ハイライト3 貧困地域の児童に学ぶ機会を提供する

次世代へつながる富士ゼロックスニュージーランドの取り組み

児童が初等教育の機会を得られないことは貧困の連鎖を生み、地域社会の発展を阻害する。富士ゼロックスが事業展開をしているアジア・パシフィック地域では、経済的事情で教育を受けられない児童がまだたくさんいる。こうした児童の学習機会を増やすために、株式会社学研ホールディングス、NGOガワッ・カリンガ※1と協働して、学習準備段階の児童に教材を提供する新たな社会貢献活動をフィリピンで開始した。企業、NGO、地域コミュニティーが連携することで効果を最大化し、未来を支える人材の育成に寄与したい。他企業やNGOとの連携によって地域社会の教育ニーズに対する新たな貢献の形に挑戦する富士ゼロックスの活動を報告する。

富士ゼロックスが本プロジェクトで教材の配布を目指す児童数 アジア・パシフィック地域において10年間で10万人
フィリピンにおいて10年間で3万人
フィリピンの人口 96,707千人
フィリピンにおいて1日$2以下で生活する人口の割合 41.5%注3
フィリピンにおける小学校入学率 89%(男女平均)注2
上記のうち、最終学年まで到達する児童の率 76%注2
NGOガワッ・カリンガ注1がフィリピン全土でサポートしている人々 2,000コミュニティー/60,000家族
  • 注1 ガワッ・カリンガ(タガログ語で「気にかける」を意味する):フィリピン全土でスラム街住民の自立促進による貧困撲滅を目的とした住居建設プロジェクトを推進するNGO。富士ゼロックスフィリピンはこの活動に参画、2007年マニラ郊外のタギック市に富士ゼロックス・ガワッ・カリンガ・ビレッジを建設。
    関連記事:サステナビリティレポート2009「互いに支えあって社会をつくる」
  • 注2 ユニセフ(国連児童基金)「世界子供白書2014統計編」
  • 注3 世界銀行「世界開発指標」(2014年7月更新、該当項目は2009年調査結果)

新興国における初等教育の現状

国連ミレニアム開発目標の一つに「初等教育の完全普及の達成」がある。世界には貧困や社会事情により初等教育を受けられない児童があふれている。初等教育の欠如は貧困の連鎖をもたらし、地域社会の持続的な発展を阻害する。富士ゼロックスが事業展開するタイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマーなどにおける初等教育の修了率(最終学年到達率)は、ユニセフ世界子供白書によると75-90%台にとどまっており、「完全普及」には程遠い状態にある。
企業理念に「世界の相互信頼と文化の発展」を掲げる富士ゼロックスにとって、これらの地域の教育格差の問題は、非常に重要なテーマだ。

フィリピンでプロジェクトを始動

ワークブック配布の様子

富士ゼロックスは2014年、児童の教育格差解消を支援するための教材提供プロジェクトをフィリピンで開始した。
マニラから2時間ほど車を走らせたブラカン州タワービル地域には、マニラ都市部で暮らしていた不法占拠住民に対し、政府とNGOガワッ・カリンガが協力して移住を促し建設されたビレッジが現在34あり、拡大を続けている。今回はこの地域の5歳前後の児童450人を対象に英語の自学習ワークブックを提供した。
現地で贈呈式および地域住民や彼らを支援するボランティアらへの説明会を6月に行った。贈呈式には、会場付近に住む120人の児童とその親や関係者総勢250名余が参加した。大人たちが見つめるなか児童は歌と踊りを披露、早速配られたワークブックを開いて熱心に見入る子もいた。

各社の強みと想いをつなげる

富士ゼロックスは、これまでも「将来世代」「教育」をテーマとしたさまざまな社会貢献活動を継続してきたが、2013年、改めて「将来世代の人材育成」を社会貢献活動の重要テーマの一つと位置づけ、本業を活用した新興国への教材提供プロジェクトを開始した。
教材提供と言っても、富士ゼロックスが単独で行うには内容的にも量的にも限度がある。そこで、将来世代の教育に役立ちたいと願う共通の想いを持った企業や団体と連携し、それぞれの得意な面での協力を得ることで、学習を必要とするより多くの児童に教材を届ける長期的な仕組みの構築を狙っている。具体的には、現地NGOがニーズ把握や配布対象者の特定を行い、教材部分はコンテンツパートナーを、印刷などにかかるコストはフィナンシャルスポンサーを募ることで、提供する教材の充実とともに量的な拡大を図り、今後10年間にアジア・パシフィック地域で10万人の児童の支援を目指す。

教材提供プロジェクトの目指す仕組み教材提供プロジェクトの目指す仕組み

株式会社学研ホールディングス
CSR推進室長
吉岡 史雄 氏

今回のワークブックは、英語の自学習コンテンツを株式会社学研ホールディングスが提供し、フィリピンのNGOガワッ・カリンガが現地ニーズに合った内容かの確認と提供すべき地域・児童を決め、当社のプロダクションプリンターを導入しているフィリピンのパートナー企業が出力することで実現した。富士ゼロックスはそうした活動の全体をコーディネートし統括した。
今回英語の自学習コンテンツを提供した株式会社学研ホールディングスCSR推進室長の吉岡史雄氏は語る。「自社の強みを活かして社会に貢献するという点に共感しました。我々の生業である“教材コンテンツの提供”という形でかかわることで、アジアの子どもたちの手に渡るワークブックがより充実したものになる。これは我々にとっても嬉しいことです。」

富士ゼロックスフィリピン社長(当時)阿部盤と議論するベン・コリャンテス

富士ゼロックスフィリピン社長(当時)の阿部盤は、本プロジェクトの拡大を強力にリードする。同社のお客様フェアで本活動を発表し「教育が行き届いていないフィリピンの児童たちのために、地域社会に対する我々企業のコミットメントをつなぐプロジェクトです。活動を広げるために、ぜひ皆様のご協力をお願いしたい。」と訴えたところ、複数のお客様からスポンサーとして協力の申し出があった。予想以上の反響に、本プロジェクトの推進スタッフであるベン・コリャンテスは喜びの声をあげた。「みなさんの気持ちを確実に形にし、子どもたちに届ける責任をひしひしと感じます。より多くの社員やお客様を巻き込んで、この活動を拡大していきたい」と意気込む。お客様は製品のユーザーにとどまらず、価値観を共有して地域社会の発展に貢献する「同志」となった。

継続することの意義

ビレッジの代表たちへの説明会の様子

このプロジェクトは、一回ワークブックを配って終わりではない。継続的な支援により、社会に変化をもたらすことを狙っている。
タワービル地域のガワッ・カリンガ教育支援活動リーダーのマリッサ・アパタンさんは言う。「入学しても、教材がなく勉強についていけずにつまらなくて学校をやめてしまう児童はたくさんいます。入学前に学ぶ習慣を身につけ、学ぶことの楽しさを味わい、自信を持つ。
これが将来の道を開くことにつながると信じています。」また同地域で幼児教育プログラムのボランティア教師を務めるリディア・テヘレロさんは、「富士ゼロックスは『次のワークブックを持ってまた来る』と言ってくれた。継続的な支援が何より嬉しい。」と笑顔で話す。
継続的な支援や対象児童の拡大には、ワークブックが有効に使われるための工夫が不可欠である。富士ゼロックスとガワッ・カリンガは、各ビレッジの代表に対し贈呈式前に説明会を行い、どうしたらそれができるかを議論した。マリッサとリディアは次のように提案した。「学習に慣れない児童や家庭が多いので、週に一度、ワークブック学習のために児童に集まってもらう場をつくろうと思います。皆で取り組み、楽しさを感じてもらいたい。この仕組みを、目標とする450人に確実に提供できるよう、他のボランティアにも働きかけます。」

ワークブックを持ちほほ笑む親子

ガワッ・カリンガ本部スタッフのマット・ベルガラは言う。「ボランティアの教師、ガワッ・カリンガ、協力企業がかかわりを深めることで、子どもたちに学習の習慣を定着させその先の教育につなげることができると信じています。何より、皆さんが継続的にかかわってくれることが、子どもたちと地域社会にとって勇気の源となるのです。」
6月の説明会と贈呈式には、富士ゼロックスフィリピンの社員22名がボランティアとして参加し、会場設営や来場者の受付、児童の誘導を行った。2007年の住宅建設プロジェクトにも参加したレオ・アキノは、「こういう活動を会社が牽引することを社員として誇りに思う。今後もぜひ協力したい」と主張する。また、ロロッ・ドミンゴは「今回一緒に連れて行った娘から、『今度はいつやるの?また参加したい』と言われました」と打ち明けた。社員ボランティアを統率した同社のヴァイス・プレジデントのジョン・デュレイは、炎天下の贈呈式でテキパキ動く従業員を眺めながら目を細めて言った。「貧富の格差という矛盾を抱えた社会ですが、企業がボランティアを推進し社会とかかわる機会を設けることにより、従業員同士が目的を共有し、一体感が強まり継続のエンジンになるということを確信しました。」

今後の挑戦

富士ゼロックス株式会社
常務執行役員
本多 雅

富士ゼロックスは、2015年度以降、このプロジェクトをアジア・パシフィック地域の他国に同様の仕組みで順次展開を目指す。アジアパシフィック営業事業担当の常務執行役員本多雅は語る。「私は17年間アジア各国を回り、多くの国で貧富の差を実感してきました。我々がビジネスを行う社会の痛みを感じ、その矛盾に向き合い、当社の得意分野で少しでも貢献したいと願う社員は、私に限らずたくさんいます。このような活動に社員がいきいきとかかわって社会との架け橋になり、行動力や心の豊かさを伸ばしてくれることは、私にとって大きな喜びです。また、我々のプロジェクトで支援した子どもたちが成長し、やがて自分たちもフィリピン社会に貢献したいと思ってくれたら、そしてそれが他のアジア諸国にも正の循環として広がっていったら、こんな素晴らしいことはありません。同じ想いを持つ方々に呼びかけ、継続的に子どもたちを支援できる仕組みを定着させたい。私もそのための努力は惜しみません。」
ドキュメントサービス&コミュニケーションを生業とする富士ゼロックスが、地域社会やお客様と連携することによって社会に大きな変化をもたらす。社会貢献への新たな幕が開けた。

ガワッ・カリンガ共同創設者
アントニオ・メロト 氏

社会の底辺に生まれた人々が自立するには、人間としての尊厳と自尊心を取り戻すことが必要です。ガワッ・カリンガが始めたスラム住民のための住宅建設は幸い軌道にのり、着々と拡大を続けています。次の大きな目標は、安定した就業機会を貧困層出身の人材がつくれるようになることです。教育はすべての基礎であり、富士ゼロックスの継続的な協業の申し出は、次世代を担う小さな子どもたちに夢を追う機会を与える点で、非常に意義の大きい貢献です。
フィリピンの年齢の中央値は23歳です。今まさに成長しようとする中、より多くの企業に、フィリピンが真の自尊心を持つ国になるための将来世代への投資を行っていただきたい。必ずやリターンがあるはずです。

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