第三者意見

足達英一郎氏
株式会社日本総合研究所 理事

2014年度版に引き続き、2015年度版の富士ゼロックスおよび関連会社のサステナビリティ報告を拝見しました。2014年度版では、大きく二つのことについて要望をさせていただきました。

第一は、「CSRは経営そのものであるという信念のもと、言行一致でお客様の価値創造をお手伝いする」というメッセージに関して説得力を高めてほしいということでした。2015年度版では、①価値創造に向けたプロセスが明確に図示されたこと、②富士ゼロックスの提供価値が具体的に特定されたことが目を惹きました。こうした一貫性ある論理展開の中で、トップコミットメント経営重点テーマの具体的取り組みハイライトと題した事例紹介が位置づけられている構成は読者の理解を助けるものになったと感じました。

第二は、「より良い世の中とはどういう姿か」についての積極的な発信をしてほしいということでした。この点については、①富士ゼロックスが取り組むべき社会課題が具体的に明示されたこと、②富士ゼロックスの経営重点テーマがステークホルダー別に再設定されたことが目を惹きました。加えて、価値創造の姿の変遷と題して、社会に提唱してきた「価値基準」を整理していただいたことは、御社の将来に向けた事業の成長に対する読者の期待感を醸成するに十分なものになったと感じました。

そのうえで気づかされたのは、「取り組むべき社会課題」と「提供価値」とのあいだには明確に橋が架けられ、関係づけがなされているのですが、それを従来ある事業セグメントやステークホルダー別の枠組みで開示しようとすると、やや据わりの悪い印象を有してしまうということでした。これは、「取り組むべき社会課題」や「提供価値」別に事業セグメントが規定されているわけではなく、ステークホルダー区分とも一対一に対応しているわけではないことから、いわば当然の帰結なのですが、事業とCSRの統合を強く意識した情報開示を行おうとするときの大きな課題でしょう。富士ゼロックスの成長を支える技術に関する開示も、これ自体は興味深く拝見しましたが、各々がどの「取り組むべき社会課題」や「提供価値」に対応しているかという全体像は把握しにくいところが残りました。

各ステークホルダー別の取り組みの開示部分では、①目指す姿、②基本的な考え方、③昨年度活動の実績、④今年度活動の概要、⑤事例という構成での開示が定着しており、読みやすく、要点も掴みやすいという印象を持ちました。さらに、主要なCSR指標に関する開示部分は、富士ゼロックスおよび関連会社においてPDCAが機能している状況を知る有力な手がかりとなるものです。こうした網羅的なCSR指標を進捗管理されていることを評価いたします。

一方で、2015年度版ではウェブサイトにおける開示部分を含めて、取り組み成果の遅れが気になるところがいくつかありました。例えば、①部品リユースによる新規資源投入量の抑制、②VOC排出量の増加、③国内の関連会社における従業員1,000人あたりの労働災害の件数の増加、④海外の関連会社における役員および管理職に占める女性の割合の低下などがその例です。富士ゼロックス連結での社会貢献活動支出額が減少していることも含めて、その背景にある要因をきめ細かく説明していただければありがたいと感じました。

繰り返しになりますが、2015年度版では、事業とCSRを統合した経営プロセスを明らかにしようと、意欲的なチャレンジをいくつも試みられました。紋切り型の「重要性の特定」といったものではなく、自社の「取り組もうとする社会課題」と「提供しようとする価値」を真摯に議論されたことに敬意を表したいと思います。今後も、個性と先見性のあるサステナビリティレポートを継続して発行していただけるよう期待申し上げます。

このコメントは、本報告書が、一般に公正妥当と認められる環境報告書等の作成基準に準拠して正確に測定、算定され、かつ重要な事項が漏れなく表示されているかどうかについて判断した結果を表明するものではありません。

サステナビリティレポート2015アンケート