浦和レッズ「キーマン」たちの思い/「すべては“忘れ物”を取り戻すために」/阿部勇樹・李忠成

阿部勇樹選手

FUJI XEROX SUPER CUP 2017間近。
「浦和レッズ主将・阿部勇樹が語る、悔しさと継続の先にあるもの」

タイトルを逃がし、呆然と立ち尽くしたチャンピオンシップ

悔しさを一言で表すことなどできない。

2016年12月3日、明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ(CS)第2戦。アウェイの第1戦を1-0で勝利して優位に立つ年間勝点トップの浦和レッズは、ホーム・埼玉スタジアム2002に鹿島アントラーズを迎えた。前半に先制しながらも2点を奪われ、結局はアウェイゴール差によって涙をのむ形となった。静まり返ったスタジアムの中心で、キャプテンマークを巻いた阿部勇樹は呆然と立ち尽くしていた。

「年間1位の勝点を取ってCSに出ることができたのはうれしかったけど、でも何も得たわけではない。CSで勝ったチームが優勝だと決まっていたので、(勝てなかったことに対しては)悔しさしか残らなかった」

継続は力なり。

浦和にとっても、阿部にとっても手応えのあるシーズンではあった。

年間勝点74はリーグ最多タイ。内容に目を向けても失点数は前年の「40」から「28」まで減らしている。阿部は語る。

「過去のシーズンでは我慢しなければいけないところで我慢できずに攻撃に行き、バランスを崩してカウンターを喫して負けている試合も多かった。そういう試合が減ってきたことで、テーマとしてやってきた攻守の切り替えが、ゲームの中でしっかり出せてきたという自負はあります」

昨年10月にはルヴァンカップを制覇した。阿部が2007年に移籍して以来、浦和で初めて掴んだタイトルとなった。

「長い期間、タイトルを取れずにいた。サポーターの皆さんもずっと待っていたものだと思うので、嬉しかったですね。過去に優勝したときも嬉しかったですけど、またそれとは違う喜びがありましたね」

チャンピオンシップを制して2016年シーズンを締めくくるつもりだった。しかしながら、またしてもリーグタイトルには手が届かなかった。勝負は紙一重とはいえ、勝者と敗者では天国と地獄の差。2017年、最初のタイトルを懸けて臨むFUJI XEROX SUPER CUP 2017で、再び鹿島アントラーズと戦える意義を、阿部は強く感じていた。

FUJI XEROX SUPER CUPのタイトルを掴み、みんなで喜び合う

「悔しい思いというのは勝っていくことでしか変えられない。何とか良い状態で、シーズンインしていきたいという中で、FUJI XEROX SUPER CUPは大切な大会だと思っているので頑張りたいですね」

自然と言葉に力が入っていた。

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督体制6シーズン目。ここで鹿島に勝つことが“レッズスタイル”の正当性を証明するとともに、シーズンに良い弾みをつけることになる。

「自分たちがやってきたことを継続して出していきたいし、昨シーズンの最後で勝てなかったというのは何かが足りていなかったということ。それを受け入れながら継続してきたことにプラスをして、足りなかったところを補っていかなければいけない。その意味でタイトルを懸けて鹿島と対戦できるのはすごく楽しみ。悔しい思いを良い方向にもっていけるようにみんなでやっていきたいと思います」

もう準優勝はいらない。

昨年のCSで勝ち切れなかっただけでなく、阿部が加入した07年や14年もリーグ2位で終わっている。ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)でも11年、13年は準優勝。サポーターのため息を何度も聞いてきた。無念を味わってきた。FUJI XEROX SUPER CUPでも07年、15年と2度出場して、ガンバ大阪を相手にいずれも敗北を喫している。ここでしっかり勝ってサポーターと喜びを分かち合うことが彼のモチベーションとなっている。

「自分たちが喜んでいる姿を多くの人に見てもらいたいし、見せなければいけないと思っているので、何とかしたいですね。個人的にはFUJI XEROX SUPER CUPに初めて勝って、みんなで喜び合いたい」

浦和レッズから離れて感じた存在の大きさ。
膨らんできた思い…。

浦和レッズに対する深い愛情。

浦和で3シーズン半プレーした後、海外に挑戦。1シーズン半をイギリスのクラブで過ごし、さまざまな海外クラブからも視線を浴びるなかで、11年シーズンに残留争いに巻き込まれた古巣への復帰を決意。いつも心には、浦和があった。

「11年はレッズの調子があまり良くなかったのでいつも気になっていたし、頑張れって思いながら(結果を)見ていました。タイトルを取れずにイギリスに移籍しましたし、日本を離れる前に浦和駒場スタジアムで試合をしたとき、サポーターから『またここに戻ってこい』という声を多くいただいた。離れてみてレッズの良さをあらためて知ることもできたし、自分にとって大きい存在なんだなって感じることもできた。自分のプレーがしっかり見せられるときに帰って、みなさんの前でプレーしたいという思いがありました」

2012年から「レッズ阿部」の第2章が始まったのだった。

後方から支えていく阿部のキャプテンシー。

新監督に就任したペトロヴィッチ監督の意向を受け、彼はキャプテンに就任。以降ずっとキャプテンマークを巻き続けている。

心掛けているのは、自分に合ったやり方で、チームがひとつになるために何をすべきかを考える、ということ。

「チームが良いときはそんなに心配する必要がない。逆にチーム状況やスタジアムの雰囲気が良くないときには、逆に(自分が)出ていかなければいけない。良くないことがない限りは、あんまり仕事はないんです」

2年前、公式戦で3連敗を喫してサポーターからブーイングを受けると、彼は「ひとつ勝とう!一緒に戦おう」と声を張り上げて理解を求めようとしたことがあった。目を真っ赤にして訴える彼の叫びが、チームを、そして浦和レッズを取り巻くすべての人たちをひとつにした。

阿部選手にとって、キャプテンシーとは。

少し考えてから、彼は言った。

「チームのために戦わなければいけないし、そうなるようチーム全体を持っていかなければいけない。先頭になって引っ張るか、後方にいてはぐれないように支えるかどちらなのかと言えば僕は後者のタイプだし、それが合っている。先頭に立って引っ張っていこうとしてくれている選手は何人かいますからね。
ここ数年、各チームで試合に出ているレギュラーの選手がレッズに来てくれていて、誰もが試合に出たいと思っているなかで、最初に出るのは11人だし、ベンチメンバーを含めて18人しかいない。チームがひとつになって勝っていかないと、目指すものに対してみんなで向かえない。だからその雰囲気も気をつけて見ていかなければいけないというのはあります。誰が元気ないかっていうのは毎日顔を合わせていれば結構わかったりしますから」

後ろから支えつつ、いざとなったら自分が出ていく。

だが、彼はキャプテンとしての責務を重いと感じたことは一度もないという。

「クラブの規模は大きいし、大勢のみなさんの期待もある。確かに『大勢の人の気持ちを背負うのは重そうだね』って言われたこともありましたけど、それはすごく光栄なこと。ポジティブな意味でその重さがモチベーションになっています」

重圧をモチベーションに変え、クラブを大きな括りで一つにさせていく。それが阿部キャプテンの魅力なのかもしれない。

取れるチャンスがあるタイトルはすべて狙いたい

今年の浦和は主力級の選手の補強を行い、戦力をひと回り厚くした。“2017年度版浦和レッズ”のセールスポイントは、やはり継続プラスアルファだ。

「僕らは全員攻撃、全員守備。チームのためにみんなが走り、戦い、同じ方向を見ながら結果を出していく。去年よりもそういったことを徹底してやらないと、目指すものはどんどん逃げていってしまう。得点数、失点数を去年よりもさらに良くしていきたいとは思っています」

そしてFUJI XEROX SUPER CUP 2017を皮切りに、“忘れ物”であるリーグタイトルをはじめとするすべてのタイトルを視野に入れる。阿部は静かに意気込む。

「取れるチャンスがあるタイトルはすべて狙いたいですね。僕自身、あと何年やれるかわからないし、今シーズンはすごく大事な年になると思う。今年は酉年で、年男になるので。後になって、最高のシーズンだったなって言えればいい」

鹿島に敗れた悔しさを、大きなエネルギーに変えて。

FUJI XEROX SUPER CUP 2017から浦和レッズのリベンジが始まる。

(文・二宮寿朗)

李忠成選手

FUJI XEROX SUPER CUP 2017迫る。
「浦和レッズ李忠成が語る、サッカーの神様が与えてくれた試練」

「気持ちと体がマッチして」生まれた2ケタゴール

流れを変える、流れをつくる。

浦和レッズのアタッカー、李忠成に課せられた仕事である。

イギリスのクラブから移籍3年目となった2016年シーズン、彼は浦和レッズで初めてゴール数を2ケタに乗せた。海外挑戦前からの恩師ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもとで、ときにチームの馬力を生み出すエンジンとなり、ときに連動の駒となってきた。ひたむきに取り組んできたことがしっかりと実を結んだシーズンだった。

「やっと李忠成を見せることができたなというのが2016年。気持ちと体がマッチして、ゴール、アシスト、アシスト前の起点と自分のプレーを出すことができましたから。きっかけをつかめた1年になりました」

彼はそう言って充実した顔を向けた。

「みんなと同じ時間、同じ空気、同じ世界にいてはいけない」

李忠成には流れを変えるプレーがある。

象徴的だったのが昨年10月のルヴァンカップ決勝。ガンバ大阪に0-1とリードされて後半31分からピッチに入ると、コーナーキックにヘディングで合わせて同点ゴールを挙げた。ファーストタッチで結果を残し、チームはPK戦を制して優勝。MVPに輝いた李の働きが、07年以来9年ぶりのタイトルを引き寄せたのだった。

「アイツが残り15分で入ってきたら、なんかやってくれるんじゃないかって、チームがポジティブになって足が動いたり、下じゃなくて上を向くようになればいいって、僕はそう思ってやっています。超一流の選手って、時間を止めるというか人が固唾をのむ瞬間をつくりだすじゃないですか。オーラみたいなものが空気を一変させる。それが選手の価値ではないかなって思うので。先発だろうがサブだろうが、結果を出すことには変わりない。もちろん先発で出たいけど、途中出場ならそこから流れを変えられればいい。自分はそれができると思っています」

流れを変えるために大切にしていることとは?

そう問うと彼はひと呼吸の間をつくってから言った。

「僕は客観的に(全体を)見るようにしています。そして先発でも途中でも、みんなと同じ時間、同じ空気、同じ世界にいてはいけない、と。具体的に言うなら人とは違うところを見ていたり、プレーをわざと遅らせたり、逆に速くしたり。同じではないことを常に意識していますね」

周りとは別の時間、空気、世界をつくる。それこそが何かをやってくれそうな期待感を抱かせる李のオリジナリティなのかもしれない。

「合わせすぎない」ハーモニーが、流れをつくる。

そしてもう一つの特長として、流れをつくるプレーが彼にはある。

浦和レッズの1トップ2シャドーは、KLMと呼ばれている。興梠慎三の「K」、李の「L」、武藤雄樹の「M」と3人の頭文字を取ったものだ。KLMのコンビネーションによって流れがつくり出され、的を絞らせない攻撃が成り立っている。

「ペトロヴィッチ監督は『オーケストラ』という表現をよく使います。どの楽器を並べてどんなセッションにして、どんな音にするのかを監督が選ぶ。興梠は興梠、武藤は武藤、自分は自分にしか出せない音がある。チョイスは監督がするので、選手は自分だけの音を、100%出す準備を常にやっておけばいい」

流れをつくるために大切なこととは?

そう尋ねると、今度は間髪置かずに言葉を続けた。

「自分らしさを出し、合わせすぎないということ。だって自分の色がなくなってしまえば、意味がないじゃないですか。そこは11人でやる面白さ。一人ひとりがそれぞれの仕事をしてチームになっていく。もし誰かが合わせなければいけないって気を遣っていたら『合わせなくていいから』って俺は言いますよ」

自分らしくやって、合わせすぎない。それこそが浦和の破壊力ある攻撃のハーモニーを奏でているのである。

李が「昨年で最も好きなゴール」と語ったのが、7月の柏レイソル戦である。パスをつないで攻め立て、後半5分に興梠のリターンパスを受けてループボレーシュートでゴールを奪った。まさに絶妙なハーモニーから生み出されたゴールであった。

「まだ2016年シーズンが
終わってないような気がしているんです」

1シーズン通して積み上げた年間勝点は「74」。李も「そこは誇るべき結果」と強調する。しかしリーグ王者のタイトルは、浦和に振り向かなかった。

あの日のことは忘れない。

2016年12月3日、明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ(CS)第2戦。アウェイゴール差で敗れ、李はベンチで唇を噛んだ。第1戦は先発して1-0で勝利に貢献したものの、激闘によって肋骨を痛めてしまったために出番は訪れなかった。7月の対戦では2ゴールを挙げていた相手だけに、無念の思いが広がった。

「自分のなかではまだ2016年シーズンが終わってないような気がしているんです。ケガはありましたけど、残り15分ぐらいから出て、点を取って同点にして、それで流れを変えて優勝したかった。そういうイメージは持っていたんですけどね」

自分が出て流れを変えることができたら、流れをつくることができたら…。充実したシーズンを最高の形で締めくくれなかったことは、今もなお李に重くのしかかっていた。

FUJI XEROX SUPER CUP 2017を制す意味

FUJI XEROX SUPER CUP 2017はリベンジの舞台であるとともに、李にとっては2016年シーズンを終わらせて新シーズンに弾みをつける意味合いを持つ。

「鹿島はすごく補強しているし、対戦するのが楽しみだなっていう思いが強いです。鹿島というチームは守備が落ちついている。1点取られたところで焦らないですから。それでもレッズはきっかけさえつかめば、どこが相手だろうと、とんでもない力を発揮できると思う。掴めるかつかめないかは紙一重ですけど、今年は絶対に掴みます。

FUJI XEROX SUPER CUPというのは新シーズンの物差しとなる大会。トップがどんな試合をするか、チームがどんな完成度なのか、選手のコンディションはどうなのかを測ることができる試合だと思うんです。シーズンを占う意味でも大きな意味を持つでしょうね」

最初のタイトルであるFUJI XEROX SUPER CUP 2017を制していいスタートを切ることが、先にあるリーグタイトルにもつながってくる。

「昨年、最後の最後で負けてしまったのは、自分たちにはやはり何か足りない部分があるということ。レッズに入ってからの3年間、いつもギリギリのところでタイトルを取れていないのは考えなければいけないし、そこをつかめさえすれば、日本で一番の王者になれる。やっぱり大切なのは、いつもどおりやることではないかな、と。普段と変わらない試合の入り方、運び方をする。すべてはバランスだと思うし、そこが欠如したときに浮き足立ってそこを突かれたりもする。自分たちの力は自分たちが一番良く分かっている。要は自分たちを信じられるかどうか。

昨年のことはサッカーの神様が与えてくれた試練。ありがたく受け取って、未来につなげたい。ルヴァンカップを取って1歩目は踏み出せた。でも2歩目、3歩目を早く踏み出さないと、タイトルを取ることが難しくなってくる。だから今年は何が何でもリーグタイトルを掴みたいんです」

優勝のためには、流れを変える、流れをつくる李のパフォーマンスがカギを握ることは言うまでもない。

彼の目は、光を帯びていた。

「まずは10得点、10アシストが目標ですけど、去年以上の結果を求めていきたいですね。世界を相手にしていたときや海外クラブに移籍したときの感覚が100とすれば、まだ90ぐらい。100、いや110と突き抜けていければ、レッズのタイトルも自然と近づいてくるはずなので。先発でも途中からでもタイトルを取るための原動力になりたいと思っています」

交響曲のクライマックスはきっと2017年に待っていると、李忠成は信じている。

(文・二宮寿朗)

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