第三者意見

株式会社日本総合研究所
理事
足達英一郎氏

2015年度版に引き続き、2016年度版の富士ゼロックスおよび関連会社のサステナビリティ報告を拝見いたしました。2015年度版では、「取り組むべき社会課題」と「提供価値」を従来ある事業セグメントやステークホルダー別の枠組みで開示しようとすると、やや据わりの悪い印象を有してしまうことをコメントいたしました。

2016年度版では、これに呼応いただき、ウェブサイトではステークホルダー別の開示項目を継続する一方、本誌では第3章を社会課題4領域で構成されました。これによって一貫性と説得力が高まったと感じました。

また、2015年9月に国連が採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」に言及され、「提供価値」とSDGsとのかかわりを明確にされるとともに、富士ゼロックスが目指す最大のミッションは、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の推進と持続的な経済成長の実現に大きく貢献することだ」とのトップコミットメントを掲載されています。こうした先見性にも、敬意を表したいと思います。

富士ゼロックスおよび関連会社は、「知の創造と活用をすすめる環境の構築」「世界の相互信頼と文化の発展への貢献」「一人ひとりの成長の実感と喜びの実現」という、きわめて具体的で個性的なミッションステートメントを有しています。他方、現実社会には、デジタルデバイド、相互不信の連鎖、社会的疎外や絶望の蔓延といった様相が拡がっているように見えます。富士ゼロックスおよび関連会社が真価を発揮することへの期待は、従来に増して大きいといえるでしょう。

第2章の「地域のために、地域と共に」と題されたハイライト記事は、そうした期待に応える一つの事例として、興味深い内容でした。GPSを使った観光音声ガイドサービスは、将来、世界中の人々と言葉の壁なくコミュニケーションできる未来を予感させます。それは、かつてゼロックスの複写機が「情報の民主化」を牽引したのと同じような「ソサエティ・イン」に繋がるかもしれません。しかも、これを単なる社会貢献活動ではなく事業として推進されていることが印象的です。前述の2030アジェンダは「誰も置き去りにしない(leaving no one left behind)」ことを掲げ、一人ひとりに焦点を当て、貧しい国、豊かな国、中所得国等のあらゆる開発レベルの国々に取り組みを求めています。また、民間企業や市民社会の役割に注目し、関係者が連携することの重要性を強調しています。当該事例は、地方創生の支援にとどまらず、自らのミッションステートメントと2030アジェンダとの間に橋をかける実践と解釈できます。

さて、若干の注文をお許しいただけるのであれば、機会とリスクの分析で、「環境や社会の劣化が事業を制約してしまうリスク」と「環境や社会の劣化に事業が加担してしまうリスク」を分けて考察していただくとよいと感じました。また、「取り組むべき社会課題」として位置づける「ダイバーシティ・インクルージョン」については、第3章で従業員への取り組みばかりでなく、商品・サービスによるソリューションを具体的に知りたいと感じました。「強固な経営の基盤」についても、同様に顧客に対して提供されるソリューションが企業をはじめとするさまざまな組織のガバナンスを向上させる可能性を知りたいと感じました。さらに、KPIに基づく個々の取り組み推進に関して、その網羅性は万全と判断しますが、環境負荷に関する主な指標については、原単位も併記していただくことで理解がより深まると感じました。

最後に、本誌には「小林陽太郎氏の先見性」と題するコラムが挿入されています。筆者は2003年、小林陽太郎代表幹事のもと経済同友会が発行した『第15回企業白書「市場の進化」と社会的責任経営』の取りまとめを末席でお手伝いいたしました。謦咳に接する機会の中で、「企業が本業として社会に対する責任を果たしていくことが重要」というお話を度々、伺ったことが思い出されます。富士ゼロックスおよび関連会社には、そうした信念が脈々と引き継がれていると感じます。事業活動が生み出していく、次の「ソサエティ・イン」を心待ちにしております。

  • 注記 このコメントは、本報告書が、一般に公正妥当と認められる環境報告書等の作成基準に準拠して正確に測定、算定され、かつ重要な事項が漏れなく表示されているかどうかについて判断した結果を表明するものではありません。

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