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ドキュメント/文書管理

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ドキュメント 文書管理 バイタルレコード

<連載> 文書管理は意識改革から ― 富士ゼロックスの10年間 ―
(2-1) 「将来収益の保険」となるバイタル・レコードの保護

2008年7月

富士ゼロックス株式会社
総務部 文書管理グループ マネジャー
酒井 英美

酒井 英美 プロフィール
酒井 英美1983年入社、7年間の営業部門を経て、1990年人事部へ異動。1995年 総務部文書管理グループへ移り現在に至る。1997〜1999年 文書管理規程改正ならびに会社情報取扱規程制定に従事。2004〜2005年 全社バイタル・レコード・マネジメント・タスクの事務局、本社部会長。2006年〜2007年本社移転情報コンテンツ部会長。本社移転に関わる中で、統合文書管理システム「Febly」の第1フェーズ開発を推進、2007年5月首都圏に先行導入し、2008年4月1日全社導入。また、2006〜2007年には文書管理規程の改正、文書管理細則の制定に従事。現在、統合文書管理システム「Febly」の第2フェーズの開発を進めるとともに、研究開発生産拠点へ文書管理の展開を推進している。ISO15489国内委員。行政文書管理士。

コンセプト/考え方 事例

バイタル・レコード(企業の存続に関わる「基幹文書」「重要文書」)をいかに定義し、保護するべきか――企業にとって重要な問題です。
前号で、富士ゼロックスが契約書をバイタル・レコードと定義し、保護と活用の両立に努めていることをご紹介しましたが、リスクマネジメントの観点からも「将来収益の保険」として重要です。

index
1 バイタル・レコードとは何か
2 バイタル・レコード・マネジメントの推進ステップ
3 バイタル・レコードの保護は「将来収益への保険」
4 全社バイタル・レコード・マネジメント推進タスクへ活動を拡大


連載の全体概要図はこちら


弊社では、営業部門の契約書をバイタル・レコード(企業の存続に関わる「基幹文書」「重要文書」)と定義し、保護と活用の両立に努めていることを前号でご紹介しました。今回から2回にわたり、バイタル・レコードおよびバイタル・レコード・マネジメントについて掘り下げてご紹介します。


1

バイタル・レコードとは何か

図1は米国の記録管理のバイブルともいわれている本『Information And Records Management』(1996年版)をもとに、当社用に作成した「バイタル・レコード」の定義です。バイタル・レコードは、保有する全文書の2〜7%といわれています。

図1:当社のバイタル・レコードの定義
図1:当社のバイタル・レコードの定義
(クリックすると拡大して表示します)


「基幹文書」と「重要文書」の内容は基本的に同様ですが、「代替の記録」や「文書の入手や再生または復元が可能なもの」が「重要文書」です。この場合には、代替文書の入手や再生にかかる時間および費用との比較において「基幹文書」と同様な保護施策を講じるべきか否かを決定しなければなりません。

当社のバイタル・レコード・マネジメントは、阪神淡路大震災での経験がきっかけになったことは前号で述べました。この観点で、当社独自の定義として追加したのが、図1の「青」文字の部分です。東海地震のみを備えるべき対象として想定した場合には、本社がある東京は震度5程度の被災と考えられるため、致命的な損害には至らないであろうと思われます。しかしながら、首都直下型地震を対象として想定した場合には本社のバイタル・レコードの保護を念頭に置く必要があるためです。

さらに、重要文書の中に、以下の2つの定義を追加しました。

  • 業績推移、事業の変遷、歴史的資産など、企業の存続には直接的には影響しませんが、 『コーポレート・アイデンティティ』(=企業のメモリーという意味で使っています) を維持するために必要不可欠で、かつその喪失または破壊が発生した場合、二度と再生または復元できない記録や文書
  • ゴーイング・コンサーンを保証するために将来事業、将来製品など会社の継続性を確保するために必要な文書。この文書の喪失または破壊により組織は受容しがたいレベルの(将来の)事業リスクを被ることになる文書

業績推移、事業の変遷、歴史的資産などは、現状の事業状態に復旧する上では保護の対象にはならないと考えます。しかし、失ったら、二度と取り返すことのできないため、バイタル・レコードというラベルを貼り、明確に保護の対象と指定したのです。

また、現状の事業の状態に復旧できるだけではなく、将来事業、将来製品などに関わるレコードもバイタル・レコードと指定していています。これは、時間をかけて築いてきたもの、例えば研究や開発の成果などが一瞬の出来事によって「振り出しに戻る」というようなことになった場合、製品開発に遅れを生じることにもなり、その結果会社は競争力を失い、ひいては大事なお客様から見放されることにも繋がりかねないとの考えにもとづくものです。

ところで「バイタル・レコードの定義」のみにもとづいて、各部門で文書の棚卸を行ない、その中から「バイタル・レコード」を抽出するのは、極めて困難であるといえます。
そこで、バイタル・レコードの対象文書例をまとめました(図2)。各部門では、これらの詳細定義と文書例にもとづいて、バイタル・レコードを抽出していくことになるわけです。
詳細定義の中の、赤い文字の部分が当社独自の定義にもとづく文書例です。

図2:当社のバイタル・レコードの対象文書例
図2:当社のバイタル・レコードの対象文書例
(クリックすると拡大して表示します)


しかしこれは、当社の定義ですから、全ての企業に当てはまるとは言えません。例えば当社では、「債権債務確定のための文書」としてお客様との契約文書はバイタル・レコードに指定していますが、これは「継続取引」の根拠文書であり、この文書にもとづいて毎月定期的にお客様から保守・コピー料金を頂戴しているのですから、バイタル・レコードとしているわけです。業務内容によって、バイタル・レコードとする方が良いのかどうかをひとつひとつ検討しなければなりません。

2

バイタル・レコード・マネジメントの推進ステップ

図3は、バイタル・レコード・マネジメントの推進手順を簡単にまとめたものです。

図3:バイタル・レコード・マネジメントの推進ステップ
図3:バイタル・レコード・マネジメントの推進ステップ


第1ステップは、バイタル・レコードの特定で、2つの側面があります。一つ目は緊急対応・復旧回復のための実施項目を挙げ、その実施に必要不可欠な文書を抽出し、バイタル・レコードとして指定するもの。二つ目は、通常の業務で使用する文書のうちバイタル・レコードに指定するもので、その「定義」「考え方」を策定します。最終的にこの2つの面からバイタル・レコードを抽出することになります。

第2ステップとして、第1ステップで抽出したバイタル・レコードを保護します。利用頻度が高いのか低いのかの区別を加え、保護方法を設定することになります。利用頻度が高いバイタル・レコードの場合には、電子化を進め、業務では電子化文書を活用し、原本は免震倉庫へと疎開させています。なお、当社では「電子化」を進めましたが、電子化が最終的な最善の解とは限りません。要は、目的は「原本」を保護することにあり、その必要条件が、業務に支障をきたさないことにあります。
また、最初から利用頻度が低いバイタル・レコードであれば、電子化などをせずに免震倉庫へ疎開させさえすれば保護が完了します。

第3ステップは、バイタル・レコードの維持です。その第一は、最新情報の維持と定期的バックアップ。第二に、新規に発生するバイタル・レコードに対して、適宜、保護施策を打っていくことです。

3

バイタル・レコードの保護は「将来収益への保険」

ここで投資対効果について考えてみます。前号でバイタル・レコードとしての契約文書の効果をご紹介しましたが、以下はリスクマネジメントの観点でみたものです。

図4:リスクマネジメントの視点でみたバイタル・レコードの効果
図4:リスクマネジメントの視点でみたバイタル・レコードの効果


当社は、バイタル・レコードである営業契約文書42万4千件、424万ページを電子化するために1億2,720万円の費用をかけました(文書量、属性情報の付与の仕方によって金額は変わりますが、最低限のレベルのものとしています。なお、文書管理システムやソフトウエア、ハードウエアの費用は含んでいません)。
しかし、この契約書を失ってしまったら、復元しなければなりません。なぜなら、「継続取引」の根拠となる重要な文書だからです。財務情報の内部統制の観点からも、決して無くて済まされる文書ではありません。

この42万4千件の契約書を復元するためには、25億4,400万円の費用がかかると予測しています。一人の営業担当者が、1日10件のお客様を訪問し、その場ですぐに契約書に捺印いただくとの前提に立っていますが、現実的にはかなり甘めの仮定といえます。そして年間200日稼動とすると、1年間に1人の営業担当者が回収できる契約書は、2,000件。つまり、42万4千件の契約書を回収するには、延べ212人の営業担当者が必要となるわけです。この営業担当者の人件費を、付帯人件費を含んだものとして、1人当たり1,000万円とすると、212人では21億2千万円となります。その他に、契約書、収入印紙、交通費などの諸経費もかかるでしょう。これらを1件あたり1,000円だと仮定すると、その他の経費の合計は4億24百万円となります。以上より、復元費用は25億4,400万円と予測しているのです。

その結果、「保護(1億2,720万円)」対「復元(25億4,400万円)」は1対20となります。

しかし、この「復元」の費用の中には営業担当者が、この間に営業をして得られるであろう売上は含まれていません。単純に営業担当者1人あたり年間5,000万円の売上目標値とした場合、合計では約106億の売上相当額が失われることになるのです。直接的に必要となる「復元」費用に、本来の営業活動による売上106億を加算すると131億4,400万円となり、契約書を失った時に「復元」にかかる費用は、「保護」のために必要となる費用の実に100倍以上にもなるのです。

「バイタル・レコード・マネジメント」は将来の収益への「保険」とも考えられるのです。

4

全社バイタル・レコード・マネジメント推進タスクへ活動を拡大

全社で推進するには、きちんとした体制作りが必要です。図5は「全社バイタル・レコード・マネジメント推進タスク」体制を示したものです。

図5:全社バイタル・レコード・マネジメント推進タスク体制
図5:全社バイタル・レコード・マネジメント推進タスク体制


「全社バイタル・レコード・マネジメント・タスク」のキックオフを開催したのが2004年9月。この中で、当該活動の目的、目標、活動方針ならびにスケジュールなどの説明を行ないました。これにより、全メンバーのベクトルをある程度は合わせることができたのではないかと考えます。なお、この目的ならびに目標については、折に触れ何度もメンバー間で繰り返し確認することで認識をあらたにし、タスクが誤った方向へ向かうことを防止できるものと考えます。

図6:タスクの目的/目標/ゴール/成果物
図6:タスクの目的/目標/ゴール/成果物


いかがでしたでしょうか?
次回は、バイタル・レコード・マネジメントの維持運営と今後の課題についてご説明します。



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