生販システム部
担当次長
石田 行弘 様
当社を含め、以前からグローバル展開を進めてきた日系製造メーカーは近年、中国を含む新興国市場でのシェア争いなどに巻き込まれています。ファブレスや水平分業など時流に乗ったビジネスモデルが求められるなか、従来のやり方を変えることができず、苦戦を強いられている企業は少なくありません。
当社は、売上高の80%以上を海外市場での販売実績が占めている一方、製品の大半は国内工場で生産しており、電子部品メーカーとしては珍しく「日本で製造し、海外で販売する」ビジネスモデルでやってきました。しかし、この国内生産比率の高さが一因となり、近年の台湾・韓国企業とのコスト競争という難局において、競争力の低下を感じていました。
こうした状況のなか、当社は新興国市場でのシェアを取り戻すべく、市場競争力の強化に向け、あらゆる業務において徹底的なコスト削減とスピードアップを求められています。当部が担当しているSCMや物流業務においても、いくつものPJTを同時並行で実行し成果をあげるとともに、それを継続できるスキル、人材、風土を醸成しています。
生販システム部
物流システム1課 係長
明石 憲司 様
また、以前から輸出を担う私たちの部門では、その機能を本社に集約し少人数で当たることで効率化できる体制を構築し、スピード重視で仕事にのぞんできました。業務システムについても何度も改善を重ねてきて、現在は生産性の高いシステムを利用しています。しかし、それでもなお効率化すべき部分が残されていました。それが紙の問題です。
輸出における特殊な慣習から、当社とお客さまの間には、倉庫業者・代理店・航空業者・税関など複数の企業や機関が介在します。そして、どうしてもインボイス・パッキングリスト・輸出許可書・航空運送状といった帳票は紙でのやり取りや手続きが必要でした。さらに、注文ごとに必須となる帳票は異なりますし、通関業者が作成する帳票を待つ必要もあり、その状況把握などにも時間がかかっていました。
また、当社は税関当局から認定されたAEO(特定輸出)事業者*であり、発生した書類を保管しておかなくてはなりません。そのため、1日につき約1000枚の書類内容を確認してファイリングする作業に、熟練した担当者が丸1日付きっきりになるなど、多くの工数を取られていました。そこで、輸出業務で発生する帳票の作成・やり取り・保管などの作業を効率化するため、業務プロセスを見直すことにしたのです。
ビジネスエンジニアリング部
販売情報システム課 主任
大西 智彦 様
私たちは、業務プロセスの改善手段として、統合文書管理システムを中心とした新システムの構築を目指し、その仕様を決定。膨大な量の帳票を管理することができるシステムを選抜し、そのベンダーである7~8社に声をかけました。その際に伝えた要件の1つが、「文書の原本性を保証できること」です。
当社はAEO事業者ですから、その責任をきちんと果たすためにも、単純に文書を電子化して保管するだけでは足りません。電子署名やタイムスタンプなどを組み合わせるなどの方法で、文書の原本性を保証し、輸出に関して法律的にもちゃんとクリアできる仕組みを求めていました。
各ベンダーに等しく要望を伝えたのですが、ほとんどの提案が自社製品の機能PRに近いものでした。しかし、富士ゼロックスは当社の貿易業務をしっかりと理解し、その上で「貿易帳票管理システム」を中心とする的を射たソリューションを提案してくれました。当社が求めていた仕組みを実現する提案内容はもちろん、その熱意にも打たれ、富士ゼロックスをパートナーとして選定しました。
技術・事業開発本部 技術企画統括部
フィルムコンデンサ事業推進室
企画係
副島 三紗子 様
当社では、「貿易帳票管理システム」の本稼働に合わせて、海外の36拠点と関連企業27社を含めた全社で、輸出業務における主要20種の帳票を電子化し、通関用の帳票以外はすべてペーパーレス化することを決断。紙での保管は廃止し、PDFで帳票データを保存することにしました。そのプロジェクト推進に当たり、富士ゼロックスとともに従来の業務プロセスを1つ1つ見直し、69通りあった業務プロセスを37通りに削減するなど、その適正化に努めました。このことが、プロジェクト成功のカギになりました。
これまで紙で保管してきた部分を完全に廃止する取り組みについて、当初は社内に不安視する声もありましたが、2011年7月のシステム本稼働から現在まで、特に問題なく運用できています。通関業者などの関連企業からも、これまで保存が義務付けられていた帳票を、電子データで保存できるようになり、助かっているという感想をいただきました。
今までの紙の使用量などを考慮し、このプロジェクトによる効果を試算すると、1年でおよそ140万枚の紙削減、約2000万円のコストダウンに成功している計算になります。
また、当社の要望だった文書の原本性に関しても、タイムスタンプ技術に優れたアマノ社と、電子署名技術に優れたセコムトラストシステムズ社の協力を得ることで、国税局の要件である「課税期間中の任意の期間を指定し、当該期間内に行った電子署名/タイムスタンプ付与について一括検証できること」を実現しました。
社内にはまだ商品開発や研究開発など、紙によるやり取りを手作業で行っている部門がありますので、今後はそこまで帳票電子化・業務効率化の範囲を拡大していきたいと思います。ほかにも、あくまで希望ですが、タイムスタンプ/電子署名の技術について、別の業務でも活用していきたいと考えています。そのため、活用できるシチュエーションを見極めて、幅広く展開していきたいと考えています。
また今後は、海外の36拠点でもこの仕組みを活用していき、グローバル市場に広く展開していきたいと考えております。そのためには、24時間365日活用していけるように可用性を高めていくことが、次の課題になると思います。
今後、富士ゼロックスには引き続き良きパートナーとして、この「貿易帳票管理システム」の他社における導入活用例を教えていただいたり、当社をもっと良くしていくための適切なアドバイスをいただきたいですね。