ビジネスレポート

人材育成やビジネス力強化など 課題解決のお手伝い ビジネスレポート

業績を上げる法人営業の新たな共通点とは
~組織営業プロデューサーの3つの条件~

株式会社富士ゼロックス総合教育研究所
セールスイノベーショングループ
コンサルタント
高城晴美

著者プロフィール

働く人の自立的な学びの情報環境づくりのマーケティング企画およびコンサルティング営業を経験後、2000年㈱富士ゼロックス総合教育研究所に入社。PSSなどグローバルパートナーの科学的な営業教育プログラムのローカライズ開発、オーダーメイド開発、リサーチ&アセスメントの企画・実行支援に従事。現在は、「法人営業力強化」をテーマにソリューション開発とマーケティング展開に取り組んでいる。

インターネット上に製品情報が溢れ、企業での購買もインターネットで製品を比較検討しオンラインで発注することは当たり前となりました。AIの進化により、今後はさらにお客さまは営業を介さずとも、欲しいものを的確に見つけ購入することができるようになります。
それでも、企業における課題解決のための購買では、製品のカスタマイズや、導入運用のコンサルティングが必要なことが多く、人による営業はなくならないと言われています。
では、今後も生き残るため法人営業にはどのような能力が必要なのでしょうか。本稿では、ミラーハイマングループのCSOインサイト調査レポートのデータをもとに今後求められる法人営業力について考えていきます。

1. 時代に求められ高度化が進んだ法人営業

富士ゼロックス教育総合研究所は長年にわたり、多くの法人のお客さまの営業力強化に携わってきました。その中心となる基幹プログラムProfessional Selling Skills(PSS)は、世界で300万人の受講者実績があり、グローバル調査によって時代の変化を捉え、セールスに求められる能力の新たな育成ニーズを取り込んできました。
はじめに、過去40年にわたるPSSプログラムの変遷を追い、法人営業の進化をみていきます。

図1 時代と共に進化してきた法人営業力

「生産性向上」「コスト削減」「お客さまサービス向上」といった課題のカテゴリーは変わりませんが、グローバル化やテクノロジーの進化により新たな市場競争が始まり、激化する中で、その課題の複雑さは増し、解決策にはより高度な専門性が求められるようになりました。また、調達部門が専門化し企業の購買のしくみも厳しくなりました。セールスに求められる役割は、単に「製品を売る人」ではなく、1990年代にはニーズを満たす「アドバイザー/専門家」として、2000年代には課題解決の「ビジネスコンサルタント」として、2010年代には組織営業の「プロデューサー」として、求められる役割は高難度化してきたといえます。(図1)
現在のセールスには、お客さまの複数の関係者と接点を作り、自社の総合力を駆使して解決策を提供する、そうした組織対組織の営業をリードする能力が求められているのです。

「次に簡単なケースをご紹介し、「組織営業プロデューサー」とはどのような営業かを具体的に理解していきましょう。

2. ケーススタディ –「スーパー個人プレー」VS「地道なチームプレー」どちらが強いのか? –

まずケースの設定をご説明します。お客さまは、食品卸売り会社の営業推進の朝倉課長です。朝倉課長の会社では、営業の効率化が課題となっているため、業務効率化ツールを扱う会社の営業から情報収集をしています。その中でA社のセールスは、木下さんです。面談で約束したことはすぐに対応してくれ、資料も論理的でたいへん分かりやすくまとめられています。そしてB社のセールスは人当たりの良い上岡さんです。面談にはいつもシステムコンサルタントの北園さんが同行し、導入企業での活用例を話してくれます。

あるとき、朝倉課長の会社で業務の効率化に向けた新たなIT投資が行われることになり、A社とB社のコンペとなりました。
2社から提案書が提出されました。A社の木下さんは、朝倉課長が伝えた情報を丁寧に整理し、今起こっている問題を効率よく短期間で解決できる提案をしました。B社の上岡さんの提案は、直面している問題解決と共に卸売業の変化に備えたICT対応についてのプランが含まれていました。価格は、B社はA社より20%ほど高価格でした。営業推進部の検討会の結果、A社への発注で社内決済を仰ぐことになりました。朝倉課長は導入後の仕事は木下さんとのほうが進めやすそうだと考え、会議ではA社を強く押しました。

しかし、稟議決済の過程で、常務から再検討が指示されました。結果的にはB社への発注が決まりました。上層部の評価ポイントは、B社は中期経営課題の達成のための将来的な提言が含まれていた点でした。常務はB社の部長と日ごろから接点があり、経営視点での情報共有がなされていたのです。また、システムコンサルタントの北園さんが、システム部門のヒアリングを行った情報をもとに、今後起こりうるトラブル回避までカバーしていることがシステム部門の信頼を得た点も決め手となりました。

両社ともに、今の問題解決には過不足のない提案でしたが、組織的な活動により幅広い情報を得て、多面的な視点で提案をしたB社が、これからのパートナーとして選ばれたといえます。そして、複数の階層や部門をつなぎ組織的な接点作りをプロデュースしていたのは、営業担当の上岡さんでした。
後日談ですが、B社の業績は過去最高益を更新し株式上場を果たしました。組織としての営業活動を会社全体で実行した結果、多くの顧客から信頼を勝ち得たのです。

このケースのように、法人営業の投資判断では、普段訪問している部門だけで意思決定されることは少なく、より組織的な判断が行われます。ですから、一人の優秀なセールスだけでは、地道に組織的に活動している競合会社に勝てないことが多くなっているのです。

世界的にトップの営業力強化コンサルティングであるミラーハイマングループの法人営業企業を対象としたグローバル調査でも、組織営業力が、高業績企業と平均レベル企業の差を生んでいることが分かっています。その調査によると、組織営業力は、次の3つの特性で構成されます。

  • 洞察視点(perspective)
  • 協働牽引(collaborative)
  • 責任遂行(accountability)

これら3つの特性が「組織営業プロデューサー」の条件といえます。ではここから、1つひとつ詳しくご紹介していきます。

3. 「組織営業プロデューサー」の3つの条件

図2 「組織営業プロデューサー」の3つの条件

洞察視点(perspective)とは

高業績のセールスは、お客さまとのコミュニケーションで洞察視点を提供します。「組織営業プロデューサー」として、お客さまの関心事や、事業戦略上の課題に焦点を当てた価値あるビジネス的視点を提供することで、自分を差別化し、お客さまにとっての重要な存在となります。
そのためには、プロフェッショナルとしての営業スキル、ビジネス感覚、経験を使って、収集したお客さまの情報をお客さまの成功のために大切なものは何かという視点で洞察する力が必要です。お客さまは、それぞれ固有のさまざまな内部事情を持ち、異なる環境で事業を営んでいます。どこにでも当てはまる一般的なニーズに焦点を当てても、お客さまの役に立つことはできません。個々のお客さまが改善、回避、達成したいことや目指していることを理解してはじめて、鋭い視点で提案をすることができます。また競合に差をつけるためには、影響力の強い意思決定者の個人としての満足を意識した視点の提供が重要です。

協働牽引(collaborative)とは

「組織営業プロデューサー」は、お客さまと密に協働しながら案件を進めます。それにより、お客さまの課題や背景や、ソリューション構築の考え方を深く理解することができるのです。また、セールスは自社の営業チームがより短時間でより良い結果を達成するための協力関係を牽引します。こうしたお客さまおよび営業チームと協働できることが高業績を上げるセールスの条件です。
協働を促進するには、営業組織全体でアカウント戦略について共通の考え方や用語を使うことが有効です。セールスと営業マネジャーが案件状況を正確に共有し、タイミングを逃さず適切な一手を打つことができます。また、コミュニケーション上の行き違いで時間や労力を無駄にすることがなくなり、迅速にお客さま対応をすることができます。さらに共通の考え方で全営業が活動を進めることで、個々のセールスのやり方やこだわりに合わせて、サポートスタッフが個別対応に忙殺されるという非効率をなくすことができます。

責任遂行(accountability)とは

高業績の法人営業組織では、メンバーがそれぞれの立場で責任を果たす意識が、組織文化に根付いています。営業部門長は経営陣に対して、正確なフォーキャストを報告し、業績目標を達成する責任を持っています。営業マネジャーは部門長に対して同様の責任を負っています。メンバーのアカウント戦略をマネジメントし、フォーキャストの正確性とファネルに対する信頼性を確保します。セールスは「組織営業プロデューサー」として、自らの営業パフォーマンスに責任を負います。お客さまの成功のために働くことによって、今後の自分の成功の土台が築かれることをよく理解しています。

「組織営業プロデューサー」は、先ほどのケーススタディのB社の営業担当の上岡さんのように、上層部や他部門を巻き込んで営業活動を展開し、そこで得た多面的なお客さま情報を洞察することによって、お客さまが気づいていなかった視点を提示できる営業です。そして、B社が企業として最高益を出し上場を果たした背景には、一人ひとりが責任遂行の意識を持つ組織風土があったのだと考えられます。

4. 結びに代えて - 法人営業の根幹は「お客さま中心」 -

ここまで見てきたように、法人営業は時代と共に高度化し、セールスは「組織営業プロデューサー」として組織的な営業活動をすることが勝敗を分けるようになりました。そこには、今も昔も変わらない、忘れてはならない原則があります。それは、「お客さま中心」です。組織対組織で信頼関係を構築するために、常に「お客さま中心」に考え、共に課題をより深く理解し、お客さまにぴったり合うソリューションを構築し、パートナーとしての信頼を得ることができる、それが、法人営業の根幹であるといえます。

参考文献

  • 2014 MHI Sales best practices study: The pursuit of world-class performance
  • 注記 このレポートは2018年1月時点の情報です。2019年7月1日より株式会社 富士ゼロックス総合教育研究所はパーソルラーニング株式会社になりました。

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