災害リスクに強い社会づくり

富士ゼロックスは、東日本大震災をはじめとする大規模災害において、緊急支援から復旧、復興へと現地のニーズが変化する中、地域の方々との対話を大切にしながら活動をしてきました。東日本大震災に対する活動では、被災に加えて、日本が抱える医療や過疎化の問題・課題も浮き上がってきました。「ドキュメントサービス&コミュニケーションを本業とする当社だからこそできる貢献、ソリューション&サービスがあるはず」という信念のもとで、メディアでは伝わらない課題に対しても、当社の提供価値を活かして貢献できることを考え活動を推進してきました。

ここでご紹介するものは、災害リスクに強い社会づくりとして、2019年度までの活動を網羅しております。特に当社の強みを生かして取り組んだ復興支援(含む訪問医療支援サービス)、地方創生支援については、2019年で活動を一区切りとしこれまで連携してきた現地の一般社団法人に引継ぎ、次のフェーズに入っています。今後も地域のニーズをタイムリーにとらえ、当社のコア技術を生かした事業活動を通じ、お客様の事業継続のためのソリューション&サービスの提供により、社会課題の解決に取り組んでいきます。

お客様の事業継続のためのソリューション

お客様が、自然災害や火災、事故など予期せぬ事態に直面し、事業への影響を最小限に抑え、事業の継続や中断した事業の早期復旧を図るためのBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)策定に取り組まれる際の備えとして、当社はICT基盤の構築や重要文書の保管・管理、オフィス機器の節電を含めた突然の停電に対するソリューションやサービスを提供しています。

BCP対策(事業継続計画)ソリューション

震災から学んだ社会課題の解決に向けた取り組み

東日本大震災と熊本地震における復旧・復興支援活動(社会貢献活動)

バケツリレーで気仙沼市気仙沼大島・田中浜沿いの
がれきを撤去

当社は、過去の災害支援の経験から、大規模災害の発生時に行政や自衛隊の救援が届かない被災者に迅速で効果的な支援を行うNGOに対して、資金・モノ・人・情報を提供する重要性を痛感しており、東日本大震災においては復興支援NGOジャパン・プラットフォーム(以下JPF)注1に2億円の資金協力を行いました。この緊急支援としての支援金や社員募金、支援物資の提供、社員ボランティア活動に加え、デジタル複合機の無償貸与、ODP(オンデマンドプリンティング)の仕組みを活用したプリントの支援など、本業を活かした支援活動を行いました。いずれもJPFや医師会、現地販売会社との連携によりとらえた現地ニーズに基づき、有効な支援について考え取り組みました。

東日本大震災への支援活動

実施事項

本業を活かした復興支援 1.複合機貸与 宮城、岩手、東京のNGOに25台、トナーや保守、A4用紙を無償貸与/提供。岩手と宮城の24の医療機関に24台無償貸与。
2.プリント業務支援
  1. NGOで大量に必要とされる各種印刷物を、当社のプロダクションプリンターを活用して180,000枚以上を無償出力。
  2. 移動式オフィスコンビニによる被災証明発行支援、印刷業顧客のビジネス支援、災害対応マニュアルや救援物資リスト、炊き出しの案内チラシなどの出力支援
本業以外の復興支援 3.支援金、社員募金、物資支援 支援金:JPFに2億円
社員募金:3,900万円を被災した社員ならびに地域に寄付
初年度500万円を東北3県の震災孤児などを支援する育英基金に拠出(富士フイルムグループ全体で約6,900万円)、以降も継続。
富士ゼロックスおよび関連会社各拠点で収集した支援物資を現地へ発送(125,700点、2,000万円相当)
4.社員ボランティア派遣
  • 新入社員計744人(2011年度~2013年度)が被災地で復興支援を実施
  • 社員の「ボランティア休暇注2」を活用した被災地支援を実施
  • 注1 特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、国際協力NGOをサポートする中間支援組織。
  • 注2 月間5日まで積立休暇(使用期限が過ぎて失効した有給休暇最高60日分を積立てたもの)を使って短期のボランティア休暇を申請・取得することができる。1993年に導入。

2016年熊本地震への支援活動

復興支援を越えた地域社会の課題解決への貢献(事業活動を含む)

当社にできる支援を検討するため、東北沿岸部の津波被害にあった地域を訪れ、現地の方々から話を聞くところから活動を開始。津波のがれき撤去も未だ手が付いていない状況の中で、仮設診療所を立ち上げ診療を再開している医療機関が少なからずあることを知り、まずは複合機を診療に役立ててもらうための、複合機の無償貸与プログラムを企画しました。岩手県と宮城県の医師会を通じて24の医療機関からの申込みを受け、2011年8月から設置を開始しました。また、同年10月、東日本大震災の被災地の復興、および地域住民の安心・安全なくらしの確保を目指して、社内に「復興推進室」を発足。復興推進室のメンバーは、甚大な津波被害を受けた釜石市と大槌町において、仮施設で診療中のすべての診療所に足を運び、複合機からパソコンの使い方まで、医療スタッフや住民から求められたことに応え続けていきました。

被災地の医療機関向けに在宅医療を支援する「患者情報統合システム」を構築

当社の複合機の無償貸与を通じて皆様との対話を進める中で、限られた医療資源の有効活用とそのための在宅医療の充実・医療従事者の業務負担の軽減が地域医療の課題であることに気付きました。 特に岩手県釜石市では、高齢化に伴い今後重要な役割を担う在宅訪問診療の課題解決に貢献するため、その中心的役割を果たしている、医療法人社団KFC釜石ファミリークリニックの医師や医療スタッフとの1年におよぶ対話や検証を行いました。その結果、紙や電子のカルテなど患者の診療記録を一元管理し、時間や場所を選ばずタブレット端末で患者に関わる情報を閲覧できる「患者情報統合システム」を開発し、2013年10月から本格運用を開始しました。

訪問予定の患者情報をタブレットにダウンロードし、医師が持参。
予定外の患者情報も院内システムにアクセスして閲覧可能。

このクリニックでは、5名の医師が交代で外来診療と訪問診療を行っており、その範囲は釜石市と大槌町の二次医療圏全体をほぼ網羅、1日あたりの訪問件数は医師一人あたり20~30件にのぼります。従来は訪問計画に合わせて看護師が紙カルテを準備し、それらをすべて訪問時に持参していたため、紛失など情報管理上のリスクがありました。また、夜間や休日の緊急の問い合わせの際、十分な患者情報が手元にない状況下で初期判断をせざるを得ないことも多く、24時間365日体制で対応が求められる在宅医療においては、いつでもどこでも安全にすべての診療記録を確認できるシステムが必要とされていました。
本システムを、在宅医療分野で医療現場の方々とともに作り上げたモデルケースとして被災地地域の医療機関に展開するともに、当社の事業を通じ地域医療の課題解決にチャレンジしていきました。

患者情報統合システムの利用シーン

復興支援活動から見えた高齢化社会の地域医療課題の解決に貢献~岩手県久慈医療圏4市町村で切れ目のない医療サービス提供を目指す「北三陸ネット」~

当社は、特定非営利活動法人 北三陸塾(岩手県久慈市)とともに、医療/介護/福祉領域におけるさまざまな情報の連携やバックアップによりサービスの向上を目指す情報基盤「北三陸ネット」を構築し、2016年3月から稼働させました。これにより、岩手県久慈医療圏4市町村の病院・診療所・薬局・介護施設67施設において、住民の診療記録や保険薬局の調剤履歴、介護・福祉現場のケア記録など異なる職種間の情報連携が促進され、切れ目のないサービスを提供できるようになりました。また、紙媒体で記録や保管することが多かった情報を電子化しバックアップすることで、災害に強い地域づくりに貢献しました。

関連情報

宮城県女川町の「自立型コミュニティ形成支援」事業への参画

高台移転による住民同士のつながりの醸成に向けた
懇談会の様子(防災集団移転団地:女川南区)

女川町は、町の主要部にある港湾設備や商店街、住宅が軒並み津波の被害を受けました。震災前から女川町では、行政区(自治会)ごとに構成された住民組織により、日常的な困りごとの解決や、防災訓練、祭りの実施など、地域での協力活動が行われてきていました。しかし、震災による被災、さらにその後の整備により、新たに33の行政区に再編され、これまでとは異なる新たな近所づきあいが始まりました。
当社は女川町からの委託を受け、行政区単位で住民同士の交流を促進する企画を実施しました。今回対象とした11行政区の事情はさまざまでしたが、当社はすでに住んでいる方々とこれから移転してくる方々との交流を図るため、当社のコミュニケーション技術を活用し対話を通じてお互いを知る会を実施しました。
現地では、新たなつながりの形成やこれまでのつながりを維持するための取り組みが求められています。つながりを作り、深め、つながり続けていくために、当社は対話の手法とドキュメントによるコミュニケーションの支援を行いながら、よりよい社会の形成に努めました。

岩手県遠野市おける地域再生の取り組み

まちおこしプロジェクト「みらい創りキャンプ」から「遠野みらい創りカレッジ」へ

自らも被災しながら、震災直後から復興支援の拠点の拠点となり、多くのボランティアやNPO、企業が集まった遠野市も、実は町を活性化し、過疎化を食い止める必要に迫られています。当社の復興推進室とコミュニケーション技術研究所が中心となり、こうした課題を解決して遠野市としての新たな価値を生み出そうと、2012年秋に同市で「みらい創りキャンプ」をスタートしました。

遠野ふるさと村での活発な意見交換

閉校した土淵中学校にて今後の活動について議論

「みらい創りキャンプ」は2012年秋のスタート時から季節ごとに計6回開催され、主に教育文化伝承による地域再生について話し合われました。その具体策の中核が地域再生推進拠点「遠野みらい創りカレッジ」です。これを受けて、2014年4月に閉校した中学校を拠点として、遠野市とその近隣における地域・産業の発展と人材育成に寄与することを目的として、「遠野みらい創りカレッジ」を遠野市と当社の協働で開校しました。産学官の連携により、地域の永続的な生存と成長に寄与することを目指しました。

開校式での遠野市長との協定書の調印

同カレッジは2016年に、より地域に根差した運営を行うため、一般社団法人遠野みらい創りカレッジとして新たなスタートを切りました。「ふれあうように学ぶ場」のコンセプトのもとに、交流・暮らし文化・産業創造の3つの領域で11のプログラムを企画し、それぞれの領域において様々な背景を持つ人たちを交えて共通の課題を解決し行動につなげる活動を行いました。このプログラムの一つ「災害時後方支援自治体研究会」は3回を数え、11自治体の防災担当者が遠野に集まり、地震だけでなく近年増加傾向にある台風や水害などの自然災害に対する備えなどについても活発な意見交換がなされました。また、国内外の大学生と地域の高校生がともに学びあう「イノベーション人材育成プログラム」や、中学校や高校の総合学習支援など、次世代を担う地域人材の育成にも協力しました。

地域における様々な価値観についてSDGsカードゲームによる人材育成

身の回りのものによる炊出訓練

遠野市から南足柄市へ:みらい創り活動の広がり

神奈川県南足柄市は、東日本大震災後に神奈川県が災害ボランティア用宿泊施設(かながわ金太郎ハウス)を遠野市に開設したことをきっかけに、2015年に遠野市と「災害時相互応援に関する協定」を締結、大規模災害時の後方支援や広域防災の研究などに関して交流を続けました。

当社は、「遠野みらい創りカレッジ」で培った当社のコミュニケーション手法やプロジェクト企画・運営ノウハウを活かし、住民が主体となって地域課題解決を目指す南足柄市を支援しました。2015年から南足柄市との協働で、「南足柄みらい創りプロジェクト」をスタートし、対話会では市民からいくつもの活動テーマが生まれました。これらの活動で南足柄の郷土の魅力として「心と体が潤う場」という軸を見出し、市民協働によるまち創り活動、地域創生を牽引する人材育成、心と体に優しい商品メニュー開発、災害時後方支援に関する研究などをテーマに企画・運営しました。2017年に、神奈川県西地区の広域連携による防災・減災の相互支援を目的とした「広域防災研究会」を立ち上げ、2018年は、第一回研究会で浮き彫りになった課題をさらに掘り下げていくとともに、地域住民の防災力強化のための2019年までプログラム開発や実施に取り組みました。

市民対話会の様子(南足柄市役所にて)

ワークショップの様子(大雄山最乗寺にて)

関連情報