、その前に「顧客」とは誰のことなのでしょうか。自分達にとっての「お得意様」を見極めるために、職業や家族構成、勤務地といった基本事項から、趣味、特技、スポーツ、こだわり、マイカーの有無や車種など、ライフスタイルに関しても細かく設定することで、特定の仮想顧客を決めるのです。こうしたペルソナ法によって「たった一人のお客様」を発見し、そこからカテゴリーへと幅を広げていくことが、見込み客のセグメントとして非常に有効であり、One to Oneマーケティングの出発点ともいえます。

2

顧客進化論 〜 顧客の獲得と維持 〜

顧客というのは、初めから存在するわけではありません。また、顧客の中にはお得意様といわれる優良顧客がいて、そうした顧客を得るには戦略的な仕掛けが必要となります。そのベースにあるのが「顧客は進化する」という考え方です。千葉商科大学の井関利明教授が提唱する「顧客進化論」には、顧客進化のプロセスには大きく分けて「顧客獲得」と「顧客維持」の2つの段階があります(図3)。


図3:顧客進化論

「顧客獲得」の段階では、売上げ実績のない見込み客をどのようにして顧客にするかが課題となります。先述したペルソナ法を活用し、見込み客に対して商品やサービスの価値を伝えるために何をすべきかを考えることが大切です。

顧客を獲得したら、次は「顧客維持」です。得意客、支援者、代弁者・援護者、パートナーという4つの段階がありますが、必ずしもこの通りのステップを踏む必要性はありません。何段階にするかは、商品やサービス、店舗の形態に応じて考えればよいと思います。大切なのは「お客様との関係を深めること」であり、そして最終的に「パートナー」という対等な関係になれればベストです。お客様を紹介してくれたり、商品開発や企画提案にも参加したりするパートナーの存在は、企業にとって大きな利益となります。

また、顧客を進化させるためにはコストがかかりますが、コストを最適に配分することも重要です。企業や店舗の販促活動を見ると、顧客獲得に対してはコストをかけますが、その先の「顧客維持」まではあまり目が向いていません。日本では顧客ロイヤルティの向上に対する意識がまだ低いというのが実情ではないでしょうか。

3

顧客満足と事前期待度

顧客に、リピーターとなって再び商品やサービスを購入してもらうためには、何より顧客満足(CS)が問われます。顧客を満足させ、顧客を維持するために重要なキーワードとなるのが「事前期待度」です。

お客様は商品やサービスに対して、事前期待度という通信簿を頭の中に持っています。通信簿には前回購入したときのイメージが残っており、「いい商品だ」「買ってよかった」という良いイメージもあれば、逆に「お金を払って損した」「買わなければよかった」という悪いイメージもあります。商品やサービスを提供されたとき、この頭の中の通信簿と比較して評価がプラスになった場合は、顧客満足が達成されたことになり、逆にマイナスの場合は不満足となります。


図4:事前期待度と評価

問題は、この事前期待度が常に一定ではなく、状況によって変化するということです。たとえば、ある商品を初めて購入したお客様がいて、顧客満足が達成されたとします。つまり、その商品に対するお客様の評価は、事前期待度(=頭の中の通信簿)よりも高かったということになります。では2回目に購入した場合はどうでしょうか。2回目の事前期待度は、前回の満足を受け、1回目の事前期待度よりも上がります。よって、2回目以降は1回目と同等の商品・サービスを受けたとしても、お客様が満足するとは限りません。また、事前期待度が上がれば、相対的に顧客満足度は下がってしまいます。

さらに怖いのは、購買回数を重ねることによる慣れです。今度は、お客様の事前期待度のほうも下がってきます。そこに競合する商品やサービスが新たに登場すると、お客様の中にそれを試してみたいという気持ちも生じてくるでしょう。

顧客満足度の低下を食い止める対応策としては、見直しや新提案という方法があります。新商品の投入、店舗のリニューアル、限定販売、あるいはお客様に合わせてサービス内容を改定するなど、様々なテクニックがあり、最近ビール会社が発売する季節限定ビールもそのうちの1つです。リニューアルや新商品の投入を行なったときは、DMやニュースレターでお客様に告知するなど、営業的なプッシュ戦略が必要不可欠となります。

4

4Pから4Cへ 〜 Amazon.comの事例 〜

それでは、顧客を獲得し、維持していくためには、どのようなマーケティング戦略を実践すればよいのでしょうか。 ここで、マーケティング・ミックス*1の分類である、4Pと4Cをご紹介します。4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)を指し、1961年にE・J・マッカーシーが提唱した分類です。当時は商品志向、販売志向であり、商品を用意すればお客様は買ってくれるというマス・マーケティングの時代でした。

しかし現在は、顧客志向の時代です。4Pという売り手の視点に対し、買い手の視点で考えることも重要ではないかというのが、80年代にラウターボーンが提唱した、顧客価値(Customer value)、顧客コスト(Customer cost)、コミュニケーション(Communication)、利便性(Convenience)の4Cです。

そもそもお客様は、何に対してお金を支払うのでしょうか。1つには「それを買って良い気分になること(Good Feeling)」、そしてもう1つは「問題を解決すること(Solution)」があげられます。つまり、お客様は商品そのものを買うのではなく、その2つの価値に対して対価を支払うのです。したがって、価格も売り手が決めるのではなく、顧客の得た価値によって決まります。また、事前に商品情報が入手できたりすることや、手軽に購入できたりすることなど、コミュニケーションや利便性の高さもお客様は求めています。

では、21世紀の勝ち組企業とも言うべき、オンラインショップのAmazon.comを例にあげ、リアルな書店と比較しながら、4Pと4Cを便宜的に対比してみましょう(図5)。


図5:4P(書店)と4C(Amazon)

リアル書店の場合、商品は棚にある書籍だけ(Product)ですが、Amazonでは基本的に国内で出版された全書籍をホームページで購入することができます(Customer Value)。リアル書店ではプロモーション(Promotion)はほとんど行ないませんが、Amazonは定期的にセグメントメールをお客様に届けています(Communication)。また、書店で購入した本は自分で持ち帰らなければなりませんが(Place)、Amazonは宅配便というアウトソーシングを活用することで利便性を高めています(Convenience)。

特に、購買履歴に基づくセグメントメールやおすすめ情報の提供は、Amazonの大きな特徴です。つまり、個々の顧客に対応した、きめの細かいコミュニケーションによってお客様を囲い込み、レスポンスの向上を図っているわけです。また、顧客のマインドシェアを高めるために、書籍の全文検索が可能な「なか見!検索」*2というサービスを提供するなど、顧客の利便性を追及しています。こうした徹底したOne to Oneマーケティングのもと、リアル書店では在庫という物理的な制約があって“死に筋”となる商品も販売することで、Amazonは、結果的に売れ筋商品の売上げも伸ばし、日本進出からわずか5年余りで、売上げ800億円を誇るオンラインショップに成長したのです。

*1 マーケティング・ミックス:企業が、狙った市場で目標を達成するためにするために、複数のマーケティング要素を組み合わせること。

*2 2005年11月より国内でも提供を開始した、Amazonで販売されている書籍の内容の全文検索が行なえる機能。検索キーワードがヒットしたページの前後をプレビューする“立ち読み”に相当する機能を持つ。

5

顧客の生涯価値を重視し、再購入顧客(リピーター)を囲い込む

AmazonのようなIT企業だからこそ、One to Oneマーケティング戦略が効を奏し、成功をおさめたのだと思うかもしれませんが、リアル店舗における戦略も基本的には同じです。すなわち、新規の顧客よりも再購入顧客に重点を置き、売上げ高よりも顧客維持率を、製品の市場シェアより「一人のお客様」の中でのマインドシェアを上げることが重要なのです。また、短期的な価値を求めて売りっ放しにせず、顧客の生涯価値を大切にし、最終的にはパートナーシップを結んでもらえるお客様に育てていくこと、そしてその数を増やしていくことが、企業にとっての利益の源、貴重な財産となるのです。

最後に、もう一つの重要なキーワードであるTPO(時、場所、場合)について、道を隔てて出店した大型スーパーと系列コンビニエンスストアの実例をあげましょう。品揃えの多寡や価格の違いはあれ、扱う品目は共通しており、両者の間でお客様の取り合いが起きるのではないかと思いますが、実際には地域を支える店舗として共存しています。なぜそうした戦略が可能かというと、スーパーとコンビニではお客様の利用価値が異なるからです。たとえば、食材の買い置きや家族のものが必要なときは、品揃えの豊富なスーパーに行きます。一方、お弁当やジュースなど、自分がすぐ手に入れたいものを買うときは、利便性の高いコンビニを選びます。極端に言えば、同じ商品であっても、後で使う商品ならスーパー、今すぐ必要な商品ならばコンビニというふうに、お客様はTPOによって店を使い分けるため同じ商圏内でも競合せず、むしろ共存共栄が成り立つのです。

こうしたTPOや4Cを踏まえて、来店や購入を促すメッセージをどう発信すればお客様に届くのかを、顧客の身になって考えながら、自分たちならではの効果的なOne to Oneマーケティングを実践していただきたいと思います。

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