オフィスプロダクト事業本部 柴田 隆夫

オフィスプロダクト事業本部 柴田隆夫氏

DocuWorksは、実際の机の上で紙文書を扱う感覚をそのままパソコンに持ち込んだようなソフトと言えます。まず開発の経緯から聞かせてください

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1995年頃のことですが、DocuWorksというソフトの開発に至った背景には、パソコンを使うことに対する敷居を低くしたいという課題意識がありました。すでにパソコンは普及しだしていましたが、オフィスでもまだひとり1台には程遠く、パソコンを使うことは、まだ簡単なことではなかった時代です。ですからオフィスで働いている方がまずパソコンを使いやすいようにすることが重要だと考えていたのです。

 その頃は、最初のWebブラウザーであるMOSAICが登場したり、Macintoshではハイパーテキストといった概念が全盛を極めていた時でした。そのため、将来はオフィスにおける文書が、従来のような1枚1枚の紙というものとは別のものに変わっていくのではないか、そんな雰囲気がありました。しかし私たちは、紙の単位で情報を操作することの価値は失われないはずだと考えていました。これをソフトとして実現することでパソコンを使いやすくするということが開発コンセプトだったわけです。

そのコンセプトはどのように受け入れられましたか?

 2年ぐらいかけて、コンセプトメーキング、プロトタイプの開発をしたわけですが、プロトタイプを周囲の人たちに見てもらった時、返ってくる反応は「わからない」というものでした。どう使うのかがわからないのかと思ってよく聞いてみると、「こんなものに商品価値があるのかわからない」というんです。ただドキュメントを束ねたりバラしたりするために、いちいち仮想プリンターで文書を変換するなんて面倒なことはしないだろうというんですね。もちろんプロトタイプですから、機能の面や、性能とかユーザビリティーは現在のものや通常のソフトに比べて劣っていましたから、たしかに言われるような点もあるのですが、そういった反応に対しては、コンセプトの正しさを信じるしかない、そんな感じでしたね。私はこのソフトの本質的な価値については確信していましたから。

一般にリリースされた経緯とお客様の反応について聞かせてください。

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 最初に市場に出したのは、Laser Wind Officeという複合機を活用するためのツールとして、機械に同梱したのが始まりでした。その後、Network Ableが出た時にバージョン2になって同梱されました。その後、さまざまな機能が加わっていき、ソフトとして機能も固まり、市販ソフトとしての価値も高まったことから、同梱用の機能限定版と、商品としてのパッケージソフトウエアに分けてリリースすることになりました。これがバージョン3ということになります。

 お客様の使い方としては、はじめはスキャナーを動かすために使うというケースが多かったようです。スキャナーのクライアントとしてはたしかに使いやすいものだったんですね。本来の機能というか、いろいろな文書を変換するという使い方になるには時間がかかる。使っていってだんだん良さがわかるといった感じだったですね。

パソコンの性能が上がるにつれて、使いやすさがアップしてきたということもあるでしょうね。

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 たしかにそれはあります。ファイルを開く時にパッと速く開けるというようなことははじめから意図していましたから変わりはないのですが、とくに変換する時はアプリケーションの印刷ルーチンなので、こちらでは関与できない部分です。これはパソコンの性能に依存しますからね。さらにネットワーク環境もよくなって帯域が広くなり、メールで簡単に送れるようになれば電子化するメリットが大きくなります。周囲の環境がよくなればさらに使いやすくなり、機能や特徴が生きてくることになります。

DocuWorksのコンセプト的な特徴として、ユーザーが創意工夫を発揮できるようにするというものがあります。この点をもう少し説明してください。

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 スクリプトを駆使してソフトを使いこなすようなパワーユーザーではなく、ごく普通のユーザーが仕事のやり方を工夫することを援助する、これがメリットだと思います。たとえばDocuWorks Desk上に並んだドキュメントのサムネールが見られます。ドキュメントの内容をサムネールでパッと見てすぐに把握できれば仕事ははかどりますよね。フォルダーでドキュメントを整理する時にもサムネールがあることによってずっと簡単になりますし、整理の仕方もいろいろ工夫できます。それから付箋の機能も便利な使い方ができます。DocuWorks Viewerで開いた時に後ろのほうに付けた付箋を見せることもできますが、これなどは、机の上で紙と文房具を使ってやっていたことをそのままできるようにしているんです。

つまり紙をベースにした工夫をそのまま電子に置き換えることができ、さらにリンクアノテーションのような電子ならではの機能が違和感なく使える。ソフトウエアを扱うことに慣れていない人でも、たとえばこのような使い方を工夫できるということが、DocuWorksの大きな特徴のひとつでもあります。

DocuWorksは文書の電子化や共有などを通じて業務改善のツールにもなります。その点は開発の側からはどう考えていますか?

 紙と文房具と机を提供し、それらを組み合わせて創意工夫ができる。この仕掛けには、特定の業種や業務に依存するところがないので、どのようなお客様にもお勧めできるものと考えています。いずれの場合でも、それまで紙でやっていた業務のスタイルを大きく変えることなくパソコンにもって来られるので、ストレスなく電子化のメリットを享受できるわけです。

DocuWorksと他のソフトウエアとの連携も業務の効率化という点では大きいですね。

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 DocuWorksはバージョン3になってから他のソフトから呼び出すためのAPIを公開しています。それはオフィスにパソコンの普及が進んで、紙の文書をどうするのかということが全般的な課題とされていた頃です。ワークフローソフトや文書管理ソフトの側では、それらのソフトがDocuWorksフォーマットに対応するだけで紙文書に対応したことになるというメリットがあるわけです。最初に連携を実現したのがジャストシステムさんのConceptBase Searchでした。電子文書は概念検索ができるけれども、紙の文書の検索が課題です。OCRをかけてもイメージを捨てることはなかなかできないので、イメージとテキストとを二重に管理する必要があり、その管理機能を開発するのはたいへんです。

ところが対応フォーマットを1つ増やして、DocuWorksに対応させるだけで紙文書に対応できたことになってしまうわけです。このようにソフトウエアは何かと連携させることによって利用価値も高まり、業務も効率化できるわけですが、そのキーとなるのがこの場合DocuWorksだということですね。

あらためてDocuWorksらしさとはどのようなものでしょうか。また将来的な方向性について聞かせてください。

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 繰り返しになりますが、直感的でわかりやすい、工夫ができる、そういった点でしょうね。たとえば自分の使いやすい道具を筆箱に集めるような感覚で、自分なりの文房具を作れます。また、後ろの付箋がはみ出て見えるようにできたりする、こういうことも典型的なDocuWorksらしさだと言えます。あまりたくさんの情報が平面的に提示されると、人間は疲れてしまいますよね。DocuWorksはドキュメントの量がどのぐらいかが意識しなくともわかりますし、後ろのほうの付箋を見ればそこに重要な情報があるんだということもパッと見てわかる。お客様に、DocuWorksは「右脳で扱える唯一の業務ソフト」だと評していただいたことがあります。私たちの意図していることをまさに言い当てているもので、非常にうれしかったですね。

 DocuWorksというのは、それまで机の上ではできていたのに、パソコンで仕事をするようになって失ってしまったことを復活させるものだと言えます。今後もこの基本コンセプトを守りながら、全文検索やリンクアノテーションのような電子ならではの機能もDocuWorksらしく拡充させていきたいと考えています。