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前回は、ある営業部門で自発的に取り組んだ文書管理事例をご紹介しました。このときのノウハウが、2,00名規模での移転における文書管理に活きています。では、具体的に見ていきましょう。
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文化の異なる部門の集結――ワークスタイル変革のチャンス! |
2003年8月の終わりに、「来年1月に、2,000名規模の引越しがあるので手伝って欲しい」と総務部の推進メンバーから私に相談がありました。この規模であれば、引越しの1年から2年前に依頼があるのが普通でしょうし、文書管理構築としても最低でも6ヶ月以上はかかると言われています。たった4ヶ月で何ができるのだろうか、というのが正直な気持ちでした。上司にも相談して一旦は断ることにしましたが、この手の経験をした人は弊社にはいないということで、結果的には引き受けることになりました。
従来の引越しでは、ファシリティや情報システムについてプロジェクトを立ち上げ、作業を実施してきました。ファシリティチームはレイアウトやキャビネットなどについて、また情報システム推進チームはネットワークやサーバーについて環境整備を進めるわけですが、そこに格納される中身の検討までは行なっていませんでした。そこで今回は、情報コンテンツ推進チームを新設し、ハードウエア(キャビネット)やソフトウエア(サーバー内の情報など)に入れる中身を検討することにしました。私はそのリーダーを担当することになりました。
今回は、担当市場が異なるため営業のやり方が違う、いわば全く文化の異なった5拠点の営業部門2,000名が一箇所に集結するわけで(図1)、ワークスタイルを変えられる大きなチャンスでもありました。

図1:5拠点から1拠点に集結
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まずはトライアルとして2部門実施し、現状把握 |
限られた時間の中で実施スケジュールを立てるのに、前号でご紹介した“ある営業部門"の文書管理事例がとても参考になりました。全部門の調査はとても無理なので、協力してもらえる2部門を選び、情報コンテンツ推進チームのメンバー4名で現状調査することにしました。オフィス内のキャビネット、机回りの中に書類、物品、図書がそれぞれどのくらいの量を保有しているか2日間かけて調査しました。
調査の結果をキャビネットのMAP(図2)に落としてみると、オフィスに必ずしも置いておかなくても良いものが50%以上はあることがわかりました。それも2部門ともに同様の結果がでましたので、このデータを基に考えると、「いかに捨てさせるか」あるいは「いかに倉庫へ移すか」が成功のポイントだと確信しました。調査の結果、1人あたりの書類保有量4Fm*(約40,000枚)でしたが、移転後は1Fm(約10,000枚)しか保管できないため、50%の削減だけでは駄目で75%の書類を削減しなければならないという現実をこの時点で突きつけられました。
* Fm(ファイルメーター)
オフィスの文書を積み重ねた量で表す単位。1Fmは100cm。およそ1万枚の書類とみなす。

図2:キャビネットMAPおよび1人あたりの書類量
(クリックすると拡大して表示します)
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持ち込み書類の3箱制限 |
共有のキャビネットの中にも不要文書が散在しており、更には要不要の判別ができないなどの問題がありました。また個人においては、サイドキャビネットの中には本人が過去に作成した資料を捨てるに捨てられない、という現実がありました。今回の書類削減は2,000名全員が同じ意識で取り組まなければ実現できない中、4ヶ月で実行するには思い切った施策が必要でした。持ち込める書類量が1Fm(10,000枚)しか収納できないため、3箱分(1箱約3,500枚程度)しか持ち込めないという発想に立ちました。
しかし、メンバーに徹底するのはそんなに簡単なものではありませんでした。移転説明会で総論は賛成してもらえるものの、個人レベルでは業務上必要な書類を捨てられないという反対派の意見が多数出てきて、当初はとても実現できる状況ではないと感じたものです。そこで、各部門に1人あたり3箱分を渡すので、部門の中で調整して欲しい、と粘り強く進めました。これが結果的に効を奏して、反対派のメンバーも「部門の中で自分だけたくさんの箱が欲しい」という主張は中々できなかったようです。

図3:1人あたり3箱実現のポイント
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営業の4文書(契約書、取引条件申請書、見積書、提案書)にターゲット |
今回は営業部門の移転ということで、営業の4文書(契約書、取引条件申請書、見積書、提案書)に絞り、文書ごとに関係者を集めて検討を進めていきました。ちなみに、これが本社の移転だったら、部門数が多いことから、こうは簡単に文書数を絞ることはできなかったことでしょう。
一番文書量の多いのが契約書で、トータル424万ページありましたが、既に東京支社では300万ページを電子化して、営業の効率化を図っていました(契約書の電子化については5月号をご覧ください)。東京支社以外の部門ではまだ紙の管理であり、現場の営業からも、従来の仕組みを変えることに抵抗がありました。また東京支社の電子化の仕組みもうまくいっていない、との噂も広まっていました。推進している中で痛切に感じたことは、仕組み変更に反対する抵抗勢力はどんな場面でも出るので、どのように納得してもらうかがポイントだということです。
取引条件申請書、見積書、提案書についてもこれまでは部門ごとに管理形態が全く違って、電子化されているところもあれば、紙で管理しているところがあったりと、バラバラな状態でした。控えのコピーをとるのであればスキャンして電子化するのも工程は一緒なので、自動で連番が振られる仕組みを作り、電子化して格納する場所と入力担当者の役割を決めて、展開することにしました。こうした取り組みの結果、管理すべき文書は電子化され、各部門で紙で保管する必要がなくなりました。

図4:紙文書の電子化を推進するための仕組み
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フリーアドレスに再チャレンジ |
5年ほど前に東京支社が移転した時にフリーアドレスにチャレンジしたことがありました。しかしそのシステムは数ヶ月で崩壊してしまいました。パソコンが1人に1台配られ、ワークスタイルの変革を掲げて、フリーアドレスにチャレンジしたのですが、当時は紙を中心に仕事をしていましたから、個人の机の上は紙で溢れ、すぐに崩れるのも当然といえました。
経営陣としては今回の移転で全てフリーアドレスに移行したかったらしいのですが、過去に苦い経験があるだけに営業現場からは強い反対がありました。座席数は、整員数の70%程度にするところを100%にして展開し、かつ自ら手を挙げた部門だけがチャレンジしました。離席する際に机の上にあるものは全て片付けて個人ロッカーにしまうルールで運用しました。今回は、上述したように営業の4文書(契約書、取引条件申請書、見積書、提案書)の電子化が推進され、パソコンさえあれば閲覧できるわけですから、フリーアドレスがすぐには崩れることはありませんでした(図5)。部門長、マネジャーの強いマネジメントと、いつでも書類を閲覧できるデータベースができていることが、このシステムを維持する秘訣であると強く感じました。

図5:移転前のオフィスと移転後のフリーアドレスの姿
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ISMSの取得とショウケース化により維持管理 |
さて、2004年1月に引越しが行なわれたわけですが、その年の8月に営業本部全体でISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を認証取得することが決まり、現場の営業部門には机周りの整理、共有キャビネットの施錠管理、パソコンの管理などが求められました。また、移転先である六本木ティーキューブ(東京事業所)は、おかげさまで日経ニューオフィス賞を受賞することができ、相当数のお客様がオフィス見学に来られていますが、これも維持管理の大きな原動力となっています。
今回の取り組みで書類を75%削減し、フリーアドレスを取り入れた数部門以外は個人の机も幅140cmの個人机タイプから120cmのユニバーサルレイアウト(片側5名の共有机)へと、1人あたりのスペースは減りました。
一方で、以前と働き方が変ったことに加え、ちょっとした打ち合わせや会議をするためのスペースを増やして欲しいという営業の要望に応えることができ(図6)、移転後のアンケートでも営業からは高い評価を得ることができました。
ただ、残念なことに、ゆったりスペースを取って、しかも1人1席を設けていたフリーアドレスを3年後には潰さなければならなくなりました。というのも、業務の関連上、この拠点に移転したい、との要望も多く、当初2,000名だったオフィスも、現在では2,300名に増えてしまったためです。

図6:移転後のオフィス
次回は、本社移転を機会にファイリングシステムを導入した事例を紹介したいと思います。
(次号に続く)
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