ハイライト2 地域のために、地域と共に

[ハイライト2 地域のために、地域と共に] グローバルも視野に地方創生を後押しする

2030年に、現在の人口1,300万人の1割が減少するとされる九州。
島しょ(離島)を抱える自治体数が全国自治体の3割に上るなど、活性化には厳しい現実を抱えた地域でもある。
一方で、明日を信じて動き出したメンバーもいる。
「地域のために、地域と共に」の合言葉のもと、九州の統轄販売会社である富士ゼロックス九州と九州各県に展開する販売会社・特約店、そして富士ゼロックスの研究開発機能が力を合わせて進める地方創生支援は、各地のコミュニケーションを活性化させ、グローバル展開の支援を含め着実に歩みを進めている。

過疎市町村数(全国)
(出典)総務省 過疎地域市町村等一覧(平成27年4月1日現在)、総務省 都道府県別市町村数の変遷(平成26年4月5日現在)をもとに算出
797
(全国の市町村に占める割合: 46.4%)
過疎市町村数(九州)
(出典)総務省 過疎地域市町村等一覧(平成27年4月1日現在)、総務省 都道府県別市町村数の変遷(平成26年4月5日現在)をもとに算出
144
(九州7県の全市町村に占める割合: 61.8%)
島しょを抱える自治体(全国)
(出典)日本離島センター 離島統計年報(2013年)
139自治体
島しょを抱える自治体(九州7県)
(出典)日本離島センター 離島統計年報(2013年)
46自治体
(全国の33%)
島しょを抱える自治体(富士ゼロックス九州の管轄となる九州7県 + 山口県 + 沖縄県)
(出典)日本離島センター 離島統計年報(2013年)
75自治体
(全国の54%)

観光音声ガイドでつながる九州

富士ゼロックス九州株式会社
ソリューション・サービス
第二営業部広域ソリューションSEグループ
グループ長
猿川 容一

富士ゼロックスは現在、地方創生を支援する取り組みを産業全般、特に観光や人材育成(教育)の分野で展開している。活動は、コミュニケーション技術を基軸に据えており、国が掲げる地方創生も追い風に、各分野で光を放ち始めている。その中で先頭を切っているのが九州の取り組みだ。

富士ゼロックス九州は、2012年7月、富士ゼロックスが地域のお客様ニーズに根ざしたソリューション・サービスを提供するため、全国6地域に設立した統轄会社の一社。現在、社長 宮崎晋一のリーダーシップのもと、地域の発展に貢献しようとの動きも目覚ましく、その活動の一つが観光音声ガイドサービスの提供だ。2013年4月、宮崎は観光を切り口に九州ならではの地域活性化を推進しようと考え、市場調査と提供可能なソリューションの検討をソリューション・サービス第二営業部広域ソリューションSEグループ長の猿川容一に指示した。

そこで目をつけたのが、「観光音声ガイドサービス」だった。これは、GPS情報を検知し、徒歩でガイドポイントに近づくと携帯端末から自動で音声ガイドが流れてくるもの。研究技術開発本部コミュニケーション・デザイン・オフィスが長年にわたり研究し、観光客に向けて専用端末を貸し出しする形態で鎌倉や大磯など主に関東近県の観光地で実証実験をして高い評価を得ていた。そして、2013年7月には新規事業開発部が「観光音声ガイドサービス」として商品をリリースした。時代はちょうどスマートフォンの普及期。「利用者が限られる専用端末だけではなく、スマートフォン用にアプリ化して世界中の方々にサービスを届けることがさらなる魅力につながる」と、新しい商品「SkyDesk Media Trek」(2014年1月商品化)の開発にも着手していた。

宮崎の指示を受けて猿川ら4人のチームは、観光に関係のある地元の鉄道、官公庁、観光施設などを回り、「なぜ富士ゼロックスが複写機ではなく、そんなことを」と決まり文句のように言われながら「私たちはコミュニケーションにかかわるソリューション・サービスでお客様の役に立ちたいんです」と粘り強く可能性を探り続けた。しかし、1年間ほどは目立った成果がなかった。

変化は2014年に起きた。関西の温泉地で実証実験を行っていたお客様の紹介で黒川温泉(熊本県)を訪問し、ウォーキングイベントのデモ使用を認められたことがきっかけとなり、同年6月、ついに本採用が決まったのだ。

「あの黒川が採用したんですか」

その効果は絶大といえた。日本語と英語にも対応し、一般のガイドブックや地図では知ることができない地元の魅力が音声ガイドに盛り込まれるなど、かつてない誘客ツールとしての注目度が一挙に高まると、訪日外国人観光客増加にともなう受け入れ環境整備の流れにも乗り、福岡県北九州市、西日本鉄道株式会社、福岡県中間市、熊本県玉名市、長崎県壱岐市、鹿児島県霧島市など次々に採用を決めていった。現在は9地域に提供し、さらに広がりを見せている。

スマートフォンのアプリ化を実現することによって、地方で、例えば農産物の販売、観光PRをしようにも、多言語化や外国への発信ができないなどの壁を解消することができるようになった。地域にはいろいろな資源がある。見向きもしなかった所が外から見れば魅力だったり、地元ならではのお宝情報も多い。そうした資源にきちんと光を当て、観光における社会インフラを目指す道筋が見えてきた。

「開始されて間もない地域が多いですが、外国人の満足度が上がるなどの導入効果を聞いています。それよりむしろ、もっといろいろなコンテンツがほしいといった声が印象的です。お客様の期待に応えるとともに、これから九州全県に導入し、地域の発展に貢献するのはもちろん、県間をつなぐ広域観光ガイドなど『一つの九州』として全体を盛り上げていけたら素晴らしいですね」(猿川)

SkyDesk Media Trek構成図

「対話」を通した壱岐のみらい創り

観光音声ガイドサービスは2016年4月から壱岐市にも導入されている。しかし、この地と富士ゼロックスの関係はそれだけではない。

観光客誘致、人口増につながる新しい産業の育成、住みやすいまちづくりを目指した「壱岐なみらい創りプロジェクト」と呼ぶ市民主導型の活動が、地元に新たな希望を与えている。住民同士の「対話」を通じて「地域が抱える真の課題」を抽出し、それらを解決するためのテーマ化とアクション。このプロセスを経ることで、住民には自ら主体となって課題解決に取り組む能力が育ち、住民主導の活性化活動が循環し始めている。

最初のプロセス、「対話会」における人々の真意を引き出すための手法は当初、多くの住民に戸惑いを持って迎えられたが、いったん本音の発言が始まると、それが呼び水となって次の本音が引き出されていく。

「対話会を通して、自分自身の過去の体験を見つめ直しながら、自分が大切にしてきたことに気づく。そして、他の人が大切にしてきたことにも耳を傾け、共感の中でつながりながら、本当に自分事として、今、取り組みたいことが浮かび上がるのを待ちます。このようにして新たなテーマが生まれてきました」

富士ゼロックス株式会社
研究開発本部
コミュニケーション技術研究所
湯澤 秀人

そう話す開発責任者、富士ゼロックス研究技術開発本部コミュニケーション技術研究所の湯澤秀人によると、この技術は複数の世界的理論を背景に、「禅」の思想までも根底に置いているという。人々がいきいきと自分たちのまちづくりを描き始めている「遠野みらい創りカレッジ」注1での経験が開発に活かされている。

そして、2015年11月から2016年3月までに開催された5回の対話会で、「学びの島・壱岐」「壱岐の巡礼」「壱岐の農業活性化」など9テーマが設定された。自由参加にもかかわらずのべ609名が参加し、大半は市民だが、県外企業からの参加者も90名に上った。そして何より、壱岐市長 白川博一氏をはじめ関係者が目を見張ったのは、市民の半分以上が地元の高校生を中心とする学生だったことだ。

  • 注1 遠野みらい創りカレッジ:岩手県遠野市と富士ゼロックスが共同運営する、遠野市とその近隣における地域・産業の発展と人材育成に寄与することを目的として2014年に開校した学びの場。
富士ゼロックス九州株式会社
広域マーケティング部長
高下 徳広

「地元の高校生が対話会の司会をすすんでやるなど、若い力が本当に頼もしい」そう話すのは、プロジェクトリーダー、富士ゼロックス九州広域マーケティング部長の高下徳広だ。彼は、「壱岐を日本の先進離島モデルにしたい」と本気でぶつかってきた壱岐市役所 企画振興部地域振興推進課 地域振興推進班係長の篠原一生氏の言葉を受け、「自分に壱岐を任せてほしい」と社長の宮崎に訴え、現地に移住までして活動する熱血漢だ。そんな高下は今、地元の変化を肌で感じている。

テーマの一つ「学びの島・壱岐」を具体化した研修プログラム「明日の仕事の仕方を考える研究会in 壱岐」に参加した社会人は、与えられた課題を解決しながら「自分を変える力」を体験する歩行ラリーを通じ、「経験値からくる先入観や自信に対し、いったん立ち止まって考える大切さを学んだ」「同じルートでも視点を変えると全く違うルートに見えてくる」など「変化」を体験できたという。こうした「人材」が資産となって、地域に根づいていく。

また、高校生の一人で、テーマの一つ「あいさつによる地域活性化」のプロジェクトリーダーは、「まだ始まったばかりですが、少しずつでも未来が見えるようになっていけばいいと思います」と語る。段ボールで作ったプラカードを掲げながら、歩行ラリーの参加者を笑顔で応援していたのも、自分たちの強い意志で未来に向かう行動の表れだ。「突然、初対面の高校生から挨拶され、『壱岐に来ていただいて本当にありがとうございます』と感謝の気持ちを伝えられたりすると、何よりうれしいですね。住民から生まれる地方創生のソリューション。その貴重な瞬間を体験できています」(高下)

歩行ラリーの参加者を笑顔で応援する高校生たち
古代の雰囲気漂う壱岐の地で「自分を変える力」を体感し、未来に目を向ける地元の住民と、ほかの皆さん

九州発、グローバル展開の支援も加速

今、九州では、こうした観光支援、地域の未来創り支援のほか、地元企業が海外で商談会に参加する支援、大学・企業の人材を富士ゼロックスの海外拠点がインターンシップなどで受け入れるグローバル化支援、中小企業のものづくり支援など、地域のニーズに根ざした多角的な支援事業を展開中で、今期以降もさらなる新事業の追加を視野に入れている。

2015年初頭に始まった海外での商談会支援案件は早くも4件を数え、その中では、大手地方銀行と組み、同行のお客様である企業とタイの現地企業をマッチングする機会をバンコクで提供したほか、壱岐の企業向けには富士ゼロックス九州が独自に韓国や台湾で商談会を開催するなど、九州の企業が広くグローバル展開する後押しをしている。

また、商談会で紹介された観光音声ガイドサービスが現地企業に注目されるなど、支援策同士が相互に結び付きながら各地域に最善のソリューションを提供する形も見え始めている。

もちろん地域の未来創り活動も同様の課題を抱える他の自治体に広がっている。壱岐に続き、宮崎県椎葉村での展開も決定し、富士ゼロックスのメンバーたちも動き出した。

富士ゼロックスによる九州の地方創生支援は始まったばかりだが、観光、産業、そして人づくりやグローバル展開も含めた広範な活動は、地元を輝かせ、共に歩む富士ゼロックス社員をも輝かせている。

富士ゼロックスが地元企業を応援するために開催した海外商談会(台湾)

壱岐市長
白川 博一氏

壱岐市の人口は1955年の5万2,000人をピークに、現在は2万8,000人まで減少しました。しかし、進学や就職でいったん島外に出ても、将来はまたここに帰ってきたいと思ってくれる子どもたちが7~8割もいるという事実は、この島の希望です。「壱岐なみらい創りプロジェクト」にたくさんの高校生が参加してくれているのは、大好きな壱岐を自分たちの手で変えたいという強い気持ちの表れなのでしょう。同時に、行政ではなく住民主導によるこの取り組みは、離島活性化にたくさんのヒントを与えてくれると思っています。

離島であるがゆえに、輸送コストの高さなどハンディもあります。一方で、大小1,000社もの神社や美しい自然などの観光資源、豊かな農水産資源、福岡から1時間の距離、ICT(情報通信技術)の普及、スポーツ拠点としての環境など、地域が発展するうえでのポテンシャルも非常に高い。まさに「実りの島 壱岐」なのです。この実りを、壱岐の発展のためだけでなく、富士ゼロックスさんの発展のためにもどんどん使っていただいて、両者の未来を開くさらに大きな「実り」を創造していけたら素晴らしいと思います。

富士ゼロックス九州株式会社
代表取締役社長
宮崎 晋一

地域や企業のお困りごとの解決。地域や企業が実現したいことの実行支援。今、私たち富士ゼロックス九州は、微力ながらこれらに真剣に取り組み始めています。

九州では、ごく一部の地域を除き、すでに人口の減少が現実のものになりつつあります。当然のこととして、地域や企業の活性化は九州全体の重要な課題の一つであり、当社にとりましても、この地域での事業成長を目指す以上、ぜひともお手伝いしなければならないテーマであると考えています。

当社は、コミュニケーション技術などを活かしたさまざまなサービスを実際にお客様にお届けし、成果を出してきました。地域や企業の活性化にこれらを活用しない手はなく、数年前より少しずつ取り組み始めました。

現在では、九州地区各販売会社に設置した「お客様事業支援センター」を中心に、自治体や企業の「地方創生」に関するテーマのお手伝いをしています。

九州活性化のキーワードは、農業・観光・離島・過疎。中小企業・北部九州製造業。そして、アジアに向けてのゲートウェイ。

当社の関連企業はもとより、志を同じくするさまざまな企業・自治体・大学と連携し、知恵を出し合い汗をかき、地域の活性化に貢献していきたいと思います。

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